自動車メーカーも趣向を凝らしたカスタムモデルを出展して話題を呼んだ東京オートサロン2023。中でもスバルが展示した『SUBARU BOOST GEAR(ブーストギア)コンセプト』は、特に注目を集めたモデルだ。
今回、その車両を取材する機会が得られた。しかも開発リーダーであるSUBARU アクセサリー企画部・クリエイティブディレテクターの須崎兼則さんへの動画インタビューも連動。まずはこコンセプトカーの概要を聞いてみた。
須崎 :「SUBARU BOOST GEARとは、スバルが2023年から新たに提案するメーカー直系のアクティブギア・ブランドです。SUBARU クロストレック BOOST GEARコンセプトは、2022年12月に発表された新型クロストレックをベースにカスタムしました(一部純正オプションを装備)。
最大の特長はドレスアップを図るだけでなく、追加された全てのアイテムに機能が与えられていることです。その理由はお客様の『使ってみたい』『行ってみたい』『挑戦したい』という感情を刺激し、アクティブライフへの冒険心を後押しする存在となるためです。それが、ブランド名の〝BOOST〟という言葉で表現されております。」
実際に展示車を見たユーザーからの反応も良く『このまま発売して欲しい』という反響が多かったという。実際カスタムポイントには様々なアイデアが凝縮され、このコンセプトを形作っている。
SUBARU クロストレック BOOST GEARではドレスアップを図るだけでなく、追加された全てのアイテムに機能が与えられているのが特徴だ。フロットリップセンター、ボディサイド、リアセンターにはプロテクターデザインのパネルを追加し、サイドにはステップタイプのバーも装着。ライトバーを備えるルーフキャリアに加え、アクセス性を高めるための専用サイドステップを追加。アウトドアシーンで活躍するサイドタープも搭載。さらにリアバンパーの下にはクロストレック専用のヒッチメンバーを備え(北米スバル純正品)、サイクルキャリアなどの装着が可能だ。
また、ボディ全体にはチタン調ヘアラインのラッピングが施してあり、クロストレックのフォルムをより際立たせる。このチタンの塊から削り出したような質感に加え、プロテクションモールやドアミラーには走行中の擦り傷を防ぎ、さらに走行性能の高さを存分に発揮できるザラザラした特殊塗装を施した。この2トーン化も秀逸。
須崎:「「傷がつきにくい特殊塗装を施すことで、藪やオフロード走行での傷つきを低減できますので、『今まで出来なかったことに挑戦出来る』というコンセプトを体現しています。もし虫や汚れがついてもタワシなどでガシガシ洗ってあげれば大丈夫。塗料メーカーさんと共同で量産化を目指しているところです。
また、アンダーガードも4方向全部同じ意匠で合わせています。こちらもやはり今まで行けなかったところに行けるように、しっかりと守られている感じを表現したくて、コンセプト採用しました」。
純正オプションパーツを巧みに使いながら、特殊塗装の採用や特別な意匠を取り入れて独自のスタイルを構築しているのは面白い。編集部が注目したのは、純正オプションのフロントグリルにライトを追加したコンセプトカスタム。アイコンである六角形のフロントグリルに視認性のいいライトを入れることで、予防安全やスバル車だと認識できるようにしている。
須崎:「「フロントノーズガーニッシュやランプガーニッシュ、ドアアンダーガーニッシュといったプロテクターは、純正オプションとしてご購入いただけます。フロントノーズとランプガーニッシュは、厚みのある硬質ゴム製で、滑り止め効果があるテクスチャーを入れております。
これは、スノーボードを楽しむメンバーからのアイデアから生まれました。ブーツの紐を結ぶときに、スノーボードを立てかけることが出来たら便利だ!ということがきっかけです。もちろん、スノーボードだけでなく、スキーやサーフィンでも使えます!」。
なんと、ボンネットに貼られた艶消しブラックのデカールは純正オプションである。ボディ塗装保護と日射の照り返しを軽減する視界確保効果を持ち合わせている。また、リヤのヒッチメンバーは北米スバル純正品であり、社外サイクルキャリアを装備。
須崎:「「アクティブな趣味を持つユーザーに向けて提案したいのが、フェンダーにバーを備えていることです。これはまだコンセプトモデルですが、ここにはいろいろな物を引っかけていただけるとと考えています。例えばカヌーをルーフに載せて運ぶ際にタイダウンしていただいてもいいですし、GoProを装着すれば撮影可能。バーの径は、一般的なマウンテンバイクのハンドルバーと同じ径にしてあるので、今、お客様がお持ちのものをそのまま使ってもらえるということなんです」。
東京オートサロン2023に出展されていたこSUBARU クロストレックBOOST GEARコンセプトを取材した理由が2つある。1つ目は、今後のシナリオの確認。2つ目は、装着タイヤが変更されていたからである。
須崎:「「3つの親和性があることから、トーヨータイヤさんとのコラボレーションに至りました。
まずは『オープンカントリー』ブランドの由来である〝心の垣根を解き放ち、自由な大地に飛び出していく〟と『SUBARU BOOST GEAR』の由来である〝お客様のアクティブライフの後押しをする(今まで行けなかったところへ行ける)〟という、お互いのブランドコンセプトがシンクロしていました。
次にオフロードレース活動で得た実績を商品開発へフィードバックしていることです。トーヨータイヤさんはBAJAとダカールラリー、SUBARUはラリーを行なっておりますので、親和性がありますね。
最後に、オフロードとオンロードの両方で安心した性能を発揮できるオープンカントリーとクロストレックの親和性も注目すべきポイントです。以上のことから、このコンセプトカーを際立たせるためにオープンカントリーを採用しました。もちろんホワイトレターが入っていてアイキャッチになることもオープンカントリーを選んだ理由のひとつです」。
このコンセプトカーを見たら、北米専売車であるスバルの本格オフロードモデル「ウィルダネス」に通じるオフロードテイストを感じざるを得ない。もしや日本市場投入への予告なのだろうか。
須崎:「「残念ながら、そうした動きはまだ未定です。もちろん今回のコンセプトカーに装着した一部パーツは、すでに量産化されている純正オプションを選んでいますので、近づけることはできます。
もちろん〝ウィルダネス〟を国内で出さないのか? という要望は、お客様からも多くお寄せいただいて
いますが、様々な事情があって実現できていません。私は、ウィルダネスのデザインを担当しておりました。SUBARU クロストレックBOOST GEARコンセプトは、『ウィルダネスを超えてやる!』という思いです」。
よりSUVらしくラギッドに仕立てられ、そしてユーザーの期待を超える部品のアウトプットを目指すと語る須崎さんの言葉からは、SUBARU流の本気四駆へのコダワリが感じ取れた。
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■Special Thanks
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