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質感・走り・外観の全てが “新型”にふさわしく進化!ONでもOFFでもその走りまさに自由自在

 日産、ルノー、三菱のアライアンスによって開発された新しいプラットフォームを採用した新型アウトランダーPHEV。2021年12月16日の発売前から受注を受けたこともあるが、2月5日にはモデル累計受注台数は1万台を突破した。ちなみに販売計画台数は1000台/月であり、また先代の年間過去販売台数が1万1000台だったことからも、いかにその注目度が高いかをうかがい知ることができる。
 受注したユーザー層を分析してみると、三菱車からの乗り換えが約5割と少なくはないが、その名中でも三菱のPHEVを初めて購入する人たちが約8割を占める。さらには輸入車からの乗り換えが予想外に多いことも特徴だという。
 ベースとなったプラットフォームは、先に触れたように3メーカーで共用されるものだが、実はCセグメントだけではなく、Dセグメントもターゲットにされている。つまりCセグから眺めるとアッパークラス感が非常に強く、それを逆手に取るかのように…つまり、その進化を十二分に感じられるように最新のアウトランダーはつくり上げられている。
 ボディサイズやパッケージングにおけるトピックは、サイズを劇的に大きくしなかったこと(全長15㎜ロング/全幅60㎜ワイド)、またPHEVユニットを有しながらサードシートを備えたことが挙げられる。サードシートに快適性はあるのか?と問われると、NO、エマージェンシーと言わざるところもあるのだが……。

今回は公道での試乗となったが、乗り込んでみて感じたのは、すこぶる高くなった質感と広々感がもたらす居心地の良さだ。ただし実際の室内幅は先代比10㎜ワイドに留まっており、これについては造形や質感を含めたデザインセンスによるところが大きい。アクセルを軽く踏み込むと2tオーバーの車重を感じさせることなくスーッと動き出すが、そこには〝モータードライブだから〟という理由以上に感動があった。それは剛性の高いボディ、しなやかさと剛性感を併せ持ったシャシー、さらには高い静粛性、抑えられたタイヤの転がり抵抗など、さまざまなアプローチから仕立てられたもので〝気持ち良さ〟と表現できるもの。そのフィーリングはアクセルを踏み込んでいっても変わることはないどころか、快適性という心地良さも加わり、まさに気分爽快なドライブへと誘ってくれる。
 アウトランダーPHEVを〝スポーティ〟という言葉でまとめあげてしまうのは、いい意味で僕は無理だと思った。例えば好印象だと感じたステアリングフィールは、技術的にはデュアルピニオンタイプのパワーステアリングを採用してダイレクト感を得て、それに伴ってギア比をクイックにしてリニア感を生んでいる。そこに実は安心感も存在していて、意のままのドライブ感をつくり上げている。分かりやすく言えば、スポーティさは結果として得られたように感じる。シャシーも同様に、しなやかさはハンドリングの愉しさを提供するだけでなく、一方で外部からの音振動を防ぐ手法を組み合わせることで、スポーティかつ快適という相反する性能を得ている。
 その不可思議な印象は、快適とスポーティだけでなく、ほかにも感じとることができた。例えばいわゆる交差点では、モータードライブゆえのレスポンスのよさからスッと曲がれるだけではなく、広い視界によって安心感がプラスされていた。それがゆえの心地良さだったし、高速走行では直進性が高いことはもちろん、レーン変更をしようとステアリングを緩やかに操作すると、安定感がもたらす安心感をスポイルせずに、上質という制御によって、自然にノーズが向きを変えて行く。
 クルマから降りて255/45R20のタイヤを目にした時、あの快適性とスポーティさをこのサイズでバランスさせていたことに驚く。これについて開発陣に聞いたが、ドイツでかなり走り込んで決定したチューニングだと自信をもって教えてくれた。言い換えると、新型アウトランダーPHEVには不満が見当たらないのだ。
 また今回はダートコースを走る機会も得た。試乗したのは、前日夜に小雨が降り、コースは〝いい感じ〟にヌタっていた。ヌタヌタではないが、降雪翌日の凍結路よりは路面μは高く、タイトコーナーでは十分に速度を落とさないと曲がれない…そんな路面状況だ。
 ご存知の通り、新型アウトランダーPHEVはツインモーター4WDをベースに、AYC、ASC、ABSによる制御を組み合わせた『S-AWC』を採用している。このシステムそのものは進化しているが、新たにリアにもAYC制御を加えていることもトピック。これが旋回時におけるコントロール性をアップさせている。ドライブモードは、ノーマルを基準として、運転スタイルで選ぶ2モード、そして、路面状況で選ぶ4モードが設定されている。
 先の路面状況から、今回のダートコースではもはや「GRAVEL」ではなく「SNOW」モードを積極的に選択してみたが、実はこれが好印象だった。滑り出しをわずかに感じさせながら、その挙動を安定方向へ導いてくれるセッティングはまさに絶妙。雪道に不慣れなドライバーは、滑り出しを感じると反射的にアクセルペダルから足を離してしまうと思うが「そんな必要はありませんよ」と言わんばかりの制御に少々驚いた。
 もうひとつ印象に強く残ったのは、まさに〝直結ヨンク的なフィーリング〟をつくりあげていた「MUD」モードだ。直結ヨンクはドライビングを誤ると簡単にプッシュアンダーが顔を出すが、コントロール性を失わせる一方で不整地を前進していくためには不可欠である。それらをいかに調整するかに走りの愉しさがあるが、なんとそれをきっちりと「再現」していたのだ。しかもその制御はプッシュアンダーが顔を出す直前までアクセルを踏み込んでいても、ステアリング操作だけで挙動をコントロールできてしまうという仕立て。少々ラフな挙動に陥っても、その後のおつりはすこぶる整えられており、修正がとにかく楽。あれ自分って、こんなにドライビングが上手かったっけか?と勘違いしてしまうほどだ。
 そう、いちばんハードなシーンに対応できるモードは、単に脱出性だけではなく、そこに操る愉しさまで作り込んでいた。

 今回の試乗記では、あえて「ガソリンエンジン駆動」「モーター駆動」といった制御における走りの印象の違いには触れなかった。もちろん、テストドライブ当初はそれを懸命に探ってのインプレッションを行なっていたのだが、今回の新型アウトランダーPHEVではそれを感じさせないこと…つまりシームレスな走りであることをしっかりと作り込んでいたことに気付いたためだ。
 誰しもがシーンの違いはもちろん、そういった制御を意識することなく走ることを愉しめるモデル…それが最新型アウトランダーPHEVなのだ。

最新型アウトランダーPHEVのケーススタディ的モデルとして、2019年の東京モーターショーに出展されていた「ミツビシエンゲルベルクツアラー」を覚えているだろうか。サイズは異なるが、実は見た目はまさにそのものだ。またボディは大柄になったかのように見えるが、全幅が80㎜ワイドになった程度で、それほど大きくなっていない。
今や20インチタイヤが標準…ということに驚かされるが、それよりもこの採用モデルをベースに欧州で徹底的に走ってつくり込んできた走りの良さに驚愕。スポーティさだけではなく、快適性や悪路にも対応。ボトムグレードは18インチ。
広い!質感がアップしたと感じさせるインテリアだが、実は室内寸法は大きく変わっていない。センターコンソール幅をDセグメントレベルにまで広げたこと、快適性を作り込んだシートデザインなどが、アッパークラス感を表現。水平基調をさらに強めたインパネ造形も美点。

V航続距離は83~87㎞走行可能に!よりパワフルに、そしてシームレスになったモーター走行

モータードライブの魅力をさらに引き上げるために、EV走行頻度の向上、EV航続距離の向上、EVらしい加速感をアップさせることを目的としてPHEVユニットは刷新された。フロントモーターはマグネット配置や巻き線の最適化および、冷却効率を高めた油冷システムなどを採用し、最高出力を60→85kW、最大トルクを137→255Nmへと大幅アップ。一方リアモーターは、最大トルクは先代と同じく195Nmとしながら、最高出力を70→100kWへと、やはり大きく向上させている。駆動用バッテリーは体積を小さくしながら容量をアップ。モードはEV走行モード、シリーズ走行モード、パラレル走行モードの3つを設定。もちろん、家庭用電化製品をそのまま使えるAC100Vコンセント(合計1500W)、クルマと住居をつなぐV2Hにも対応している。
先代にも搭載されていた2.4LMIVECガソリンエンジンを改良して搭載。エキゾーストマニホールド一体シリンダーヘッド、EGRクーラー、低回転領域、高回転高負荷域での燃費向上など、発電効率を高めるための改良が施されている。

進化したS-AWC

今やすっかりお馴染みとなった三菱の車両運動統合制御システム『S-AWC』。ハンドル角、ヨーレイト、駆動トルク、ブレーキ圧、車輪速といった情報をセンサーを介して収集し、ツインモーター4WD、AYC、ASC、ABSを統合的に制御することで、意のままの走りと高い安定性をハイバランスさせている。最新型アウトランダーPHEVでは、これまでフロントのみだったAYC制御を、リアにも採用。滑りやすいシーンでの安定性、コントロール性を大きく高めていた。
いわゆるUSBだけでなく、100V ACのアース付き電源コンセントをコンソールボックス背面(リヤシート前側)や、ラゲッジルームの運転席側に配置。家電が使えるのはPHEVの大きなメリットだ。
これまでのPHEVシステムと同様に、100V AC電源(最大1500W)を介した家電製品の活用や、クルマと住まいをつなぐV2Hとしての活躍も期待できる。例えば最大で約12日分の電力を提供が可能なほか、水加熱式ヒートポンプの採用(PとGは標準、Mはオプション)により、エンジンを始動させなくとも暖房を利用可能になったこともトピックだ。
ドライブモードは、NORMALをスタンダードとし、運転スタイルで選べるECO、POWER、路面状況で選べるTARMAC、GRAVEL、SNOW、MUDを設定。モードごとでの走りの違いが明確になっていることもトピック。またセレクターは、大型で扱いやすくクリック感が作り込まれたダイヤル式として、センターコンソールに配置。