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【YOKOHAMA】GEOLANDAR装着車が大会史上初の同チームによるワンツー・フィニッシュ!2年連続総合優勝の達成と1位~3位までを独占する快挙を果たす!

有名なビーチリゾートであるタイのパタヤのウォーキングストリートを舞台に、各ラリーカーが1台ずつゲートをくぐるセレモニアルスタートが行なわれ、雨期真っ只中に開催される真夏の祭典が完全版で戻って来た!これこそが日本では見られないスケールのクロスカントリー・ラリーレイドとして、日本のプライベーターにも人気の『アジアクロスカントリーラリー(以下、AXCR)』なのだ。ちなみに同ラリーは、F1やWRC、ダカールラリーといった名立たるレースと同様に 国際自動車連盟(FIA) 公認のレース。そして『AXCR2023』は8月13日から19日の期間でタイおよびラオスで開催された。
 さて、ここからは一旦、実際にAXCR2023に青木拓磨選手らとともに同じTOYOTA GAZOO RACING INDONESSIAチームで参戦したオフロードレーサー・塙 郁夫選手の参戦レポートをお届けしよう。
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 昨年がAXCRデビュー戦にもかかわらず、チーム三菱ラリーアートに総合優勝をさらわれたカタチのTOYOTA陣営。ゆえに特に本家「TGR THAILAND」は、最新のハイラックスを2台投入する必勝体制で臨んだ。そして我々のチーム「TGR INDONESSIA」も、1号車に青木琢磨、2号車は僕(塙)という昨年と同じ2台に加え、さらにT2仕様の新型フォーチュナーを投入。ドライバーはインドネシアの国内チャンピオン・TB(トゥバグス・アディ・モレンシャディ選手)を起用して3台体制という最強の布陣で総合優勝を狙った。一方の三菱は3台の新型トライトンエントリー。事前テストでも徹底的に走り込んで、やはり盤石の体制で連覇を目指す。
 そんな緊張感に溢れる中、ついにLEG1がスタート!ところがコース設定に致命的な問題があったことで、いきなり上位陣が右往左往する大混乱となる。さらに重大な事故も発生し、大荒れの幕開けとなった。

 実はTGR INDONESSIAチームも、LEG1終了時点ですでに大騒ぎだった。1号車・青木号がスタート早々に大きなギャップに捕まって、フロント駆動系を破損。大きく順位を落としてしまったのだ。さらに2号車・塙号も燃料タンクの詰まりから走行不能となって脱落…。唯一の救いはATF温度に不安はあったものの、最新マシンの3号車は順調にゴールしてくれたことだ。
 というわけで、当然初日のピットも大騒ぎだ。1号車の駆動系修理、2号車の燃料タンク清掃、3号車へのオイルクーラー追加などの作業を徹夜でこなし、無事に3台揃ってLEG2をスタートできた。僕の2号車は優勝圏内から大きく外れたが、メカニック達の頑張りに答えるためにもフルアタック!最後尾から全マシンをパスしてトップでゴール。3号車も順調に5位でフィニッシュ、そして部品が間に合わないため、切り替えて2WDで淡々と走った1号車に朗報が!昨日のLEG1のコースに問題があったとして前半部がキャンセルとなった。結果、1号車のペナルティは削除されて、なんと28位から3位に大きくジャンプアップ。3号車も5位となって、チームに望みが出てきた。
 LEG3は上位入賞が望める2台のためにも、僕はライバルをかく乱しようと走る。この日も35番目のスタートから全開走行で、トップゴール。そして驚くことに同LEGで1号車は2位、3号車が3位に続き、上位を独占する結果となった。さらに総合結果も1号車が1位、3号車が2位と、いよいよ勝利の陣形が確立された。
 LEG4からはラオスに入り、いよいよ最終決戦となる。TGR THAILANDも三菱も、エース車がトップ5内でシノギを削っているために一瞬のミスで順位はひっくり返る状況だ。
 僕は2台のチームメイトの火の粉を掃うためと己のプライドをかけて、残るSSも全てトップを獲ってやろうとスタート!!しかしわずか20㎞地点でエンジンがガラガラと音を立てストップ。僕のアジアXCラリー2023はここで終わってしまった…。
 一方でチームメイトの1号車と3号車は共に残るSSを無理することなく、マシンをいたわりながら上位をしっかりキープ。そのまま上位を堅持してゴールすることができた。 ワークス勢を抑えた総合ワンツー・フィニッシュとは素晴らしい!!1号車はLEG5でもあわやリタイヤかというトラブルもあったが、間一髪でセーフ。チーム一丸となって勝ち取った勝利だが、今回の結果は、青木選手がAXCRに17年/14回に渡って参戦し続けた諦めないチャレンジ精神に〝神のご加護〟があったと感じられるラリーだったのだ。

#105 TAKUMA AOKI

TOYOTA GAZOO RACING INDONESIAの1号車ドライバー・青木拓磨選手は、アジアクロスカントリーラリー2022に続き、2023年も塙選手らとチームを組んでAXCRに参戦。青木選手は、かつて世界的に有名なGPライダーだったが、1998年練習中の事故で下半身付随となり、あらゆる競技から遠ざかっていた。しかし2007年に四輪への転向とAXCRへの参戦を発表。以来17年間・14回に渡ってAXCRに参戦し続けてきた車椅子ドライバーだ。今大会では3日目に総合首位に立つと、ラオスで行なわれた極悪路の後半戦も上位のまま危なげなく走行。11時間46分22秒のタイムで総合優勝を飾った。
14回目の参戦で悲願の初優勝を飾った青木拓磨選手。3台体制で参戦しての見事な初勝利だ!
「アジアンラリーで今回初めて総合優勝が取れました。参戦してから17年(14回目)が経ちましたが、この〝総合優勝〟に辿りつくまでがどれだけ長かったか…。本当に応援ありがとうございました!このラリーに懸ける想いとしては、今回3台体制となったこともあって、何が何でも勝たなきゃいけないっていう使命感もありました。こうやって皆さんの前でしっかりと成績が残せて、またジオランダーと共にやってきて本当に良かったなと思っています。今後も頑張っていきます」と喜びと感謝を報告している。
♯105 青木拓磨選手のAXCR2023参戦マシンは、トヨタが新興国市場向けに投入している2.8ℓ 1GD-FTVディーゼルエンジンを搭載したSUV・フォーチュナー(日本未発売)。青木選手が駆る1号車、サポートに回る塙選手の2号車ともに昨年参戦した仕様で、基本的な両車のモディファイポイントは同じ。ただし、最初からアジアクロスカントリーラリーをターゲットとしてつくられている1号車に対して、2号車はショートコースのタイムアタックを念頭に入れた仕様であるとか。
青木拓磨選手の不屈の闘志を支えた陰の功労者が、メカニックたち。とくにCTS(中央自動車大学校)の学生たちは日本でマシンの整備を行ない、さらに現地にも精鋭メンバーが同行して、サポートメカニックとして参戦。この経験を生かして活躍して欲しい。

#103 IKUO HANAWA

チーム「TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA」の作戦としては、2号車塙がルートを確認しつつ切り拓き、3号車のTBが1号車青木の後ろについてサポートする3台体制の陣形。チームを率いるExecutive advisor TOYOTA GAZOO Racing indonesia 小原敏夫氏との“青木琢磨を勝たせる!”という、公約を果たすことができた。

#121 Tubagus Moerinsyahdi

TGR INDONESIAの3号車はホモロゲーションの無い『FIA-T2仕様(=市販車無改造クラス)』として製作されたマシンだったが、主催者・技術員との解釈の違いによって(タイ独自の非公開ルール)、1・2号車と同じT1D(市販車改造ディーゼルクラス)にやむなく格上げしての出走となった。とはいえ、市販化を想定した3号車のSPORTSパッケージはテスト時から1・2号車に劣らぬ安定した速さを発揮。結果2位に食い込んで、ワークス勢を抑えて総合ワンツーフィニッシュを果たした。チームのTOYOTA GAZOO RACINGとしては、むしろ大きな収穫があったことだろう。
AXCRでいすゞのD-MAXに挑み、トヨタ・ハイラックス レボの存在感をみせてきた「TOYOTA GAZOO RACING THAILAND」。参戦以来2位に甘んじてきたチームも初優勝を狙って、2台のハイラックス・レボを投入。今回の最高位は総合6位と奮わず…。

Team MITSUBISHI RALLIART

ラオスの世界遺産であるプラサート・ワット・プー近郊のゴールを目指すAXCR2023で注目されたのは、やはり昨年初出場にして初優勝を果たした「チーム三菱ラリーアート」が、今年も再び参戦したこと。しかもマシンは発売されたばかりの新型ピックアップトラックのトライトン。T1D(=市販車改造ディーゼル)クラスの3台体制で連覇を狙った。
「2位はいらない。例え2台が潰れたとしても頂点に立つ1台は、我々のマシンだ。そういう気持ちでAXCRに挑む!」とスタート前に語ったのは同チームの増岡浩 総監督だ。チーム体制は、昨年の覇者チャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォンのタイ人コンビ、昨年5位入賞のリファット・サンガー(インドネシア)/シューポン・シャイワン(タイ)、そしてWRCやFIAアジア・パシフィックラリー選手権や国内のダートトライアルで活躍してきた日本のベテランドライバー・田口勝彦がそこに加わったのだ。
 田口選手はラリーレイド自体は今回が初参戦ながら、かつてダカールラリーで頂点を極めた増岡総監督が自らの後継者として熱望していた選手。ところが三菱自動車のモータースポーツ撤退により、田口選手の参戦は実現には至らなかった。そう、一度途切れた三菱のモータースポーツ活動の復活を象徴するような話だ。コ・ドライバーの保井隆宏選手は、全日本ラリー選手権や欧州での活動経験のほか、AXCR参戦経験、何より田口選手とは旧知の間柄だ。
 市販車改造クラス(T1)での参戦ではあるが、そのマシンはノーマルの素性を生かしたものでいい意味で派手さはない。しかし「十分なテストを重ねてきて仕上がりに不安はない」と語っていた増岡総監督の言葉通り、今年のAXCRでも強さを発揮した。
 ただし新型トライトンの最上位はチャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン組の3位に終わった。あくまで頂点にこだわり、自信をもって今大会に臨んだ増岡総監督にとっては悔しい結果となったのは間違いない…。しかしながら6日間に渡るタイ→ラオスの過酷な走行において、全てが新設計のマシンが3台揃って完走できたことで、新型トライトンのポテンシャルと完成度の高さを証明することとなっただろう。
新型ピックアップトラック『トライトン』は、新開発のクリーンディーゼルエンジンのほか、ラダーフレームやシャシーも新規開発されたフルモデルチェンジで大幅進化。これをベース車として、AXCRの車両規定に沿ってモディファイされたのが、チーム三菱ラリーアートラリーマシンなのだ。
AXCR2023の前半戦のタイエリアでは雨期とは思えない乾いた路面が中心となった。ドライコンディションで高速で走ることができる半面、路面の凹凸がより強く襲ってくるため、選手やサスペンションにとっては非常に厳しい状況だ。一方で後半戦のラオスエリアでは、一気に“ウェット”の戦いに。そこかしこにマッドセクションやウォーターベッドがある超難関極悪路、そして増水した川などが全選手を苦しめた。
昨年同様「チーム三菱ラリーアート」というチーム名で、3台の新型トライトンでAXCR2023にエントリーした三菱自動車。かつてパジェロやランサーで世界を席巻したラリーアートの名を再び冠したモータースポーツの世界での再始動だ。なお本チームに技術支援協力として帯同した三菱自動車のスタッフの大半が、実は量産車の開発陣(三菱車の開発を担う岡崎の技術センターからやってきた)。過酷なモータースポーツで得た知見を量産車の開発に生かす、というかつての三菱スピリットを本気で再構築しようとしている総監督・増岡氏の気持ちは現地でもヒシヒシと伝わってきた。
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