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【JAOS】「ジャオスの乗り味大研究」最高の乗り味が手に入れば、もっと遊びに出たくなる。

今から遡ること7年前の2016年、その前年から始動していたTEAM JAOSは大きな賭けに出た。それがハイラックスを使用したアジアクロスカントリーラリーへの参戦だ。当時、まだ国内で販売されていなかったハイラックスなだけに車両情報は皆無。ラリーレイドマシン製作がどれほど困難であったかは想像に難しくない。しかし、そんな状況下での手探りな車両製作やクラス優勝を遂げるまでのモータースポーツ活動は「ハイラックスのカスタマイズ=JAOS」というイメージを定着させた。そして2023年、そんなモータースポーツ活動の最大の成果物と言っても過言ではないサスペンション関連商品「BATTLEZ ダンパーVF‐R」がいよいよリリースされることになった。
 実は同品の開発は昨日今日に始まったものではない。VF‐Rシリーズ第一弾として2016年にリリースされたランドクルーザー プラドやFJクルーザー用の開発終了後には既にハイラックス用の開発が始まっており、2020年にはそのプロトタイプはできていた。しかし、リアにリーフスプリングをもつハイラックス用のセッティングは一筋縄ではいかなかったという。本稿では、そのハイラックス用VF‐Rの開発には「どんな苦労があったのか」、そして「どのように仕上がったのか」そのあたりを紐解いてみたい。

サスペンションキットの選び方

※1.リフトアップにより直前側方視界基準(保安基準第44条第5項)を満たさなくなる可能性があります。その場合、フロントビューカメラなどの前方視界確認機構増設が必要となります。※2.リヤ側のリフトアップによって後部突入防止装置(ハイラックスの場合はリヤバンパーが該当)が基準(高さ550mm:保安基準第18条の2)を満たさない場合がありますが、リヤバンパー位置を10mmダウンまたは30mmダウンの2段階で調整できる「JAOSリヤバンパーダウンブラケット(品番:B318096 税抜価格:¥8,000)」を別途ご用意しています。※3.ハイラックスには標準でバックフォグが装着されていますが、リヤ側のリフトアップによってバックフォグ(後部霧灯)に定められている保安基準(地上1m以下:保安基準第37条の2)に定められた高さを越えてしまう場合があります。しかし、バックフォグは保安基準に必須の灯火装置ではないので製品に付属している補足取扱説明書の手順に従って物理的にキャンセル(取り外し)していただければ保安基準不適合の状態は解消されます。※4.2020年8月にマイナーチェンジされた現行モデルは、乗り心地改善のため、特にリヤのリーフセッティングが大きく変更されているのですが、そのセッティングがコンフォートスプリングと似通っている(交換のメリットを感じにくい)ので、物理的な装着はできますが適合としていません。

遂に「BATTLEZ VF-R リフトアップセット」が完成!

BATTLEZ VF-R リフトアップセット

【セット内容】
・フロント:車高調用リフトアップスプリング(17φ/120N/㎜)、リザーバタンク付減衰力調整式ダンパー(車高調/高圧ガス式モノチューブ/ハーモフレック)、専用レンチ、リザーバタンク固定ブラケット
・リア:リザーバタンク付減衰力調整式ダンパー(高圧ガス式モノチューブ)
【減衰力調整】高速圧側無段階減衰力調整式、低速圧側20段ダイヤル
【車高】フロントのみ20~50㎜アップ
【ダンパーサイズ】ボディ径:前後共51Φ ピストン径:前後共46Φ
【リザーバタンクブラケット】ステンレス/カチオン電着塗装

フロント

リア

一目で他のサスペンションセットとの差がわかるのがリザーバタンクの存在だ。その役目はオイルの増量。バルブホールをオイルが通り抜ける際に発生する摩擦で減衰力を発生させるという仕組み上、過度のサスペンション上下動は摩擦熱を発生させる。そんな発熱状態が続くとオイル粘度が下がることで減衰力の低下を招いてしまう。そこで、「オイル用量」や「表面積」を増やすことによって発熱を防ぎ、過酷な状況下でも安定した減衰力を確保することがリザーバタンクの存在理由だ。

VF-R開発の原点はレース用サスペンションにあり

過酷なシチュエーションが続くラリーは絶好の開発ラボ

フロント

リア

スケールの大きな海外ラリーに参戦すると、日常ではあり得ない入力によって生半可なパーツはすぐに馬脚を現してしまうという。そんな状況下でマシンを安心・安全にドライブするにはサスペンションの強化が必須。JAOSのBATTLEZダンパーサプライヤーであるKYBの開発スタッフにコ・ドライバーを担ってもらうことで、同品のパフォーマンスアップ   が飛躍的に進んだ。その究極の成果物がBATTLEZダンパーVF-Rというわけだ。レースマシンに装着されたスペシャルダンパーと市販のVF-Rは別物だが、そのフィロソフィーは生きている。

スタイリング:前後のバランス

決して“水平”がベストではない前後バランス

車両にはそれぞれに設定されている「基本設計値」がある。だから、外観上の理由で前後姿勢を無暗に水平に補正してしまうのは得策とは言えない。極端な補正はフロントの接地圧を減じて強アンダーステアの原因ともなる。そこでJAOSでは、様々なシチュエーションにおいて様々な前後バランスの状態をテストしたうえでベターな設定を編み出した。適度な補正はリアサスペンションへの荷重を増やし、乗り心地の改善にもつながるという。
■リフトアップ量は最大
フロント:35~40㎜(2017-2020/08)
フロント:30~35㎜(2020/08〜)
リヤ:40~45㎜(2017-2020/08)
リヤ:45~50㎜(2020/08-)
※BATTLEZ リフトアップセット VFCA ver.Cの使用時

フィーリング:乗り味と操作性

モノチューブダンパーならではの接地感を純正リーフスプリングで実現

一般道

ラフロード

ワインディング

VF-Rの特徴として視覚的に分かりやすいのはリザーバタンクの存在だが、パフォーマンスに直結した最大のポイントはモノチューブタイプの構造だ。例えば、純正を含めて広く普及しているツインチューブダンパーは、ストロークによって減衰力が発生するが、モノチューブダンパーは充填された高圧ガスによって常に接地方向に力が加わっているのだ。そこで、ソフトにセッティングしても路面をつかんで離さないしなやかな足回りが実現できる。ところが、ハイラックスのリアに設定されたリーフスプリングは、アクスルの位置決めまでスプリングが担っているので無暗にソフトなセッティングを施すとジャダーが発生してしまうのだ。しかし、ハードなセッティングではスタビリティには優位でもコンフォートライドを実現できない。さらに、VF-Rの基本セットではリヤは純正リーフスプリングを流用するという設定は決まっていたので、スプリングとダンパーの複合的なセッティングもできない。そんな一筋縄ではいかない状況下でのチューニングには数年かかってしまったが、JAOSの誇る“BATTLEZテイスト”を作り上げてきたマイスターたちが満を持してリリースするのが今回のハイラックス用BATTLEZダンパーVF-Rだ。そのライドフィールは決してフンワリした“ダンナ仕様”ではないが、あるゆる路面でダンピングの効いたスポーツドライビングが楽しめる快速仕様に仕立て上げられた。