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シン・ナナマル全方位検証!

まさに今年最大の朗報であるランドクルーザー70(ナナマル)の国内“再々販売”の発表。同じランドクルーザーといっても、結構そのキャラクターは違う。300がラグジュアリー・ステーションワゴンなら、プラドの流れを継ぐ新型250はライトデューティ、対して70はヘビーデューティな、ワークホース的存在である。
 そのデビューは1984年…!!今やレジェンドである「40系」の後を継ぐカタチで登場した。このランクル40は初代ランドクルーザー「トヨタジープBJ」の直系モデルだが、その意味ではこの70こそ、ランクルのDNAを最も色濃く受け継ぐモデルといっても良い。
 そのヘビーデューティすぎる車格ゆえ、日本では2004年に一度販売が打ち切られて、販路は海外のみになってしまった。しかし14~15年にかけての約1年間、国内に奇跡の復活!“再販”され人気を集めたのは記憶に新しいところ。しかしその後はまた日本で新車の70が売られることはなく、中古車市場では高値では取引されてきたのは、ご存知の通りだ。
 そんな状況の中、発表されたのが冒頭のニュースだ。しかも今回は限定車販売ではなく、永続的なカタログモデルになるという!これを喜ばないランクルファン、そして4WDファンはいないだろう。
 そして、そんな“再々販”ランドクルーザー70の中身を知ると、さらに驚かされる。なんと今回から3ナンバー=乗用車登録となって、リリースされることになる!
これまで70は“70バン系”などと称され、4あるいは1ナンバー=商用車登録のみの設定だった。国内における70は、再販前は大排気量ディーゼルエンジンのみで、そもそも排ガス規制の関係で乗用車登録はできなかったというのもある。しかし再販モデルはV6ガソリンエンジンが搭載されていたが、ボディ構造や室内レイアウト、ユーティリティの関係で乗用車化が見送られた。
 しかし商用車登録のままではユーザー層を広げることはどうしても難しい。再々販によって販路拡大を狙うメーカーサイドとしては、70の3ナンバー化は悲願……そして必須項目であったのだ。
 もちろん3ナンバー車といっても、基本的なスペックはヘビーデューティな70のままだ。ウィズフレームのボディ、ラダーフレームはトヨタで最もタフな仕様の“F0(エフゼロ)”型を採用(ちなみにF1はランクル300&250に、F2はタコマに、F3はハイラックスに採用)する。気になるホイールベースは従来から76系に採用される2730㎜セミロング、つまり日本向けには5ドアボディのみの設定となる。
 サスペンションはフロント:3リンクコイルリジッド、リヤ:リーフリジッド、4WD形式はLoレンジ付きのパートタイム4WDと、70の最も大切な部分には変更はない。このあたりは従来からのランクルファンも70ファンもご安心ください、と言うべきか。
 また3ナンバー化で注目したいのはパワーソース。なんとこれも70では初期の3B型/13B-T型以来となる4気筒ディーゼルエンジンを搭載!150プラドでお馴染みの2.8ℓディーゼルターボ/1GD‐FTV型を採用している。となると型式は「GDJ76(あるいは77)Wとなるだろうか(まだ公表されていない)。組み合わせるトランスミッションは、これまた待望のAT。6速マニュアルモード付きで、こんなヘビーな4WDをドライブできることになるということだ。

ボディサイズは再販モデルであるGRJ76Kより全長が80㎜ほど長くなったが、幅は同じ1870㎜。フロントフェンダー自体が少し出っ張ったが、オーバーフェンダーを外せば5ナンバーにも収まるという。ホイールベースは、いわゆるセミロングで、76系から変わらない。
次世代高断熱ディーゼル燃焼や高効率ターボを採用した次世代クリーンディーゼルエンジンの1GD-FTV型を搭載。尿素SCRシステムなどでNOxを大幅に低減しているが、アドブルーの補給口は左フェンダー後部に用意。
丸目ヘッドライトに回帰したフロントマスク。LEDのデイライト・リングが特徴的だ。ウインカーは独立したデザインで、40系や初期70をオマージュ。フロントグリル上のボンネット先端の開口や下の3連のダクトも40系をイメージしたデザインだ。
タイヤ&ホイールはGRJから変更なし。タイヤは265/70R16のオールテレーン(ダンロップ・グラントレック)、ホイールはP.C.D.150-5Hなので、これも従来サイズと同じだろう。フリーホイーリングもオートとマニュアルを切り替えられるタイプ。
室内で何より現代的にアレンジされたのはメーター回り。LEDデジタル技術を駆使した仕様で視認性を向上した。ただし、どこか見覚えがある…と思ったら、台形のスピードメーターはランクル40系のアナログメーターのオマージュだそう。
従来型をベースにしたインパネ回りだが、現代的にブラッシュアップされているのが分かる。大型モニターのスペース、USBソケットなども完備し、トヨタ・セーフティ・センスの各種スイッチも用意されている。ただしエアコンのスイッチ回りは、30年前の70のものと変わらない! おまけにエンジン始動&停止も、ボタン式ではなく、キーをしっかり回して行なうようだ。
シートは“バン”時代には考えられなかったホールド性と表皮のグレードアップが感じられる。リヤシートは2人掛けから3人掛けに、足もとも少し広くなった印象だ。しかも一体式から6:4分割可倒式になったのは大きい。リヤセンターのシートベルトは、シート肩口から伸びている。
リヤのシート位置が少し後ろにレイアウトされて、フル乗車時の積載量は少し減ったかもとも?という印象も。ただし分割可倒式になったことで、ユーティリティはかなり向上している!なお、リヤゲートは相変わらず3:7の観音開き式を採用している。
エンジンは150プラドなどでおなじみの2.8ℓディーゼルターボ=1GD-FTV型を搭載。150kW(204ps)&500N-m(51kg-m)を発揮するスペックだ。ただし、150プラドに搭載される仕様からスペックは大幅に強化され、トルクを重視したい70の走りにも、十分応えうる。組み合わせる6速ATはマニュアルモード付き。世界的にもこのニーズは高まっており、AT仕様は輸出モデルにも積極的に採用される。これまでMTということで乗る人を選んできた70だが、AT限定免許世代にもユーザー層を広げそうだ。
下の車両写真はオーストラリアのトラック仕様。日本で販売される70も基本的にはこれと同等のラダーフレーム・FOタイプだとか。
3ナンバー=ワゴンになったことでランドクルーザー70はヤワになってしまったのか?いえいえ、採用される“F0(エフゼロ)ラダーフレーム”は、トヨタの中でも最もタフなもの(1t積みクラス)。今回の仕様は、そのままオーストラリアや中東にも輸出されるもので、ヘビーデューティな70のポテンシャルは少しも犠牲にされていない。

フロント

リア

フロント:3リンク・コイル、リヤ:リーフのタフなサスペンションレイアウトは、3ナンバーになっても変わらない。ただしエンジンの軽量化もあり、スプリング&ショックアブソーバーは大幅に見直されて、乗り心地はソフトライド化した。よく見るとリヤのリーフはなんと2枚!ある意味味だったガチガチの動きからしなやかな動きに変わり、オフロードのトラクション性能も向上。

4WDシステムはシンプルで耐久性と信頼性のある副変速機付きのパートタイム式。H2-H4-L4の切替はシフトレバーで行なう。ちなみにまだHiとLoのギア比のインフォメーションはないが、おそらくGRJ76と変更はないだろうと思われる。ただしファイナル比は、エンジン特性に合わせて低くなっているはずだ。
アクティブトラクションコントロールなど、最低限の電子デバイスは装備。DAC(ダウンヒルアシストコントロール)も、AT車ならありがたいはず。もちろん、ランクルならではの前後デフロックも用意されている。
主要諸元・プロトタイプ
〇全長:4,890㎜ 〇全幅:1,870㎜
〇全高:1,920㎜ 〇ホイールベース:2,730㎜
〇エンジン:1GD-FTVディーゼル 2.8ℓターボ
〇最高出力:150kW(204PS)
〇最大トルク:500N・m
〇トランスミッション:6Super ECT