それぞれが持つ高い技術力は世界中に大きな影響を与えた
一方、BMWにおける歴史的な名車と言えば2002ターボ、通称「マルニターボ」だ。注目すべきは、量産車として初のターボエンジンを搭載したことだが、単純にターボを積んだだけではないところに、BMWの技術力の高さがうかがえる。
60年代のグループ5のツーリングカーレースでは、2000tikというモデルに直列4気筒+KKK製のターボチャージャーを積んでレースに挑み、見事タイトルを獲得。マルニターボの市販化に当たって改良はされているものの、基本的にはそのエンジンが搭載されているのだ。
さらにエンジン以外の部分にも数多くの変更が加えられている。ベースである2002tiiよりもラジエターの容量を増やし、オイルクーラーも標準で装備。メカニカルインジェクションはグーゲルフィッシャー製で、これはエンジンの動力によってポンプを作動させ、各気筒の吸気ポートに噴射させるというものだ。燃料タンクの容量が増やされたことで、トランクルームはベースである2002tiiよりも若干狭くなっている。足回りはフロントがストラット、リアがセミトレーリングアーム。ブレーキはフロントがベンチレーテッドとなり、リアはドラム式のままだったが、ベースモデルに比べてドラム径を拡大し強化されている。LSDが装備されたことも特長的なポイントだと言えるだろう。
高性能の証である力強いオーバーフェンダーや、逆文字の「2002 turbo」というデカールが張られたフロントスポイラーなど過激なルックスも注目を集めたが、マルニターボが登場した73年はオイルショックが起きた年。そのため、わずか1年でその生涯を終えてしまったのだ。
とはいえ、その性能はレーシングスペック。最高速度は210㎞/hで一躍脚光を浴びた。現在のターボエンジンは効率化を狙ったものが多いが、当時「ターボ=速いクルマ」というイメージを作り上げたのは、このマルニターボだったのである。
エンジンにこだわり抜いたBMWの高い技術力、ロードカーとは思えないルックスも含めて、僕らの心をワシ掴みにしたBMWの歴史的な名車だと言える。
BMW 2002 Turbo
レースで培った技術をフィードバック
量産車として初のターボエンジン搭載
72年にミッドシップ&ガルウイングドアを持つコンセプトモデル「BMWターボ」を発表。その翌年に量産車初のターボモデルである2002ターボを世に送り出す。大きく張り出したオーバーフェンダーや前のクルマを威嚇するがごとくの逆文字「turbo」デカールなど、ルックス的にも注目を集めた歴史的名車である。生産期間が短かったこともあり、中古車としては希少な存在だ。
まだまだある! 両ブランドの歴史を彩った名車Selection
Mercedes-Benz 450SEL 6.9 W116
未だ超えられることがないメルセデス史上最大の排気量!
初代Sクラスのボディに、なんと6.9ℓのV8エンジンを積む450SEL6.9。今でこそ大排気量エンジンは珍しくないが、当時としては大きな話題になった。それでいて、実用車としての性能をきちんと両立しているのがメルセデスらしいところだ。燃料制御システムはKジェトロニックで、リアには油圧式のレベライザーが備わっている。
BMW 3.0CSL
シルキーシックスの原点ともいうべき名機を積みレースで圧勝!
BMWの代名詞とも言えるストレートシックスを搭載したクーペモデルが3.0CSL。レースで勝つためにボンネット、ドア、トランクをアルミ製にして軽量化を実施。これまでレースを走っていた2800CSに代わってETCの舞台に持ち込まれると、73年にタイトルを獲得、その後79年まで主役として活躍を続けた名車である。