ランドクルーザー250(以下250)のポジションが理解しづらい、ランクルファンは多いかもしれない。実はボクもそのひとりで、プラドの後継車種ではないといわれても、そこにプラドを重ね、ついつい比較をしてしまう。
先日もお伝えしたとおり、250の「オフロード」ポテンシャルはすこぶる高い。フラッグシップとなるランドクルーザー300(以下300)と同じGA-Fプラットフォームを採用しているものの、300のような意図的ともいえるアッパークラス感を与えておらず、むしろ、250は素性をそのままに表現しており、個人的にはそこに好印象を覚えた。
今回は、オンロードのみのテストドライブの機会を得たが、素性の良さはオフロード走行で感じた時のままであり、素直さはそのままだった。試乗したグレードはフラッグシップとなるZX、搭載されるパワーユニットは2.8ℓディーゼルターボで、そこに8速ATを組み合わせている。走行性能面では、フロントにSDMと呼ばれるスタビライザーのオンオフを切り替えられる機構、電動リヤデフロック、マルチテレインセレクトなどを特別に装備しているが、いずれもオフロード走破性を引き上げるものばかり。ただ、オフロードを推奨しておきながら標準タイヤは20インチ。何か違うようなぁと思いつつカタログを眺めると、レスオプションとして265/65R18サイズのタイヤ(もちろんアルミホイール付き)を設定。まさにオフロード走破性を誇れるモデルらしさがあった。
テストドライブは、まずは編集長にステアリングを握ってもらってリアシートに座ってみてスタートした。シートサイズはゆったりとつくられており、ショルダーまでしっかりとサポートしてくれる形状、足下スペース、そしてひざ裏までカバーしてくれるクッション長など、まさにボディサイズを存分にいかしており、快適だ。センター部はプロペラシャフトが通っているため、そのフロアは若干盛り上がっており、快適性は両端シートには敵わないが、それでもタイト感や座りにくさはない。サードシートは、2名分の独立シートを備えているが思っていたほどのタイト感はなく、特に足下スペースについては十分だと感じた。ただし、膝を持ち上げるようなポジションで座ることになるため、ロングドライブでは少々辛さが出てるのもまた事実。
フロントシートは、まさしくボディサイズ、つまりは、キャビンサイズを存分にいかした広さによって作り上げられている。それはゆとりとも言えるものだが、300のような広すぎるといった感じではなく、ちょうどいい居心地のよさが広がっていた。シート形状も、良好な張り出し感がデザインされており、ホールド感と快適性をバランス。シートポジションも実に取りやすく、さらにはドアパネルのアッパーショルダー高が抑えられていることもあって、リラックス感を愉しませてくれる。
実際に自分でドライブを始めてみると、オンロードにおけるハンドリングは、日常性をしっかりと作り込んでいてすごくいい、と感じた。ランドクルーザー初となる電動パワーステアリングは、ステアリングをスッと切るとわずかにテンポ遅れはあるもののスッとノーズの向きを変えてくれる。それは、クイックという嫌みを感じさせぬように仕立てられたもので違和感を覚えさせない仕上がりだ。
乗り心地は、路面をきれいにトレースしてくれるため快適さがあり、ドタバタとした動きを強く感じさせない躾けに驚いてしまったほど。いくらタイヤサイズが20から18インチへダウンしたとはいえ、ヘビーデューティヨンクゆえにバネ下重量があることには変わりない。しかし、サスペンションにはそれを抑え込めるポテンシャルが与えられており、とにかくしなやかな動きを提供。リジッドサスを備えたヘビーデューティモデルも、とうとうここまで来ましたか…と唸ってしまったほどだ。
エンジンは、プラドと同じく2.8ℓディーゼルユニットをキャリーオーバーしているが、そのフィーリングに対しては、別ユニットのような進化を感じた。もちろん、モデルそのものをアッパークラスへと移行させたため、250にはラグジュアリーさを感じるところもある。ちなみに車両重量はプラドと比較して200㎏少々増しているが、それを感じさせず、それどころか、クロスレシオを採用した8速ATとの組み合わせもあって、まさにジェントルで、品のある豪快さにあふれている。
実は、今回の撮影の後、少し足を伸ばしてロングドライブをしてみた。そこで感じたのは、高速域での安定性がすこぶる高いし、エンジンフィールも相まって不足を感じさせず、まさに安心感にあふれていたことだ。
ワインディングへ足を踏み入れてしっかり走ってみると、撮影では感じなかったとんでもなくハイレベルのアジリティ、フルタイムヨンクならではのスタビリティのバランスに「やられた感」を覚えた。コーナーではもちろんロールを許すが、その量とフィーリングに「余分」なところはなく、またリアタイヤの動きもハンドリングにしっかりと同調してくれるため、ドライバーは不安にならないのだ(もちろん同乗者にも感じさせない)。さらにハンドリングには愉しさがあふれており、このままずっとワインディングを走っていたいと思ったほど。
タイヤを含めたシャシーのバランスもすこぶるよくて、この部分においては、むしろ兄貴分である300を超えているかも、とも感じた。
当初は250の比較対象として、プラドがいたことは確かなのかもしれない。しかし実際にトヨタがつくり上げてきたのは、次世代のプラドではなく、まさに〝次世代のランドクルーザー像〟。そう、これまでに体感したことのなかった〝新しいランクル〟が、そこにはあったのだ。
2.8L 1GD-FTV CLEAN-DIESEL TURBO
テストドライブしたモデルのパワーユニットは、プラドからキャリーオーバーされた2.8ℓディーゼルターボエンジン。その出力は、最高出力150kW(204PS)/3000〜3400rpm、最大トルク500Nm(51kg・m)/1600〜2800rpmとなっており、数値上は20年に行なった改良のまま。ただし、そのフィーリングは別物だ。トルク感はもちろん、回転上昇とともに立ち上がっていくパワーフィールは気持ちいい。一方の2.7ℓガソリンエンジンは、ディーゼルと比較するとフロアからの振動や音がかなり抑えられていたが、ディーゼルの仕上がりと比較すると、ディーゼルに分があると感じる。
エンジン特性に合わせて最適化した8ATを採用。多板ロックアップクラッチ付トルクコンバータとクロスレシオの8速ギヤトレーンで低回転の力強いトルクを生かしたスムーズな発進と、高回転のパワーを生かした伸びやかな加速感を味わえる。
今回のテストシーンはオンロードに限ったが、オフロードパフォーマンスがすこぶる高いこともかつてお伝えしたとおり。ZXグレードは基本性能の高さに加え、まさに無敵のマルチテレインセレクト、強靭なリアデフロックまで備えていて心強い。ただし、フルオートではなく、タイヤのトラクションを感じつつ、ドライバーはアクセルペダルの踏み込み量で加勢するという、対話性も必要。そう、ランクルの走破性たる愉しさは、そのままに残されている。オフ走行の使用をメインに考えるならば、レスオプションで用意された18インチタイヤがオススメだ。
300と同じGA-Fプラットフォームがベースだが、フロントに採用したSDMなどにより、ショート化されている。いずれにしても、走りから快適性に至るまで大きくクラスアップを果たしており、特にハンドリングは300を凌駕しているところがみられるほど。
サスペンション形式こそ300と同じだが、走破性をさらに極めたマルチテレインセレクト(5モード)、リアデフロックなど、オフロード走破性を極めるためのギミックの採用もポイントだ。
インテリアはシンプルなレイアウトに機能性をつくり込んでいる。居住性は、キャビンサイズをいかして、適度な広々感を手に入れているが、300のような広すぎる感じもないところがいい。センタークラスター部のスイッチには、トグル式とプッシュ式を並べるといった、こだわりを表現。
シートも、やはりキャビンスペースのゆとりをダイレクトに表現しており、タイト感はない。