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デリカミニ

2023.10.19

デリカミニ テストドライブ!可愛いだけが魅力ではない!走りはしっかり〝デリカ〟している

 SUV風のテイストをまとったモデルが続々と誕生している、昨今。今回紹介する三菱のデリカミニは「それらモデルたちとは一緒にしないで欲しい……」と愛嬌あるフェイスで、そんな想いを訴えているかのよう。このフロントフェイスを含め〝デリカミニでなければならない理由〟はたくさんある。実はこのデリカミニ、三菱・eKクロススペースがベースとなっていることは、オーナーでない限り気付かないかもしれない。聞いてみれば、デリカミニの開発がスタートしたのはeKクロススペースのデビュー後……つまり、すでにカタチ作られていたモデルをベースに、デザインや走り、装備を専用に仕立てていったという。商品企画としては、もう少し前からあったようだが、いずれにしても、フルオリジナルに見せる〝腕力〟には恐れ入った。

 パッケージングはeKクロススペースそのもので、いわゆるスーパーハイトワゴン。全高は4WDが1830㎜で、リアドアはスライド式を採用。もちろん、ボディサイズは軽乗用車枠に収めており、シート生地こそ汚れにくい専用タイプを採用するが、4名乗車といった法規的な面は変わらない。
 インテリアもeKクロススペースをベースにしているが、インパネの左右をつなぐパネルにライトグレーを用いて差別化。実はeKクロススペースもフィールド派に向けたモデルとして登場したが、一方で普段遣いにも十分といえる質感を作り上げていた。それと比較するとデリカミニは、もう少し気軽に愉しめるモデルで、カジュアルで相棒的な親しみを抱けるテイストがあちこちに見受けられる。

 エクステリアは、フロントマスクには、三菱のデザインフィロソフィであるダイナミックシールドコンセプトを採用。とはいえ、その印象は最新の現行型デリカD:5というよりは、改良前の前期型のテイストに近い。印象的なのは半円形LEDポジションを組み合わせたヘッドランプだが、前後バンパーともにボトムパートはプロテクター的なスキッドプレート形状を組み合わせていることもポイント。さらにバンパー下部、サイドのホイールアーチ部まで含めて同様に光沢のあるブラックを採用し、本格クロカン四駆らしさだけでなく、さりげなく高級感まで演出。それだけでもコストを掛けていることは一目瞭然だが、塗り分けが大変なサイドパネルまでもボディカラーと色分けし、さらにコストを掛けてまで手に入れたかった、想いが伝わってくる。

 インパネのデザインそのものはeKクロススペースそのものであり、使い勝手に関しては不満なし。左右ピラーをつなぐようにライトグレーパネルを組み合わせたことで、質感はそのままにちょっとしたアクセントを表現。まさにカジュアル感を備えたといえる。シートも形状はeKクロススペースそのものだが、シート地はデリカミニ専用となる汚れが付きにくく、それでいながら通気性のいい撥水タイプとなる。シートアレンジもベースモデルに準じており、シートに限らず、装備に関しての利便性はすこぶる高い。たとえば、リアシートのロングスライド機能は320㎜もあり、片側ずつのアレンジが可能だ。そのほか、リアスライドドア開口部は、650㎜を確保。足もとをフラットにしたことで乗降性に優れることもポイント。ラゲッジルームもシート同様に汚れたものなどをさっとふき取れる素材が使われている。
フロントマスクは各パートが個性を表現。フロント、リアはもちろん、サイド面でも、下部、フェンダー部を大きくブラックアウトさせており、リフトアップ感を演出している。タイヤサイズは、4WDは165/60R15である。このサイズはすでにタイヤメーカーからリリースされている。なのでカスタマイズの面でもワクワクを覚えるところだ。
新色として採用されたアッシュグリーンメタリックは、フィールドで映えることはもちろん、日常でも使える色合い。そのほか、赤、ブルーにしても、デリカミニの造形(遊び心)を明確に伝えつつ、遊び心やスポーティといった印象を強める色合いとなっている。モノトーンのほか、ツートーンも設定。

■オフロードでは力強く!オンロードは滑らかに! 

 テストドライブした車両は、4WDTのTプレミアム。このグレードのパワーユニットは最高出力64PS/最大トルク100Nmを発生するインタークーラー付きターボで、そこにブレーキ回生機能による発電で加速をアシストするハイブリットシステムを加えたもの。さらにこのデリカミニは〝4WDのみの装備〟として、ラフロードでの路面追従性と走行安定性と操縦性までを細かく作り込んだ専用ショックアブソーバーを採用。さらに専用の165/60R15サイズの大径タイヤ(2WDは155/65R14)を履く。
 その走りは、期待通り、いや、期待以上だった。乗り味のベースはeKクロススペースの延長線上にあるが、ストローク感をしっかりとつくり込んだシャシーによってもたらされる安定性と安心感を走り出した途端に感じ取ることができた。そして、タイヤの接地感がとても豊かになっており、オンロードでは速度域を高めていっても不満を覚えることはほとんどない。高速道路走行では、直進安定性はもちろん、レーンチェンジを行なってもフラフラしない安定性とフラフラしない操縦性がつくり込まれており、快適性と愉しさを引き上げていた。
 さらに印象的だったのはワインディング路。コーナー手前でフロントへと荷重を移しつつコーナーへ入っていくと、フロント外側がぐーっと沈み込む。それはハイトがあるモデルとしては大きいと感じるやもしれないが、ドライバーとしてはフロントの荷重がしっかりと確保され、タイヤから明確なグリップ感が伝わってくるため、すこぶる安心感が高く、ついついアクセルを踏みたくなるほど。しかもそのロールは剛性はしっかりと確保された仕立てであり、唐突な動きをしないこともあって、ドライバー以外の乗員も安心して過ごせる。つまり、快適性はすこぶる高い。
 今回は、リアシートにも座ってインプレッションをしてみた。フロントシートでステアリングを握る編集長の体の動きを眺めながら座るリアシートでは、もちろんわずかな応答遅れはあるがテンポ遅れと感じさせるようなものではない。軽自動車でもここまでできるようになったか、と感心した。ただし、リアシートの下にタイヤがあるため、ダイレクトな振動を感じるところはあるにはあった。しかし乗り心地としては、快適性が高く、やはり不満と表現したくなる印象はない。

 一方ラフロードでは、砂利道を少々スピードを上げて走り、緩やかなコーナリングもテストしてみた。その挙動は終始安定しており、アウトへ逃げるような動きも見せないなど、操縦性がしっかりと確保されていたのも好印象。ちなみに4WD専用サイズとはいえ、組み合わせたタイヤは、どちらかといえばラフロードやスノードライブでのトラクション性能より、環境性能にターゲットを当てた乗用車系。そんなタイヤながら、ここまでラフロードでのグリップを明確にしていることに驚いた。聞けば三菱ではデリカミニ流のチューニングを行ない、ベースモデルとの違いをしっかりとつくり上げているのだという。まさにデリカミニでなければならない、アドバンテージだ。
 そうそう、機能装備の中には、グリップコントロールやヒルディセントコントロールも含まれている。ただしこれはeKクロススペースにも採用されており、デリカミニ専用装備ではない。てっきり専用装備と思っていたので、驚いてしまった。これも〝デリカ〟のネーミングの成せる業だ。
 いずれにしても、この4WDシステムとこうした機能装備をもってすれば、乗用車ベースのSUVという枠ではあるが、多少のラフロードにもアタックできると感じた。

昨今の軽自動車はサスペンションストロークを大きく稼ぐことができず、底付きをいかに感じさせないかといった仕立てによって快適性を作り上げている。デリカミニではショックアブソーバーを専用チューニングしたことで、ラフロードでの安定性や操縦性はもちろん、オンロード性能までアップ。特に高速道路での走りは安心感がある。
エンジンは660㏄で、NAとターボを設定。いずれもブレーキ回生を利用してモーターで加速をアシストしてくれる。これによってNAでも不足を感じさせない走りを体感できる。NAでも十分に満足感は高いが、ターボエンジンのフラットなトルクやパワー感を味わってしまうと、きっとターボ1択となるだろう。
トランスミッションはCVTを採用。7速分の固定ギア比が設定されており、そのセレクトはステアリングの後ろ側についているパドルシフトで行なう。つまり、意のまま、スポーティな走りを可能としている。
 テストドライブしたモデルは4WDで、タイヤにダンロップのエナセーブEC300+(サイズは専用の165/60R15)を採用。このタイヤは、SUV向けではなく乗用車系のキャラクターを色濃くしたモデルで、快適性や、環境・燃費性能に優れている。
先進安全技術についてもベースモデル同様を手に入れてある。e-Assistと呼ぶ運転支援機能は、衝突回避または被害軽減をアシストしてくれることはもちろん、ペダル踏み間違い衝突防止アシスト機能によって駐車時の操作ミスを防ぐ。高速走行時は、車線からはみ出すことがないように警報システムとブレーキを用いた逸脱防止システムによって知らせてくれる。そして、自車からは見えない2台先を走る車両を、レーダーによって検知して、急な減速にも対応できるという安心感も提供している。まさに、安全性の面でも不足ない性能を備えている。
デリカミニのデモンストレーションの様子。キャンバー走行やモーグル走行など、まるでデリカD:5が見せる走りっぷりを披露する。デリカミニ(4WDモデル)は只者ではない。写真下はデリカミニに備わる電子デバイス。