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世界を代表する本格四駆BIG3対決「ランドクルーザー、ジープ、ディフェンダーのショートモデルが一堂に会す」

世の中は空前のアウトドアブーム。しかもソロキャンプだ、ゆるキャンだ、オーバーランダーだ、グランピングだ…と、楽しみ方も細分化されている。それとともに、そのトランスポーターも注目され、4WD・SUVも販売台数をどんどん伸ばしている状況だ。
そんなふうに4WD・SUVが‟一般的なクルマ”になってくると、中には人と違う、個性的なクルマを求める向きも増えてくる。スタイリッシュで環境に優しく、しかも誰でもスマートに乗ることができる…そんな‟SUV”じゃあツマラない。せっかくアウトドア志向のクルマに乗るのなら、もっと冒険心をくすぐる、ワイルドな本格4WDに乗ってみたい!そんな声もたくさん、聞かれるようになったのだ。実際、ジムニーやランドクルーザー、そしてJeepなどが人気を集めているのも、本誌読者ならご存じのとおりだろう。
そこで今回は、ワイルドな本格オフロード派、3台の4WDを集めてみた。しかも、どのクルマも4ドア・ロング車を選ぶことができるのに、あえての2ドア・ショート車だ!ショートといえばユーティリティはよくないし、室内は狭いし、荷物は乗らないし。しかもロングと比べ維持費的に有利になるわけでもない。唯一、期待できるのは機動力の高さとオフロード性能の有利さだろう。
その意味でも、ある種、マニアック過ぎる3台。世界を代表する最強の四駆の「最強」たる所以に迫ることしよう。

◆LAND ROVER DEFENDER 90

電子デバイスにより高レベルな走破性を披露

新型ランドローバー・ディフェンダー90(ナインティ)の国内デビューは本年4月。ロングの110よりも1年遅れのデビューだ。グレード展開はスタンダード、S、SE、HSEをラインナップする。今回のテスト車は中間グレードのSEとなる。サスはコイルスプリングだが、全グレードでエアサスも選ぶことができる。ディフェンダーは今年、ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー2021を受賞。スタイリング上の特徴として前後対地アングルが大きいことにある。最近のSUVにはない角度を確保し、オフローディングで前後バンパーをヒットする心配は少ないのだ。
 従来型は1948年に誕生した初代の基本コンセプトを踏襲していたが、安全対策が時代に合わなくなり、生産中止に。新型はアクティブ・パッシブとも最先端技術を取り入れている。ブラインドスポットアシスト、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、360度パーキングエイド、ドライバーコンディションモニター、リアトラフィックモニターなどの支援システムを標準装備。テスト車にはデータプラン付きWi-fi接続オンラインパックを装備。専用の通信データプランであり、施設情報やガソリン価格、マップデータの取得をはじめ、音楽、天気、カレンダーなどコネクテッドアプリを使用できる。
 ランドローバー社のパワーユニットはディーゼルとガソリンに加え、BEV(フルバッテリー電気車)、PHEV、MHEVもラインアップ。今春、FCEV(水素燃料電池)を搭載するディフェンダーのプロトタイプを発表予定。
特徴的なのはリアビューといえる。直角に切り落としたラインとスペアタイヤキャリアでデュアビリティを表現。旧型のイメージを踏襲するのは、室内に光を取り入れるルーフリアサイドに設けるアルペンライト。リアサイドウインドーのシグネチャーグラフィックはキットオプションとなる。撮影車両のオプション装備は、ガードを兼ねるサイドステップのみ。
今回のSEグレードはレザーシートを装備する。12ウェイ電動シートであり、状況に合わせベストシートポジションを得ることが可能だ。安全対策も充実しており、パッシブ・アクティブ先進安全装備(ADAS)を標準装備。
パワーユニットは300psを発揮するP300型2.0ℓ直4ターボガソリンエンジンを搭載。P300型はスタートストップ機構、回生エネルギー再利用などを採用。これに8速ATを組み合わせている。言うまでもないが駆動システムはランドローバー伝統のフルタイム4WDだ。オフローディングで必須ともいえるハイローレンジトランスファも継承している。路面状況により駆動力をコントロールするテレインレスポンスを筆頭にスタビリティをコントロールするDSC、トラクションをコントロールETC、斜面効果速度を抑制するHDC、ロールをコントロールするRSCなど電子ディバイスを満載している。
サスは4輪独立コイルスプリングを基本とする。タイヤは18インチから19インチ、20インチ、22インチの4タイプを設定。これに合わせホイールも11タイプ設定する。SEグレードは20インチタイヤを装備し、タイヤはオールテレーンが標準装備となる。

◆TOYOTA LANDCRUISER GRJ71

ザ・クロカン四駆らしい機動力の高さが魅力

1951年に登場した本格四輪駆動車「トヨタジープBJ」、その直系に当たるのがランドクルーザー70系だ。登場は1984年。日本では2003年、販売を打ち切られてしまうが、それでも世界の市場で活躍、’14~’15年、日本で1年あまり再販され、予想以上の販売台数を稼いでしまったのは記憶に新しいところだ。
そんなわけで、現在はまた日本で販売されていない70系だが、逆輸入という方法で手に入れることはできる。今回の70ショート(GRJ71L)は逆輸入車のプロショップ『PUTデポ』が輸入・登録・販売したモデルで、先の再販モデルには設定されなかった2ドア・ショート仕様だ。
ホイールベースは2310㎜、今回の3台でも一番短く、全長もわずか4170㎜だ。これにタイヤは7.50R16相当のサイズを組み合わせているのだから、対地アングルはナンバーワン!
搭載エンジンは4.0ℓV6ガソリンの1GR-FE型。日本でも初期型150プラドやFJクルーザーでおなじみのユニットで、5速MTと組み合わせている。ちなみに現行の70系には4.5ℓV8ディーゼルターボも採用されているが、ショートには設定がない、とのこと。少し残念…。
今回のモデルは中近東仕様で、左ハンドル。『PUTデポ』の金原さんによると、為替レートでも有利、コロナ禍でも輸入台数にさほど影響がない、ということで、お客様には中近東仕様をお勧めしているとのことだ。PUTデポではロングの78系トゥルーピーの人気が高いとのことでナナマルブームが来ているようだ。
マニアにとってはたまらない70ショートモデル。角異型ヘッドランプのマスクは、ちょっと顔が大きい気もするが、優れた対地アングルは、優れたオフロード性能を予感させる。タイヤは225/95あるR16という、ちょっと聞き慣れないサイズだが、7.50R16相当と思えばいいだろう。ホイールはスチール製が標準だが、撮影車両は「JAOS」製に変更されていた。
今回の車両はLXグレードのナローモデル。グレードとしては中間くらいに位置し、現地ディーラーのオプションにより、ダッシュ周りやステアリングなどにウッド調の加飾が配されている。リヤシートは3人掛けのベンチシート形状で、折りたたみは一体式となる。
現在輸出仕様のランクル70に搭載されているのは、4.5ℓV8ディーゼルターボ(1VD-FTV型)と昔ながらの4.2ℓ直6NAディ-ゼル(1HZ型)、4.0ℓV6ガソリン(1GR-FE型)の3種類。但しこの車両の出元の中東地域では1HZの設定は既に無く、特にショートにはV6ガソリンのみとなる。出力は228HP&37kg-mでトランスミッションは5速MTを組み合わせている。四駆システムはパートタイム式で、2WD⇔4WD・Hi⇔4WD・Loをトランスファレバーによって切り替える。今回のモデルは、フロントハブが直結式だったが、グレードによりフリーにできるデュアルモードハブも設定がある。またディ-ゼル車のみ、オプションで前後デフロックも選択可能だ。
サスペンションはフロントに3リンク式のコイルスプリング・リジッド、リヤにリーフスプリング・リジッド式を採用。電子デバイスも充実していて、4Lシフト時に作動するアクティブ・トラクション・コントロールや、ヒルアシストコントロールなども標準装備される。

◆Jeep WRANGLER JL RUBICON

低いギアと良く伸び縮みする足を持った猛者

SUVやピックアップなど、多彩なラインナップを完成させているJeepシリーズだが、そのルーツであるミリタリーJeepの直系とも言えるのが「ラングラー」シリーズだ。現行モデルのJL型は2018年にデビューしている。先代のJK型で登場した4ドア=アンリミテッドはJLでも主役になっているが、もちろん2ドア・ショートモデルもラインナップしている。
今回の撮影車両は、その2ドアモデル。日本では受注生産とされているので、かなりレアな存在となるが、このモデルは北米仕様、しかもオフロードウェポンを充実させた“ルビコン”、さらに日本仕様には設定されていない6速MT+パートタイム4WDのドライブトレーンを採用している、ハイパフォーマンスモデル。エンジンは3.6ℓV6ガソリンだが、そもそもMTを選べるのは、このエンジンのみだ。
まさにリアルJeepを体現するようなモデル。日本ではアンリミテッドの販売台数が9割以上を占めるというラングラーだが、ショートモデルの方が珍しい…というのは、なんとも寂しいことではある。
ちなみに、今回のテスト車両はカスタムも施されている。サスペンションは北米でオプション設定となっている2インチアップキットを装着(純正なのにショックアブソーバーはFOX製!)、タイヤは35インチサイズのマッドテレーンに変更されている(北米仕様ルビコンの標準は33インチ=285/70R17)。もちろん、オフロード性能の大きな向上に供するものだ。
とくに2ドアモデルは、モデルチェンジを重ねても、Jeepの伝統を色濃く受け継ぐシルエット。ただしボディサイズはかなり大柄になった。ホイールベースは2460㎜と、4ドアより550㎜も短い。今回の北米仕様“ルビコン”にはハイラインフェンダー、前後スチールバンパーなど日本仕様にはない装備も。2インチアップのフォルムに。35インチタイヤも組み合わせている。
実用重視のランクル70に比べると、オシャレに彩られた感じのインテリア。インパネにはレッドアルマイトカラー、革巻きステアリング、シフトノブにもレッドの差し色が。シートは撥水タイプのファブリック、乗車定員は4名となる。
日本でも人気の2.0ℓターボのほか、本国にはディーゼルやハイブリッド、V8エンジンなども用意されるラングラーだが、今回の仕様は6速MT。となるとエンジンは必然的に3.6ℓV6が選べるのみ。四駆システムも、日本仕様は前輪をオンデマンドで駆動させるフルタイム4WDモードを持つが、今回の仕様はシンプルなパートタイム式で、2WD、4WD・Hi、4WD・Loのポジションを持つのみ。ただしルビコンは、トランスファLoレンジの変速比が4.00と極端に低いのが特徴で、クローリング性能を強化。駆動系では強化デフ、前後デフロックなども標準装備されている。
サスペンションは前後とも5リンク式のコイルスプリング・リジッドを採用。ルビコンはフロントのスタビライザー解除装置も標準で、オフロードでストロークアップを図ることもできる。今回の車両はMOPAR純正の2インチアップキットに換装、ショックアブソーバーは高圧モノチューブ式のFOX。
●撮影協力
・PUTデポ代表:TAKAO KANEHARA
・モータージャーナリスト:TOSHIHARU URABE
・四駆ライター:YOSHINOBU KOHSAKA