日本が誇るアルミホイールメーカー『WORK(ワーク)』。多くのホイールブランドを擁するが、その中でオフロードに特化したホイールが『CRAG(クラッグ)』。Crossover(クロスオーバー)Racing(レーシング)Gear(ギア)の頭文字が取られたこのブランドは、コンペティションシーンで勝つために造り出されたという背景を持つ。
「メキシコで開催される世界的なオフロードレース『Baja1000』で戦える国産ホイールを造って欲しい」…そうWORKに話を持ち込んだのは、オフロードレーサーの塙 郁夫(はなわ・いくお)選手。塙さんといえば、JFWDA・チャンピオンシップレースシリーズで10年連続チャンピオンを獲得した後、1991年にBaja1000に参戦。日本人初の完走を成し遂げ、2002年にはクラス優勝を果たした人物だ。その塙さんが常々思っていたのが 「軽いビードロックホイールがあればイイのに」ということだった。
WORK Concept For Baja Forged Beadlock 2015 MODEL
Baja1000やTHE Mint400といったレース時だけでなく、普段のプラクティスや国内イベント参加時にも使用しているBaja Forged Beadlock 2015 MODEL。数々のキズは付いているが、これまでにトラブルは一度もないというホイール。
塙選手がオリジナルのマシンで参加を決めたBaja1000への出場をきっかけに開発されたワンオフの鍛造ホイールである『Baja Forged Beadlock 2015 MODEL』。CRAG T-GRABICのベースデザインとなったモデルだ。
2015 MODELのコンセプトとパフォーマンスを引き継ぎながらホイール外周部のホールデザインを若干大きくした『Baja Forged Beadlock 2016 MODEL』。レースマシンへの固定時の利便性などを考慮している。
2015 MODELのデザインを引き継いで鋳造で市販化された『CRAG T-GRABIC』。ダブルギアスポークデザインは、軽量化と高剛性を高次元で融合できることから採用。機能美を集約したともいえる革新的なデザインのホイールだ。
CRAG T-GRABICのダブルギアスポークデザインを踏襲しつつも、センター部を力強い6本スポークとしたのがCRAG T-GRABICⅡ。Baja Forged Beadlock 2016 MODELを基にデザインされた鋳造ホイールである。
塙 郁夫選手
塙 雄大選手
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塙:ホイールに関しては、アメリカ製ビードロックの装着率が非常に高くて、国産メーカーはほとんど無いに等しい状況だったんだよね。タイヤはずっとヨコハマのジオランダーで、市販のタイヤで勝つというのがポリシーで。そこに日本製の軽いビードロックホイールを加えたいと思ったのが、WORKホイールを履くきっかけかな。それで2015年のBaja1000参加を決めた後、WORKさんへ相談して、勝てるホイールを造れないかと(笑)。
編集部:日本には多くのアルミホイールメーカーが存在しますが、WORKを選んだ理由とは?
塙:軽いビードロックホイールがあれば勝てる、ということはいくつかのメーカーに話していたんだけど、真っ先に乗ってくれたのがWORKさんだった。数々のレースで多くの実績も残しているWORKなら、きっとやってくれると思えたし(笑)。そうしたら、本当に鍛造のスペシャルホイールを比較的短期間で完成させてくれた。
編集部:それがBaja Foged Bead lock2015モデルですね。
塙:アメリカにもビードロックホイールは数々あるけど、どれも本当に重い。堅牢さを重視している結果だろうけど、レースする側としたら、軽いにこしたことはない。ハンドリングもドライバーの疲労度も軽いことがメリットになることは明確。でも軽くても割れてバーストするようなホイールでは困る。特にBaja1000のような1000マイルをぶっ通しで走るレースでは、バーストによるタイムロスは大きく順位を落とす原因です。しかも砂漠やオフロードのみならず、オンロードも入るので、あらゆる路面でタイヤを支えるホイールでなければ勝てない。2015年に出場したBaja1000は、オリジナル設計の2WDバギーでの参戦で、ホイールに関するデータは無かったんだけど、これまでの経験からボクの希望を伝えながら、WORKさんに造ってもらったんだよ。
最初に依頼したのは30本かな。完成したそのホイールはとにかく軽くて、市販の4WD用ホイールとほぼ同じ重量。ビードロック付きだと1.5倍は重くなるのが一般的だから、もの凄く感動した!
編集部:軽くて堅牢というビードロックホイールという以外に、塙さんがWORKに伝えた要望は?
塙:まずエアバルブ。品質が良いものでなければダメなのはもちろん、石などがヒットしにくい形状であることも重要。その答えが、小さめのホールにエアバルブを仕込むことで、必要以上に倒れないものとしていた。また、ビードロックリングは脱着しやすよいうに、ボルトを回しやすい形状としてくれているんだよね。泥などが詰まりにくい形状であったり、細部にこだわっているのが『Baja Foged Bead lock2015モデル』だね。
ディスクのデザインはWORKさんが強度と軽量化を達成させるための結果で、デザイン優先で誕生したものではない。ボクはカッコイイホイールだと感心していたんだけど、むしろ機能優先だと知って嬉しかった。目的は何より勝てるホイールだったから。ちなみにビードリングをオレンジカラーにしたいと希望したのは、ボクね。
編集部:その理由は?
塙:当時カラフルなビードロックホイールは、アメリカにも無かったから、目立つしカッコイイ(笑)。
最近こそカラフルなリングが増えたけど、最初はWORKだね!
編集部:2015年に誕生したBaja Foged Bead lock2015モデルは、2017年に登場するCRAG T-GRABICのベースデザインとなりましたよね。ただし、2016年にBaja Foged Bead lock 2016モデルが登場しましたが、これはどうしてですか?
塙:Baja Foged Bead lock 2015モデルは、トラブルもなく、実は今でも当時のホイールを使い続けているほど、信頼できる。ただしひとつだけ難点があって、それを解消したのがBaja Foged Bead lock 2016モデルだった。
編集部:その難点とは一体?
塙:ボクらはレーシングマシンも基本的に自分達のトレーラーに積んで運ぶんだけど、その時に、タープをホイールに通して固定するんだよ。ところが、当時使っていたタープが、Baja Foged Bead lock 2015モデルだと穴が小さくて通らなくて(笑)。
編集部:性能やデザインではなく、ホイールの穴にタープが通らなかったことが、Baja Foged Bead lock 2016モデルの登場の理由だったのですか!ただこのホイールは、2018年に登場するCRAG T-GRABICⅡの基となったデザインで、結果としてT-GRABICシリーズのバリエーション増加にも繋がっていますね。
塙:市販のT-GRABICシリーズは、Baja Foged Bead lock の鍛造とは異なり鋳造なのですが、ボクはこれを履いて実際にアジアクロスカントリーラリー(AXCR)にも出場しています。鋳造の市販品でも、T-GRABICシリーズは十分に高い剛性と軽さを実現しているんです。
また、AXCRは特にビードロックホイールだとタイヤの組み替えができない状況が多い。結果として、川の中で切った時の1回しかタイヤ交換はしなかった。それほど信頼性が高いんだよね、T-GRABICシリーズは。
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塙選手は、2022年3月9日~13日に行なわれたアメリカンレース『The Mint400』にもBaja Foged Bead lock 2016モデルを履いて出場し、見事にクラス優勝を果たした。まさに『WORK CRAG T-GRABIC』シリーズは、レースで勝つためのホイールであることを実証している。そして塙選手とWORKの挑戦は、これからも続いていくのだろう。
■MADE IN JAPAN品質は職人と最先端技術に支えられる
現在CRAGは、鋳造1ピースと3ピースホイールをラインアップ。国内4拠点の自社工場で徹底した品質管理のもと、匠の技術と自動化を組み合わせ製造されている。
検査
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磨き・塗装・各種加工
クラフトマンシップ
鋳造製法
- WORK(https://www.work-wheels.co.jp)
- CRAG SPECIAL SITE(https://crag.work-wheels.jp)