所有する満足感が高い現代のAMGモデル
メルセデスフリークにとって憧れの存在であるAMG。角目世代のAMGは希少価値が高まっており価格も高値を維持しているが、AMGがメルセデスの子会社となった後の最初のモデル、C36以降のAMGは身近な存在になっている。メルセデスの最上級グレードとなった55AMGを経て、現在は63/65AMGとしてラインナップを飾っている。
中古車相場を見ると、子会社化以降のAMGはリーズナブルな状況になっていて、63AMGでも300万円から狙える状況になっている。買い替えの対象としても十分に検討できる相場になってきているのだ。
各所に専用品を装着し、エンジンや足回りが強化されたAMGは、ノーマルでは味わえないパワーとフィーリングを持つ。インテリアもスペシャル仕様になっているなど、所有する満足感は極めて高い。そんな憧れのAMGが300万円から探せるのだから、メルセデスフリークにとっては嬉しい状況だと言えるだろう。
そこで当コーナーでは、63AMGに注目。走り、エンジン、メンテナンスなど購入時に気になるポイントを集めてみた。
メルセデスを知り尽くした
AMGの技術が結集したオールラウンダー
パワーではなくフィーリングを追求
SLクラスはどの世代も優雅さに溢れていて魅力的だが、R230型のSLは取り分けエレガント。R230が発売され、そのAMGモデルであるSL55が登場した時には、そのスタイリッシュさ、強烈な加速性能がステイタスとなり、六本木にはSL55が溢れたものだ。
しかし、その頃のオーナーたちに教えたいのがSL63というクルマである。最高出力はSL55の517psに対して525psとわずかな向上しかなく、最大トルクは1割以上も少ない。それでもSL63の方がすべてにおいて素晴らしいのだ。
実際にドライブしてみると、SL55の宝の持ち腐れのような低速トルクによる扱いにくさはなく、しかも高回転まで実に伸びやかにパワーフィールが続いていく。本当に現代のパワーユニットとしてはフィール、性能、こだわりのすべてで最高峰と言えるエンジンを搭載しているのである。
贅沢にシリンダー数を増やしたV12と比べ、コンパクトなV8は同じ排気量でも軽量に仕上がるだけでなく、1気筒あたりの排気量が大きなことから数字以上のトルク感を生み出す。SL63の場合、1シリンダーあたりの排気量は776㏄にもなる。これがトルク感を生む秘訣だが、このエンジンについて言えばそうしたメリットはそのままに、全域でスムーズネスを達成し、さらに最新のエミッションにも対応しているのだから、AMGの技術力は素晴らしい。
このパワーユニットを得たことによって、R230にはまた新しい魅力が生まれたことは間違いない。しかも、このパワーユニットの魅力を完全に引き出してくれるトランスミッションとのマッチングもいい。
AMGスピードシフトMCTは、従来のATが用いていたトルクコンバーターを多板クラッチに置き換えたもので、昨今のトランスミッショントレンドである2ペダルMTに対するAMGの回答とも言える。こうなるとATではなく、プラネタリーギアを用いたMTという見方だってできる。しかも各ギアにもクラッチが存在する7Gトロニックがベースだから、実質的にはDSGやDCTと同じデュアルクラッチ的な働きをするのだ。
もはやMTとATの違いが曖昧になりつつあるが、このスピードシフトMCTが優れた変速機であることには疑う余地はないだろう。
マイナーチェンジによってフロントマスクが一新されたことについては、好みが分かれるかもしれない。シックな雰囲気を高めたインテリアについても同様。
しかし、スタイルからもインテリアからも新しい時代に突入したことをユーザーに感じさせることは非常に重要なことだ。
V12ツインターボであるSL65の直線番長ぶり、それはそれで強烈な魅力を放つスーパーカーと言える。
しかし高級でスポーティ、かつオープンで、実用性もあって高性能。すべてを兼ね備えたスーパーオールラウンダーであるSL63AMGは、クルマというモノの楽しさ、確かさを知り尽くしたメルセデスAMGの技術が結集した、非常に説得力のあるモデルなのである。
これが新車価格の半値以下で入手できる今の状況は、AMGフリークにとって朗報だと言える。
ホイールベース:2560㎜
車両重量:1990kg
エンジン形式:V8DOHC
排気量:6208cc
最高出力:525ps/6800rpm
最大トルク:64.0kg-m/5200rpm