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【JAOS】TEAM JAOSが世界一過酷な北米オフロードレースに参戦!

国内最大の総合4WDパーツメーカーであるジャオスは市販車に向けて様々なカスタマイズパーツを販売している。基本的には「構造変更が不要で、装着後にそのまま車検に適合する」という製品づくりがモットーだ。
 そこに至るまでのカスタムの可能性の追求や耐久性を実証する目的を兼ねて、近年はTEAM JAOSとして海外のオフロードレースに参戦中だ。かつてハイラックスで参戦したアジアクロスカントリーラリー(AXCR)のガソリン車でクラス優勝を飾った実績は、多くの読者が記憶していることだろう。
 そんなTEAM JAOSは2022年からそのフィールドをメキシコ・バハに移し、世界一過酷なオフロードレースと称される『BAJA1000』に参戦している。昨年は全区間を完走したが惜しくも規定時間内にゴールすることができなかったためまさに今年が正念場!過去の問題点を徹底的に洗い出し、レースマシンのLX600をさらに進化させている。
 そんなTEAM JAOSが7月22日~26日の日程で、群馬県と長野県でマシンのシェイクダウンを実施。実は回を追うごとにシェイクダウンの規模や期間は拡大し、今年は2つのオフロードコースでテスト!今年は何としてでも結果を残す、という意気込みを感じられるが、TEAM JAOS・ドライバーにして、マシン製作のディレクションも行なう能戸知徳選手に2つのコースを使った理由を聞いた。
「これまで長年テストを行なってきた長野のモーターランド野沢は、乗用車でも走行可能なフラットな路面です。長時間周回できるので、水やオイルの温度管理などには適しています。路面もかなり硬いため、タイヤやブレーキ、様々な制御系のテストも行なえるのです。ただし実際のBAJA1000の路面は小麦粉のようなフカフカの砂で、かなりアップダウンが激しい。過去2回参戦した経験から起伏が大きく火山灰が堆積した浅間サーキットの方が、実戦に近い条件でテストができる」と語る。
 今回編集部は浅間でのテストに帯同したが、野沢でのテストとは異なり、能戸選手は意図的にジャンプを繰り返し、新設計したショックとスプリングの組み合わせをずっと煮詰めていた。なお、昨年はスペアタイヤを2本積載した状態でテストを行なっていたが、軽さを求めて現地メキシコでは1本にの積載に変更したことで、乗り味に変化があったとか。
 今回も可能な限りの軽量化を行なっているため、サスペンションセッティングはゼロからといえる状態。同時にシートのホールド性も再検証を実施したこうしたことからも、マシンを万全の体制に仕上げるためのテスト期間も長期化しているのだ。

BAJA1000とは?

メキシコ バハ・カリフォルニア半島で開催される北米大陸最大級の2輪/4輪のオフロードレース「BAJA1000」。その初開催は1967年で、55回目となる2024年大会の日程は11月12日~17日を予定。トロフィートラックと呼ばれるBIGサイズの究極のオフローダーから量産車に近いマシンまで幅広い車種が戦う。約1000マイル(約1609㎞)を一気に走りきる過酷なキャノンボールレースでありながら、大会会場は陽気なお祭りムードが漂うこともBAJA1000の魅力だ。

■BAJA1000で結果を! TEAM JAOSがこれまでになく完成度の高いマシンをテスト

 今回のシェイクダウンには、LX600〝OFFROAD〟をレースマシンとした北米3ヵ年計画の有終の美を飾るための能戸選手の要望を具現化するTEAM JAOSのメカニックが全員集合。その内訳はジャオスの社員スタッフから1名、群馬トヨタグループ(以下GTG)の選抜メンバー7名で構成される。BAJA1000でのメカニック経験者は、ジャオスとGTGから3名と、半数は未知の体験となる。
 このシェイクダウンは、普段整備している整った環境とは全く違う。リフトもエアツールも使えない状況で、どうすれば迅速に確実に分解・整備が行なえるのかを確認する場でもある。またチームのメンバーは、テストの期間中に能戸選手とほぼ一週間寝食を共にすることで意思疎通を高めていく…という狙いも盛り込まれている。
 能戸選手はまた次のように語る。
「BAJA1000のコースは大きく分けて2タイプあって、セオリーでは交互に提案されることが多いのです。そのため毎年参加していないと攻略方法が見出せないともいえます。今年は前々回の2年前のコースに近いと想定しているので、前回の1310マイル(約2110㎞)よりは短くなるのではないかと思っています」と。
 そして、つい先日発表された情報によると、能戸選手が参戦するクラスのスタートは11月16日(現地時間)で、走行距離は1000マイル(約1600㎞)とのこと。この距離を不眠不休で30時間を目標に走破する予定だ。これまでの雪辱を見事に晴らし、誰もが願う〝完走〟という結果を持ち帰って欲しいものだ。

LEXUS LX600 “OFFROAD”TEAM JAOS 2024 ver.

今回が3度目となるBAJA1000への挑戦。参戦マシンはもちろん『LEXUS LX600 “OFFROAD” TEAM JAOS 2024 ver.』。土埃からもっとも遠いと思われているLXを過酷なモータースポーツの場に降臨させることで、エンドユーザーの心に響くような〝リアル〟を世界に向けて発信!参戦クラスはいわゆる「市販車無改造クラス」となる『Stock Full Class』。クラス優勝獲得に向けて、主に4つのアップデートを施しているが、マシンの補強と安全性を確保するロールケージ、灯火類や安全タンク、足回り、タイヤ&ホイール以外はレギュレーションに則り、市販車のまま。

昨年までのボディは全体的にダークトーンの紺色だったが、今年はLEXUSのグレーもイメージさせつつ、青みを増したカラーに変更。ラッピングはORACAL970RAを採用。

今年のマシンの改良点は、大きく3つ。1つ目が各部の徹底した軽量化。例えば余分な工具の積載を減らし、スペアタイヤは今回は1本だけ搭載とした。これでトータル20㎏ほど軽くなった。2つ目はタイヤの変更。昨年のマシンで最低地上高をさらに拡大するため、タイヤサイズを35インチから37インチに変更したが、今回はテストで吟味したタイヤを新たにセット。またアンダーガードの取り付け形状も見直して、ボディ下部の張り出しも減らしたとか。3つ目はショックアブソーバーの新設計。コイルスプリングとの組合せも念入りに検証し、最適解に辿り着くまで試行錯誤を繰り返し、ブラッシュアップしているのだ。
テスト走行でジャンプを見る限り、空中でも着地の姿勢も安定。もちろん着地時の衝撃のいなし方は過去最高レベルだった。高速走行でジャンプが避けられないシーンも多いBAJA1000で性能は有効に働く!
これまでも文字通り、TEAM JAOSを支えてきた『KYB』。新設計されたスペシャルダンパーは、ダンパー本体の直径を太くして熱に対する耐久性をアップ。さらにリザーバータンクを設けているがそのオイルの流れは一方通行にして、熱による劣化を抑制している。またダンパー本体とリザーバータンクの距離を短くした構造を採用。タイムロスに直結した昨年のサスペンショントラブルなどの同じ轍を踏まぬように、万全の対策をとる。
ディスクローターやブレーキパッドなど、ブレーキシステムはプロジェクト・ミュー製。特別モデルを3種類テストしたが、制動性能が高すぎると車体からエラー信号が出るため、あえてバランスを重視したややマイルドなブレーキシステムが選ばれた。
初参加時は35インチタイヤを装着したが、先行するトロフィートラックがつくる深い轍に入り込むと抜け出せなくなり、走りにくいことが発覚。そこで最低地上高を確保するため、前回から37×12.5R17サイズに変更している。今年は37インチだが、テストにおいてTOYO TIRESのオープンカントリー「R/T」「A/TⅢ」、そして日本未発売の「R/T Trail」の3モデルを比較して、マシンやBAJA1000との相性をチェック!軽さは利点だがケース剛性が不足しており、悪路では衝撃を拾ってしまう「A/TⅢ」。従来モデルの「R/T」はトラクション性能が高く前に進むより路面を掘ってしまいがち…。その両者の良いところを併せ持つ「R/T Trail」がベスト!だということがシェイクダウンで確認できたそうだ。
従来のアンダーガードは強靭なパイプフレームにパネルを組み合わせた構造だった。強度はあるが、最低地上を多少損なったのも事実。そこでパイプフレームを途中までとした構造に伊織、従来より40㎜ほど車体に近い位置に装着。細かな改良を積み重ね、着実にポテンシャルアップ。またフロントの開口部はミッションオイルの冷却のために設けている。
今回もトヨタ紡織製の非売品・フルバケットシートで路面からの突き上げや振動を対策。コ・ドライバーにアメリカ人スタッフが座ることを想定してシート本体はかなりゆったりしたサイズだが、スリムな能戸選手のためにサポートクッションを追加して整える。特に頭部のサイドサポートの追加似合わせてその周辺を重点的に検証していた。
今回のシェイクダウンは、普段異なる店舗に勤務するメカニックの「合宿」でもあり、能戸選手も積極的に話しかける様にしていたのが印象的であった。
各部の灯火類は、ジャオスと同じ群馬県のIPF製品を装着。昼間だけでなく漆黒の闇の中を走るレースなので、ギャップをいち早く視認することがマシンへのダメージを減少させることになるため、フロントウインドウの上に装着するLEDバーは50インチにサイズアップしている。
5日間のテストを終えた能戸選手にズバリ手応えを聞いてみた!「BAJA1000に何度も参戦している塙選手に聞いたことがありますが、オフロードのレースマシンはトライ&エラーを繰り返して進化させるから、完成するまで時間が掛かると。まさに今それを実感しています。LEXUS LX600 “OFFROAD” TEAM JAOS 2024 ver.も、これまではある程度ゴツゴツした乗り味でしたが、最新の仕様ではかなりしなやかな乗り味になりました。つまり前回までの仕様よりかなり走りやすくなりました。やってきたことは間違いでなかったと実感できました」とコメント。国内テストで得た自信を、メキシコ・BAJAの地で確信に変えて欲しいとファンが願っている。

TEAM JAOS 2024/チーム概要

TEAM JAOSのメカニックは合計8名。群馬トヨタ・RVパークの二宮店長は昨年に続き、参加。チーフメカニックとしてシェイクダウンの時も率先して作業を行なうなど、まさに頼れるリーダー的存在。またネッツトヨタ高崎店の深澤さんも、これまで二度BAJA1000に帯同。三回目の今年は集大成の年と意気込んでいた。もちろん、初参加のメンバーも多いため、彼らの体調管理などにも気を配るとか。

●参戦レース:SCORE BAJA1000 2024 ●参戦クラス:Stock Full Class
●参戦車両:LEXUS LX600 “OFFROAD” TEAM JAOS 2024 ver.(ベース車両:LX600 “OFFROAD”)

●監督:赤星 大二郎(株式会社ジャオス 代表取締役)
●ドライバー:能戸 知徳(株式会社ジャオス 開発部)
●コ・ドライバー:CANGURO Racing
●チーフメカニック:二宮 亮(群馬トヨタ自動車株式会社 RV Park)
●メカニック:深澤 拓(ネッツトヨタ高崎株式会社 サービス部技術G)
●メカニック:小畑 士郎(群馬トヨタ自動車株式会社 サービス部技術G)
●メカニック:笹本 雅斗(群馬トヨタ自動車株式会社 レクサス太田)
●メカニック:桑原 和也(群馬トヨタ自動車株式会社 伊勢崎つなとり店)
●メカニック:櫻井 善康(ネッツトヨタ高崎株式会社 サービス部技術G)
●メカニック:中村 龍也(群馬トヨタ自動車株式会社 レクサス高崎)
●メカニック:宮﨑 毅(株式会社ジャオス 管理部)
●車両製作ディレクター:岸 好昭(株式会社ジャオス 設計部)
●サスペンションディレクター:田村 裕一郎(株式会社ジャオス 開発部)
●サスペンションエンジニア:田中 一弘(カヤバ株式会社 AC事業部 サスペンション事業部 技術部)
●広報:吉田 哲也(株式会社ジャオス 企画宣伝部)
●アドバイザー:横田 衛(群馬トヨタグループ 代表)
●チームサポート:CANGURO Racing
●車両製作&メンテナンス:群馬トヨタ自動車株式会社(https://www.gtoyota.com
●車両製作&メンテナンス:ユナイテッドサウンド(http://www.unitedsound.jp/fuse/