【ランドクルーザー300】GR SPORTオフロード試乗!
ついに日本デビュー、その全貌が明らかになったランドクルーザーの新しいフラッグシップモデル「300」シリーズ。とりわけ注目したいのが、オフロードパフォーマンスを強化したグレード「GR SPORT(以下GR-S)」の設定だ。
その特徴は、まずフロントマスクをはじめとしたアグレッシブな外観。先頭前後バンパーは対地アングルも切り詰められ、機動力の高さを連想させる。
そして中身のほうも、先進的な機能が充実だ。電子制御で前後のスタビライザー効果を変化させる「E‐KDSS」は、GR-Sにのみ標準装備。路面状況や運転操作に応じてショックアブソーバーの減衰力を4輪それぞれで制御する「AVS」は、ZXとGR-Sに標準搭載されるが、その機能はE‐KDSSと組み合わされ、オンロード&オフロードでより高次元な操縦安定性と乗り心地が提供されることになる。
またランクル伝統の前後デフロックも、GR-Sのみ標準だ。ちなみにフロント独立サスになった100系以降、フロントのデフロックは技術的な難しさか、設定されていなかったが、今回はそれをクリア。しかも前のみ、後のみ、前後同時と、3つのパターンで作動する。本格オフローダーにとっては、まさに待望のウェポンだ。
GR-Sのパワーユニットは、ディーゼル、ガソリンとも用意。ディーゼルは5人乗り、ガソリンは7人乗りとなる。なおガソリン車のサードシートは電動で格納・復帰が行なえる。
オフロードパフォーマンスを強化したGRスポーツ
専用前後バンパーを採用するなど、悪路走行時の破損のしにくさを考えたエクステリアデザイン。対地アングルはフロント32度、リヤ26度、ランプブレークオーバー25度と、シリーズ随一を誇る。
ブラックアウトされた車名&TOYOTAエンブレム、バックドア下端デカールなど、リヤビューもGR‐Sの存在感をアピール。専用リヤマッドガードが走りを予感させる。
鋭い眼光を発するLEDデイライトなど、他グレードとは一線を画すアグレッシブなマスク。大型のTOYOTAエンブレム、GRエンブレムがオフローダーイメージを増幅。
装着タイヤは265/65R18のオールテレーン、ただしキャラクターはオンロード寄り。ホイールは7.5×18(+60)で、PCD139.7/6穴仕様に!意匠はマットグレーで走りのイメージ。
運転状況も即座に、的確に把握できる操作系
ボディサイズはオフロード車のもっとも機動力を発揮できるサイズ、ということで、200系から変更されることはなかったが、インテリアはより広くなった印象だ。シートの構造、レイアウトを見直すことにより、乗員の膝まわりにゆとりを確保するなど、居住性を大きく向上。
GR‐Sはディーゼル仕様が5人乗り、ガソリン仕様が3列シート・7人乗りとなるが、とくに3列目は床下収納かつ電動で格納/復帰が可能で、使い勝手も上々。スペース自体も2列目使用時にゴルフバック5つを積む大容量を確保している。
コクピットは水平基調で、車両の状態をドライバーが直感的に判断できる構造、2眼オプティトロンメーター+7インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ、カラーヘッドアップディスプレイなど、運転状況も即座に、的確に把握できる操作系だ。
さらにGR‐Sは専用本革巻きや専用切削カーボン調の加飾があちらこちらに施されている。シートも本革仕様の専用のもの。カラーはブラックが標準だが、オーダーによってブラック&ダークレッドも選択できる。
またAV機器については9インチディスプレイのディスプレイオーディオが標準だが、撮影車には12.3インチディスプレイの「T‐コネクトナビシステム」が。GR-S装着時は専用オープニング画面も展開。オプション価格は45万円以上だが、「マルチテレインモニター」との連動にも、このT‐コネクトが必要になる。
オフロードでも車両の状態が把握しやすい水平基調のインパネまわり。スイッチ類も直感的に操作でき、メーターパネルセンターのディスプレイで車両状況が判断できる。12.3インチの大型ディスプレイはオプションとなる「T-Connect」のものだが、マルチテレインモニター、アンダーフロアビューを稼働させるには、このT-Connectが必要になる。
インテリアは従来の200系より、さらにに機能性とプレミアム感、そして快適性を向上。GR-Sのインテリアカラーは基本的にブラック基調だが、今回の撮影車のようにブラック&ダークレッドの2トーンを選択することもできる。ディーゼルは2人乗り、ガソリンは7人乗りだ。
シートは本革表皮、フロント8ウェイパワー調整機能や快適温熱&ベンチレーション機能も。カラーはブラック&ダークレッドも選べる。GR‐Sディーゼルはサードシートのない5人乗り。
E-KDSSを組み合わせることで、より高次元のオンロード&オフロードでのパフォーマンスが実現
伝統のラダーフレームを踏襲したプラットフォームだが、プリウスなどに採用されるTNGA技術や最新の溶接技術などを活用し、高剛性(従来比20%)と軽量化を両立。ホイールベースは2850㎜と従来同様だが、パワートレーンの搭載位置も車両後方に70㎜、下方に28㎜移動。これらにより車両として約200kgの軽量化と、低重心化、前後重量配分の改善を実現。ドライバビリティと環境性能の向上にも寄与することになった。
200シリーズ以来のハイテクデバイス「マルチテレインセレクト」はL4時だけでなく、H4時でも使用可能に。オート、サンド、マッドのほか、H4ではダート、ディープスノーの、計5モードが使用できる。もちろんL4で使える「クロールコントロール」も1~5km/h、5段階の速度に設定可能、「ターンアシスト」機能も併用される。
ランクルの伝統ともいうべきデフロックは今回、GR-S以外にはリヤ用をオプションで設定。一方GR-Sには、なんと前後デフロックが標準装備となった。フロント独立サスになったランクルはデフケースそのものが小さく、従来、フロントデフロックは採用されていなかったから、これは大きなトピックス。しかもフロントのみ、リヤのみ、前後同時と、独立して作動させることもできる!
GR-Sには300シリーズが誇る2種のエンジン、3.5ℓV6ガソリンツインターボと、3.3ℓV6ディーゼルツインターボが用意された。どちらもトランスミッションは10速AT、トランスファはフルタイム4WD式で、通常時、前40:後60の駆動配分から、状況によって駆動配分をトルセンLSDによって制御する。
プラットフォーム刷新に伴い、フロントのダブルウィッシュボーン・コイルサスペンションはハイマウント化が可能になり、あの80シリーズより大きなストローク量を実現。リヤの5リンク・コイル・リジッドはショックアブソーバーの取付位置を最適化し、乗り心地と操縦性アップをさらに向上させた。さらにGR-S独自のE-KDSSは市街地やオフロードなど、刻々と変わる路面状況で細かくスタビライザー効果を変化させる。
地球上を走破する圧倒的なオフロード性能
今回は、いち早くランドクルーザー300シリーズを導入した「さなげアドベンチャーフィールド」のご協力を得て、GR‐S・ディーゼル搭載車の試乗が実現した。走行はオフロードコース内に限られたが、その実力を探るのに十分なシチュエーションだった。
まず外周路をH4モードで30㎞/hのハイスピード(凹凸路ではかなり速い!)で走ってみる。AVSとE‐KDSSの効果だろうか?フレーム剛性の強化ともあいまって、深い凹凸のある路面も、まったくイヤな突き上げも感じさせず、スタビリティのある乗り心地と、リニアなハンドリング、そして強いトラクションの強さを感じさせながら進んでいく。これは従来の200シリーズでさえ感じなかった乗り味。セッティングにはあの、ダカールラリーでのデータがフィードバックされたというが、上下動の少ない安定感のある走りは、十分、それを裏付けるものだ。
一方、モーグル地形などでは、意外なほどボディヒットしにくい、優れた対地アングルが印象的だ。前後サスペンションのストローク量は80シリーズを上まわるとのことだが、フロントが独立式だけにの接地性の強さでは、やや80に分があるように思えたものの、電子デバイスの働きで、走破性は明らかに秀でている。またマルチテレインセレクトやクロールコントロールにおけるブレーキの制御も、従来より滑らかになり洗練された効き味に。進化の跡はしっかり感じられたのだ。
ロックセクションではマルチテレインセレクトの“ROCK”モードを選ぶと、タイヤのスリップ量を最小限に抑えながらLSD効果を発揮。走行ラインを乱しにくい走りが可能になる。あるいはクロールコントロールを選べば、ライン取りに集中しながら走ることもできるのだ。
林間コースはH4(センターデフオフ)で走ってみる。サスペンションのしなやかな動きが感じられ、凹凸の激しい路面ながら突き上げをほとんど乗員に感じさせない、シャシー剛性の高さとも相まって、ハイスピード・ロングタームの走りも疲れにくそうだ。ダカールラリーのノウハウがフィードバックされた…ことがよく分かる。
L4時、またはH4・マルチテレインセレクト選択時に起動する「マルチテレインモニター」は車両周囲の状況を4つのカメラで、リアルタイムに12.3インチモニターに表示。さらにスイッチの切替で前部、後輪部のアンダーフロアビュー表示も可能だ。ただし12.3インチモニターはオプションで45万円ほどの「T-Connect」が必要。
エアロバンパーを採用する「ZX」以外は、優れた対地アングルをキープ。最大渡河性能は700㎜を実現していて、さらに高い機動力を獲得している。もちろん、沼にハイスピードで突っ込むような走りは厳禁だが…。
前後コイル・リジッドのランクル80シリーズ以上のサスペンションストローク量を、前後で実現。とはいえフロントは独立式だけに、80のようなアーティキュレーションは感じさせないが、電子デバイスが十分、走破性をカバーしてくれる。E-KDSSはオフロードではスタビライザーをまったく解除してしまうので、モーグルを走る時の姿勢も水平に保たれ美しい!障害からのヒットを微妙に交わすボディアングルの良さも特筆もの。
マルチテレインセレクトはH4モードでも使えるようになり、“DIRT”“SAND”“DEEP SNOW”などの走行モードを選ぶことができる。“AUTO”モードもあるが、林道などを走る際は、これらを積極的に使ってみたい。起伏や凹凸の激しい路面ではAVS、E-KDSSと相まって、スタビリティの高い乗り心地を実現。サスペンションがしなやかに追従してくれるので、終始、安定した操縦性を提供してくれる。
撮影協力
◆さなげアドベンチャーフィールド
◆0565-46-5551
◆https://www.lc-saf.co.jp