グラントレックシリーズを一気乗り!と題し、ダンロップのグラントレックシリーズを代表する3つのタイヤをフィールドに持ち出しそれぞれのキャラクターをチェックしてみた。
用意したタイヤは、グラントレックシリーズの中では、オンロード志向の強いユーザー向けとされた「グラントレックPT3」。オールテレーン、つまりオールマイティなキャラクターを与えられた「グラントレックAT5」。そして、シリーズ中で、もっともヘビーデューティなパフォーマンスを期待できる「グラントレックMT2」となる。
テスト車両は、タイヤの性格に合わせて3種類を用意した。グラントレックMT2には、コンパクトで機動力の高いジムニーを合わせた。グラントレックMT2のオフロード性能の高さを試すにはノーマル車高では役不足と判断し、約40㎜ほどアップし、さらにフロントバンパーをショートタイプに交換し、できる限りタイヤの動きを規制しないよう配慮した。グラントレックAT5にはオンロード&オフロードの走りをバランスよく楽しめるランドクルーザー プラドを、グラントレックPT3は、オフロードも行ける唯一無二のミニバン・デリカD:5を組み合わせた。
確認内容は、オンロードの乗り心地・ハンドリング・静粛性、オフロードの走破性など。今回の走行条件は、一般的な使用範囲を超える状況(クルマを傷付ける恐れのある激しい走りなど)は想定していない。
■テストに使用するグラントレック3シリーズ
GRANDTREK PT3
テスト車両:DELICA D:5
ミニバンというスタイルをベースにしながらオフロード走行性能がプラスされたキャラクターは、デリカD:5ならではのもの。先のマイナーチェンジでプレステージ性をアップ。
装着タイヤ:DUNLOP GRANDTREK PT3 225/55R18
装着ホイール:MLJ XTREME-J 18×8.0J(40)
GRANDTREK AT5
テスト車両:LAND CRUISER PRADO
機能の充実を図る進化を遂げてきたプレミアムSUV。最新の電子デバイスを導入することで、ランドクルーザー200を凌ぐと言われるほどに、走りの質が高められている。
装着タイヤ:DUNLOP GRANDTREK AT5 265/65R17
装着ホイール:CRIMSON GOLEM 17×8.0J(20)
GRANDTREK MT2
テスト車両:JIMNY
ハイレベルなオフロード走破性を持ちながら、不満を抱かせないオンロード性能をバランスさせた最新型のジムニー。40㎜アップでオフローディングに挑む。
装着タイヤ:DUNLOP GRANDTREK MT2 195R16C
装着ホイール:apio WILDBOAR Z 16×5.5J(20)
◆GRANDTREK PT3
走りから乗り味に至るまで、質感を大きく高めてくれるタイヤであり、乗り心地を重視したい、ハンドリングにもっと素直さを求めたい、といったユーザーが満足できる性能を持っている。アクセルペダルを踏み込んでいる右足にゆっくりと力を加えていくと、クルマがすっと動き出す。そして、タイヤがひと回りしないうちに接地感が豊かであることが伝わってくる。さらに速度を上げると、ケース剛性がしっかりと確保されているため、ハンドリングにきめ細やかさが生まれ、さらに、先の接地感もあいまって、しなやかさを体感する。タイヤが発するロードノイズやパターンノイズが抑えられていること、それが耳障りではないことにも気が付いた。
ON ROAD
快適性を具現化しており、それはコンフォートと気取った表現を使いたくなるほど。高速域での走行は、直進安定性がはっきりと感じ取れるもので、レーンチェンジでは操舵に対する応答遅れはなく、むしろ、素直さを感じた。それはハンドリングにおけるシャープさが増したのではなく、オンセンターが明確になり、SUVの骨頂である心許したくなるような乗り味が、さらに引き上げられたといえば伝わるだろうか。
OFF ROAD
ダートでのハンドリング性が想像以上に秀逸であり、グラントレックの一員であることを強く感じさせる。コーナリングでは、ステアリング操舵初期の応答性がよく、そのままに切り足していっても、ノーズが素直にインを向き、ダートランに愉しさがプラスされる。ヒルクライムではアクセルを踏みながらタイヤのグリップを探っていると、グッグッグググッといった具合に滑らせながらもトラクションを掴み、結果、登りきった。
◆GRANDTREK AT5
結論から言ってしまえば、オン、オフともに満足できる性能を持っており、まさにハイバランスな仕上がりとなっている。ハンドリングにおいては、オンセンターからしっかりと操舵感があり、コーナーでステアリングをじんわりと切り足していってもグリップ感は明確。グリップ力もなかなかなもので、不足を感じることはない。直進性にも不足はない。パターンノイズらしき「音」は伝わってくるが、音量が小さく耳障りなサウンドではないため、気にならない。オフロードでは、頼もしさにさらに愉しさを感じた。ダートランは思いっきり愉しめるといった感じで、クローズドコースならば少しアクセルを開けて走りたくなる衝動に駆られるほど。
ON ROAD
アンジュレーションのあるシーンでは、ランドクルーザー プラドのサスストローク量をここぞと使った乗り味に対して、グラントレックAT5はサイドウォールやトレッド面に与えられた「しなやかな剛性感」で受け答えているかのようで、乗り心地と操縦性とをハイバランスさせていた。アグレッシブなブロック基調のデザインながら静粛性は高く、剛性感もあるのでハンドリングに安心感と愉しさが感じられる。
OFF ROAD
タイヤに岩が触れたところで、さらにアクセルワークを緩やか行なうと、ズルっと滑ることなく、トレッド面で岩をしっかりと抱えこみ前進する。岩にタイヤを乗せたところで向きを少しかえようとステアリングを操作しても、滑るようなことはない。モーグルでは、タイヤが路面を捉えているかどうかが実に分かりやすかったし、ヒルクライムでは登り切る直前にある凹凸でトラクションを失いかけながらも即座にグリップを与えてくれた。
◆GRANDTREK MT2
オフロードの走破性については期待以上。岩場ではしっかりとサイドウォールをたわませてロックを包み込み、ダートでは路面を掴んで後方へと蹴飛ばすかのようにトラクションを確保する。そして、コントロール性も高い。オフロード競技で愛されている理由であることが分かった。今回はテストできなかったが、タイヤの溝に泥が詰まってしまうようなシーンでは、このシンプルなトレッドデザインによって排泥性が高いことは容易に想像できる。オンロード性能はトレードオフになっている部分はあれど、ワイドにおいてはハンドリングのオンセンターが曖昧になるとか、乗り心地における不快感が出ることはなかった。
ON ROAD
乗り心地は、ブロックパターンからゴツンゴツンをイメージしたが、そんな不快感は見当たらず、むしろ、ブロックデザインながらも接地感がしっかりと確保されていたことに驚いた。速度域を上げると、コーというライトな音質のロードノイズは、やがてゴーと大きくなり、さらにパターンノイズも発するようになるが唐突さはなく、むしろ、先に感じた接地感や不快ではない乗り心地も手伝って、日常でも不満はないなぁと感心した。
OFF ROAD
ダートランはいうまでもなく、高いグリップ力と安心感が愉しさを導き出してくれていた。特に横方向へのグリップ力は高く、センターブロック剛性の高さも相まって、アクセルコントロールだけでのドリフトを自由自在に行なえる。モーグルでは、トラクションコントロールの介入を必要とするラインをあえて選んでみたが、接地輪へと配分されたトルクを余すことなく路面に伝えてくれるため、それこそ難なくクリアしてしまった。
■路面との接地具合を確認する
GRANDTREK MT2
ロックセクションで求められる「しやなかさ」を実現しており、サイドウォールをたわませて、それこそトレッド面から一体となって岩を掴む。ダートではしっかりと路面を捉えてトラクションを確保する。オンロードでは、ブロックデザインながらも接地感が確保されるので乗り心地における不快感が出ることはない。
GRANDTREK AT5
オンロードは言わずもがな。オフロードにおけるグリップ力は期待以上で、ロックセクションに持ち込んでも、グリップを唐突に失ってしまうことは少なく、しっかりと岩場を掴んでいる。実に頼もしい。オフロードへ行くまでのオンロードの移動を含めた行程も安心・安全に走れる。
GRANDTREK PT3
タイヤと路面が接している面が、広く均一であることが、ハンドルを通して伝わってくる。それは、路面をしっかりと捉えながら,滑らかといわばかりにタイヤを転がしているといった印象である。発進から20km/hにも満たない領域で、このPT3のアドバンテージを感じ取ることができた。
■最も得意とする走行シーンは?
GRANDTREK MT2
オフロード走破性においては「最強」を謳われるほどの人気があり、オフロード競技参加車への装着率も高い。オフロードにおけるパフォーマンスはハイレベルでロックからマッドまで頼れる相棒といった感じ。また、ランドシー比を高めたナローと、オンロード走行も考慮されたワイドと呼ばれる2タイプを設定。
GRANDTREK AT5
オフロード走破性においては「最強」を謳われるほどの人気があり、オフロード競技参加車への装着率も高い。オフロードにおけるパフォーマンスはハイレベルでロックからマッドまで頼れる相棒といった感じ。また、ランドシー比を高めたナローと、オンロード走行も考慮されたワイドと呼ばれる2タイプを設定。
GRANDTREK PT3
オンロード走行での走りを、操縦性や安定性はもちろん、快適性、経済性までブラッシュアップしてくれるモデルで、日常の走りをさらに高めたいユーザーに最適。技術的には、パターンの最適化と真円プロファイルによって、クルマが動き出した瞬間から豊かな接地感と転がり抵抗が低いことなどが挙げられる。