同型車に乗り替えるなら
ショップの管理車両は狙い目
Mercedes-Benz
初代型Eクラス(W124)
主な小変更
●90年 ボディサイドの樹脂パネルを採用。シートの形状も変更される。
●92年 V8を積んだ500Eを追加発売。
●93年 400Eを追加。また直列エンジンの排気量を変更しDOHC化。
●94年 ボンネットなどをデザイン変更。
いまW124はいくらで買える?
E320 → 90~150万円
E280 → 70~150万円
E500 → 200~400万円
メルセデスらしさを感じられる
W124に乗っていつも思うのは、やはり運転のしやすさ。とくにセダンは見切りがよく、車両感覚も掴みやすい。エンジンは3.2ℓの直6DOHC。この回転フィールと高回転域のトルクの盛り上がりはこのエンジンならでは。この時代のメルセデスらしさを存分に感じられるコンディションだった。リミテッドならではの装備としてはウッドステアリング、サンルーフ、CDチェンジャー。程度の良いW124が減ってきている現在、取材車のようなクルマはお勧めできる。
高い再生力のキモは頑丈なボディ構造
「最高の機械」として今でも多くのファンを魅了するW124。分解整備できる部分が多く、さらに消耗パーツを定期的に交換することで長く乗り続けることができる名車だ。その驚くべき再生力を支えているのが、頑丈なボディ構造。分解整備できて、パーツ交換による再生が可能であっても、骨格となるボディの耐久性が乏しければ長く乗り続けることは難しい。強靱なボディがあるからこその再生力なのである。
W124のボディ構造を見てみると、基本となる骨格をガッチリと作り、フロアパネルやバルクヘッド、インナーフェンダーやルーフパネルなどの板状の構造材を張り付けて、頑丈なモノコックボディに仕上げている。ちなみにバンパーの裏側にあるフロントクロスメンバーは筒状になっており、左右のフロントメンバーに溶接されているのだが、この内部は別の鉄板が仕込まれている。さらにボディ本体のフレームに加え、もう一つの骨格となるのがサブフレーム。W124はボルト固定ではなく溶接によって接合されており、これがボディ剛性の要になっているのだ。
シートも手の凝った構造になっていて、W124の場合は5重構造。ウレタン材の下には有名なヤシ素材が使われており、乗員の体を面で受けて、ストローク量の多いスプリングによって快適な乗り心地を実現している。そのスプリングも、コイルタイプとリーフタイプを巧みに組み合わせ、面圧を分散させているのである。また衝突事故の際には、30センチ以上も深く沈み込みことで、腰への負担を和らげるといった安全性能まで備えているのだ。
エンジンは徐々に電子制御化されていくが、この時代の制御はシンプルなもので、基本的には機械仕掛けの部分が多い。そして、ポルシェと共同開発した500Eの存在もW124ならではトピックだと言えるだろう。ポルシェのチューニングによって引き締められた足回りや名機M119ユニットなど、憧れのクルマとして今でも高い人気を誇る。直6をベースに設計されたボディに、ハイパワーなV8を搭載しても破綻しないところは、W124の基本性能の高さをうかがえる事実でもある。
取材車は、W124専門店「アイディング」で販売されている95年式のE320リミテッド。内外装もキレイな状態を保っており、走行距離は7万㎞台。20年以上前のクルマということを考えると少ない方に入るのではないだろうか。このクルマは長くアイディングでメンテナンスしてきた車両であり、整備履歴も残っているから今後のメンテナンス計画が立てやすい。同型車に乗り替える時は、こうしたショップの管理車両を選ぶと安心感が高いのだ。これまでメンテナンスしてきた自分のクルマから乗り替えるわけだから、素性の分からないクルマを選ぶとトラブルの連鎖などで直すことに費用がかかってしまうことが考えられるからである。同じクルマに乗り替えるということは、それだけ惚れ込んでいるということ。乗り替えて後悔しないためにも、ショップの管理車両はお勧めだ。
冷却系と水回りを見直しておこう
最終型の95年式でも、20年選手となったW124こと初代Eクラス。ネオクラシックの域に入ってきたこともあり、どこが弱点というよりもクルマ全体のメンテナンスをいかに計画的に進めるかというのが重要になってくる。大物修理であるATは一度はオーバーホールされているクルマが多いが、この時期はエアコンの状態に注意したい。スロットルアクチュエータ、コンピュータ、エンジンハーネスといった部分も高価なパーツ。トラブルに備えて整備費用をストックしておくことが重要だろう。スロットルやコンピュータは分解修理で直せるので費用を抑えることが可能だ。オイル漏れには注意が必要だが、エンジン自体は丈夫。気温が高くなる時期は水温が気になってくるので冷却系や水回りを見直しておきたい。インテリアではルーフライナーが垂れてしまうケースが増えている。走行に直接影響を与える部分ではないが、きっちりと直しておきたいところ。純正品は高価だが、張り替えのサービスを活用すれば安く修理できる。高額修理にどう対応するか、というのが今後のW124におけるポイントになってくる。