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2021.07.21

「ELFORD」〝パーツ考察〟正しい運転姿勢を支援する産学連携のフットレストカバー

今、耳にしたくはないが、最近ニュースで流れてくるクルマのアクセル・ブレーキペダルの踏み間違いによる事故。最悪は誰かの命を奪い、取り返しの付かない事態を招きかねない。もちろんそういった事故を防ぐため、最新モデルには先進安全装備が用意され、万が一を回避して被害の軽減が期待できる。しかし現状登録されているクルマはすべてが最新ではないし、すべてにそういったシステムが装備されているわけではない。そこで思いつくのが〝後付け〟という手法。しかしそもそもクルマの挙動を安定させながら、ある程度の回避行動(操縦)を可能として、理想とされる安全を求めて作動させるシステムゆえに、「ただブレーキペダルを踏みました」的な操作だけではない複雑さがあり、なかなか難しい面がある。機能もさして盛り込めず、取り付けにも時間がかかる…結果トータルとしてコストが掛かるといるデメリットがあるのだ。
 なぜ、ペダルの踏み間違い事故は起こるのだろうか?そんな疑問から生まれたのが、今回紹介するELFORD(エルフォード)ブランドからリリースされた運転支援装置の「フットレストカバー」。

エルフォードといえば、いわゆる気分を上げてくれるカスタマイズパーツをリリースするブランドとしてお馴染みだが、この商品はそのラインナップからすると少々異端に映る。しかし昨今の取り返しの付かない事故の数々を目にして、エルフォードブランドを展開する株式会社/明和の代表取締役・藤森正信氏は、先述したシンプルな疑問から何とかしたいという想いが沸いてきた。そして、いろいろと調査していくうちに「ドライバーの運転姿勢のズレ」がペダルの踏み間違いを誘引しているひとつの理由であることに着目。ドライビング中の左右や後方視界確認であったり、インパネ範囲内での視線移動であったりといったドライバーの動きがもたらすペダルの踏み間違いを、正しい運転姿勢とすることで抑制する…そんなアイテムに仕上がっている。
 ここまで聞くと、どれだけ大掛かりなシステムなんだ?と思われるかもしれないが〝アイテム〟と表現した通りむしろシンプルなもの……それはなんと「フットレストカバー」なのだ。フットレストに手を加えるだけで踏み間違いが抑制される?初めて耳にした方は疑うかもしれない。
 しかし、フットレストは単なる足を休めるためのものではなく、同時に理想のシートポジションを取るための〝支え〟となるのだ。エルフォードの「フットレストカバー」は、まずフットレストのサイズ(足との接地面)を広げることで正しい運転姿勢を取りやすくし、さらにブレーキペダル側にまさに土手のような形状を設けることで、起点ともいえる左足の動きを制限。実際に装着した車両に座ってみるとこれが不思議で、正しいシートポジションを取りやすくなることはもちろん、左足を置く場所が明確になって心地良ささえ感じられる。
 こうした正しい運転姿勢を支援することで、腰痛などの身体的トラブルの解消や長距離運転時の疲労軽減にも効果が得られる上、さらに踏み間違いを抑制するという。まさにその効果は「お値段以上」だが、実際に科学的(工学的)に安全性が導かれるのかを検証するため、エルフォードは産学連携によって、埼玉大学大学院理工学研究科との共同研究を締結。現在、実車を模したコクピット&シートとVR技術を用いたシミュレーターでデータを収集している。そして、すべてのデータ取りが終了すると同時に解析に入るというが、現時点でもペダル踏み間違いを抑制するために有効なデータが上がってきているようだ。その結果は秋に公表を予定している。
「たかがフットレスト、されどフットレスト」といった表現がピタリと来るシンプルなアイテムだが、アウトドアブーツにも対応する大型タイプとすることで、一般走行はもちろんオフロード走行でも左足の踏ん張りが効いた最適な姿勢を保持して、ドライビングに集中できること間違いなし。
 ちなみにこのフットレストカバーは先述した特異性が認められて、特許を取得している。本誌では今後の車種別展開や改良内容、データ解析などの最新情報などをお伝えしていくので乞うご期待あれ。

◆フットレストカバーの特長

エルフォード・フットレストカバー

➊本体右側の壁が左足をしっかりと固定
➋大きく足を載せやすいサイズを採用
➌3点支持により体がバッチリ安定する
➍腰痛などの身体的トラブルを解消
➎長距離運転時の疲労を低減

足を休めるためのものではなく、正しいシートポジションを取るために必須のアイテムとなるフットレスト。エルフォード・フットレストカバーはその名の通り、純正フットレストをカバーするスタイルを採用。大型タイプとすることで左足をしっかりと置ける(むしろ、置きたくなる)テイストを実現。また、アウトドアブーツにも対応するため、オフロード走行時の姿勢保持にも効果的だ。さらにブレーキペダル側に左右や後方確認といったドライバーの体の動きに対して、左足を動かしにくい(ポジションからズレない)まさに土手のような形状の壁を設置(特許取得済み)。ユーザー自らがDIYで短時間で取り付けられることもシンプルなアイテムであるため、リーズナブルであることもポイント。
ヒューマンインターフェイス、いわゆる人間工学に基づいた心地良さ、例えば疲れにくいであるとか、使いやすさや思い通りに動かせるといったことを研究している埼玉大学大学院理工学研究科の楓 和憲准教授。今回のエルフォード製 「フットレストカバー」に対して、ヒューマンエラーを起こさせないシステムとしての役割を再認識したとか。

国立・埼玉大学大学院理工学研究科との産学連携の共同研究で実証中!

埼玉大学大学院生の小林 海登さんを中心としたチームでは、エルフォードが開発した 「フットレストカバー」によって、社会的にも問題になっているペダルの踏み間違い事故をどのぐらい抑制できるのかについて、実験と検証を行なっている。実験車両はプリウスだが、シートやステアリングは純正品を採用して取り付け位置や角度まで実車同等とし、プリウスから型取りしたFRPでフロアを作り上げ、さらに周囲の様子をヘッドセットを用いたVR技術によって再現。

 

このシミュレーターにより、直進時・停止時はもちろん、右側から後方視界を確認した場合・左側から同様の動作をした場合に、ペダルにかかった足の位置、さらにその際の体の捩れ具合までも計測。この結果をエルフォードにフィードバックしながら、より良い製品開発を供に進めている。ペダルの踏み間違いの抑制への効果についての検証結果の発表は秋になるというが、現時点でドライブの際のネガティブ要素を軽減できるといったメリットは多い。
埼玉県内にあるエルフォードとのこの共同作業は、地元で産業を興すという産学連携の社会貢献的な試みでもある。

埼玉玉大学大学院理工学研究科では、実車を模したコクピット&シートとVR技術を用いたシミュレーターにより、老若男女問わずデータを収集して、鋭意解析中。ペダルの踏み間違いを抑制するための有効なデータはある程度蓄積されてきているが、その結果については今秋の公表を予定している。