Q.2 巷でささやかれる噂ってホント?
噂に左右されない正しい知識を持てば思いがけないほど良い中古車と巡りあえる
維持費は新車価格を基準に考えるべき
メルセデス・ベンツには様々な噂がある。それだけの多くの人から注目を集めているということなのだが、
その内容は維持に関するものが主流。やはり高級車だけに中古車を買った後どうなのか、という部分に人々の関心が集まっていることが分かる。中古車なら買えない値段でもないし乗ってみたいけれど、故障で大金が必要になるのは怖い、というのがホンネだろう。
そこでここでは、メルセデスにまつわるありがちな噂を事例を挙げながら、その真実について明らかにしていきたい。
まずは、中古のメルセデスは買った金額以上の維持費がかかるという噂。今や20万円でもメルセデスの中古車を探すことは可能なので、こういった極端な例は除外するとして、5年や7年落ち程度の中古メルセデスを買って、車検2〜3回程度乗り続けるのに購入額以上の維持費が必要になるケースはまずない。もちろん、10年も乗れば維持費のトータルは中古車の購入額を超えるだろうが、それも例外的な話だ。
多くの人にとって、クルマの購入額は維持費のリミットという感覚があるようで「100万円で買ったクルマに100万円以上の修理代を払うのは……」という話をよく耳にするが、それは新車価格を基準に考えるべきものだ。同じ200万円の中古車でも、新車が500万円のものと1000万円のものでは意味合いが大きく違う。このような噂が流れるのも、激安のSクラスを買ってすぐにアクティブサス回りが壊れて100万円の修理代がかかった、というような人が話をオーバーに広めているからだろう。無理のないチョイスでキッチリと吟味した中古車を選べば、他の輸入車と比べても不可解な故障や出費は少ないのがメルセデス・ベンツなのだ。
ボディが小さいクルマはメンテもラクなのか!?
ボディサイズが小さいクラスほどメンテナンス費用は安くて済む、というのも多くの人が思いがちな部分だが、これはそうでもない。
例えば、Aクラスはエンジンがフロアの下に大きく傾斜して搭載されているため、Cクラスよりも圧倒的に作業性が悪く整備代が割高になりがち。またV6を積んだCクラスと直4のEクラスでは、単純に必要なプラグもコイルもCクラスの方が多く交換費用は割高になる。このように、メンテナンスの費用はボディのサイズクラスというよりは構造に大きく左右されるので、購入対象を決める時はよく研究する必要があるわけだ。
しかし高級なモデルになるほど複雑な装備を搭載するようになるので、同じエンジンを積むSクラスとEクラスを比較すると、やはりSクラスはメンテ費用が何かと割高になるというのは事実。とくに専用部品が多く生産台数の少ないクーペのCL、可動トップを持つSL、クラシックな構造のGクラスなどは、コンパクトとはケタ違いの維持費が必要になるモデルである。
変わったボディカラーのクルマは程度が良いという噂もよく聞く。通常、人気色は下取りも高く期待できるため、数年で乗り替えを考える普通のユーザーは人気色を選ぶ。多数派ではないボディカラーは受注生産となる場合も多く、納車まで時間がかかったり何かと面倒だ。そこまでこだわりを持つユーザーはメルセデス・ベンツに強い思い入れを持っている人が多く、以前からメルセデスに乗っているユーザーがほとんど。こういった人は輸入車の扱いになれているため、無用な負担をかけない運転をし、メンテナンスのポイントも心得ている。つまりはクルマを大切にする人が多いので、中古車もコンディションの良いクルマがほとんど、というわけだ。
もちろん例外的に、女性ユーザーが乗っていたキズだらけのクルマなども見受けられるが、この噂はほぼ当たっていると言える。
法人登録だった車両は程度が良い!?
高級車であるメルセデス・ベンツ。法人登録されたクルマも多いこともあって、都市伝説的に語り継がれているのが「法人所有だったメルセデスは状態がいい」という話。整備費用は経費で処理できるため、ディーラーでキッチリとメンテナンスされている、というのが根拠だが、そうとも限らない。またメルセデス・ベンツには3年間のメルセデス・ケアが付いているので、どんなクルマでも最初の車検までは最低限の整備はされているため、法人でも個人でも大きな差はない。
さらに、Sクラスのような運転手付きで乗るのが普通というクルマの場合、エンジンをかけた状態で待機している時間が非常に長く、熱害が進んでいるケースも多いようだ。走行距離が少なくてもエンジンがかかっていた時間は長いという、欧州車にとってよくない使用環境だったものが少なくない。もちろん中にはビルの地下駐車場に保管されていて、接待ゴルフの足くらいにしか使われていなかった極上の掘り出し物も存在するが、法人所有だったからコンディションが良いと思うのは早合点。各部の状態を自分の目で確かめて選ぶようにしたい。
最後に走行距離にまつわる噂について解説しておこう。走行距離も中古車を選ぶときにこだわる人が多いポイントだが、距離が少なければ維持費がかからない、というものでもない。クルマに使用されているブッシュ類や回転部分のベアリングなどは、長期間動かさないでいると一定方向に大きな負担がかかり続ける。1カ月近く放置されることが多く、走らせるのは時々といった使用環境で走行距離が少ない場合は、消耗部品の交換時期が通常より早いケースが多いというのが事実。
これとは逆に、走行距離が多くても高速道路をストレスなく走り続けているようなメルセデスは本当に調子がよい。そもそもがアウトバーンで最高のパフォーマンスを発揮できるように設計されているクルマなので、高速で走らせるのは負担にならないのだ。
もちろん、オイルやブレーキバッドなどの消耗品はキッチリと交換してやる必要があるが、油脂類は走行距離が少なくても経年劣化する。また5万㎞前後でまだ何も手が入っていないクルマよりも、8〜9万㎞走って一通りの消耗品が交換されている方が手間がかからないということもある。