旅の足は新型70系GDJ76・4ドアワゴンにした。2023年11月に国内再々発売となりあっという間に2年間分の予約が埋まった人気モデルである。
オーストラリア仕様と国内仕様はリアリーフの構成が国内のテーパーリーフ2枚に対してリーフ4枚+ヘルパー1枚と異なるのみで、後は大きな違いはない。

ウインドーラの手前でクーパークリークを橋で渡る。この川はチャンネルカントリーを代表する河川の一つだ。12月から3月にかけての雨が洪水となり、南西に流れエアー湖まで到達すれば1300㎞を超す大河となる。ウインドーラから北西に250㎞、もう一つの大きな川であるダイアマンティナリバーを渡る。周囲はまっ平らな洪水平原である。

オーストラリア・チャンネルカントリー。クイーンズランド州南西部に降った雨は時に洪水を引き起こす。水は川となり、内陸の大湖エアー湖に向けて流れはじめる。無数の水路(チャンネル)を作って流れることから一帯はそう呼ばれる。今回はそこを新型70系4ドアワゴンを駆って5,500㎞の旅に出た。

地元の電力会社が使うVDJ79シングルキャブユート。1GD型エンジン搭載の最新モデルはまだほとんど見かけることはなかった。

ブロークンヒルからは完全舗装のシルバーシティハイウエイで北上する。緩やかな起伏が続きクルーズコントロールが本当に役に立つ。

満月から2日経った夜。月が昇ってくる前までは天の川がきれいに見えた。その後は月の明かりで満天の星は楽しめなくなる。

ノッカンドラホテルではウイルソンリバーの川岸でキャンプをした。ビラボンの向こう岸、ユーカリの木越しに朝日がテントを照らす。

オーストラリア仕様はリアリーフの構成が異なる以外はエンジンもミッションの設定も国内仕様と基本的に変わらない。

オーストラリアの排気ガス規制はユーロ5。今年中には規制強化でアドブルーが採用される予定だが、現状ではその供給口はない。

現地の車両カテゴリーの関係で大型のサイドマーカーランプが国内仕様よりも下に装着される。スノーケルは標準装備である。

ボディ後端のリアランプは国内仕様とは違い点灯する。バックアップランプもバンパー内ではなくここにある。明らかにしっくりくる。

朝一番、家畜を運ぶ3両編成のロードトレインに道を譲る。最大長50メートルを超す、アウトバックの貨物輸送の主役である。

牧場の中を一般道が走る。境にフェンスが設置されてることもある。閉まっていたら開けて進む。そのあと必ず閉めておくのがルール。

ウインドーラの町の手前でクーパークリークを渡る。渇水期で流れはなく、ここでは長さ20㎞を超すビラボンを形づくっている。

チャンネルカントリーの中心地であるウインドーラにあるウエスタンスターホテル/モーテル。週末で地元の人が集まり賑わっていた。

ウインドーラアウトバックストアは町一軒のジェネラルストア。旅行者が店の前にクルマを止めて朝8時からの給油を待つ。

ダイアマンティナリバーも北からの流れがここで終わっている。道路はここで川を渡る。橋はなく洪水時には長期間通行不能となる。
グラベル、砂、ダート…、「D」レンジに任せておけば楽チン。

チャンネルカントリーのまさに中央にあるのが愛知県より少し狭い面積をもつダイアマンティナ国立公園。牧場だったところを州が買い上げ1992年に国立公園とした。ビラボン(水の溜まった水路)には多くの希少種や絶滅危惧種の鳥が生息する。
6日目、クイーンズランド州の南西端バーズビルの町に到着した。州都ブリスベンまで1600㎞、アウトバックの中のアウトバックだ。かつては、州をまたいで移動する家畜の群れに対する通行料を徴収する州境の税関の町として栄えた。その後、連邦制となり、町は一時衰退したが、近年はアウトバックを楽しむ観光客の目的地としても賑わう「ビッグレッド」で砂丘登りに挑戦した。いつもなら4Lの2速全開で駆け上がるが、今回は初体験のATだ。試行錯誤のうえ「4LのDレンジ」が正解とわかった。すべてクルマ任せでいいのである。

ビッグレッドを駆け上がる。路面は乾いた深い砂で足で登るのも難しいほど。タイヤ空気圧を下げ、4LのDレンジでただ踏み込むのみ。

インナミンカの南では石油やガスの採掘が盛んだ。すれ違う79ユートは赤い小旗を掲げている。大型車からの発見を容易にするためだ。

ダイアマンティナ国立公園のハンターズゴージに集うオーストラリアンペリカン。ここは貴重な湿地帯で多くの鳥の繁殖を支えている。

ダイアマンティナレイクス牧場時代のヤード(牛の積み出し設備)が残っていた。ユーカリの堅い材木は150年間の風化に耐えていた。

スプリングベール牧場の中を南へ進む。見渡す限り樹木など一切生えていない大平原の中を一直線のダート路が横切る。

バーズビルに到着直後、テントの設営をあきらめざるを得ない砂嵐に見舞われたが、その後はきれいな夕日で一日が終わった。

シンプソン沙漠の東端にある高さ40メートルの大砂丘。砂丘に向かって右のルートが一番傾斜が緩く、エスケープルートもある。

1884年に建設されたバーズビルホテル。火事になったこともあるが石積みは当時のまま。ここに来ることが旅の目的にもなっている。

ホーストレーラーを引くコーディロダウン牧場の79シングルユート。ブルバーにドライビングライト2個というお決まりの装備だった。

インナミンカへ向かう途中ランドクルーザーのコンボイと出合った。300系GRスポーツ2台、100系、150プラドという陣容だった。

ムーンバという所で1960年代と70年代に石油とガスが発見された。ここは油井だがこの日はポンプは動いていなかった。

チャンネルカントリーをぐるっと一周するキャンプ旅行をしてきた。ブロークンヒルを出発して9日目、ティブバラに到着した。

インナミンカトレーディングポストでは給油や買い出しのほか、周辺の道路状況を知ることもできる、旅人にとって力強い存在だ。

旅の最後の夜はクーパークリークの川岸でキャンプをした。渇水期でも大きなビラボンが残りユーカリの林を形成している。

旧道のオールドストルツェレキトラックを走る。現在は四駆での観光客がもっぱら利用するだけだ。道はだんだんと状態が悪くなる。今回は5500㎞を走って平均燃費は9㎞/ℓほど。旅の間注目された新型70系に対する人々の話題の中心は燃費だった。先代の1VDよりも勝るトルクを持つエンジンと6ATの組み合わせはギア比の設定もよく、70系ならではの剛性感と相まって快適なドライブができた。現地ではこのエンジンに5MTの設定も始まったが、働くクルマとしてならばAT仕様が好まれるのではないかと感じた。
オーストラリアでこれから酷使され1GD+6ATがどのように評価されていくのか楽しみである。