古いクルマだから維持費がかかるわけではない
維持費は古い新しいではなくて
構造によって決まってくる
リアルクラシックやネオクラシック世代のドイツ車は、年式的に見て20年以上前のクルマ。クルマ好きの間でも、見た目はクラシカルで素敵だけれど、維持が大変なのでは? というイメージが強いようだ。
では、デジタル化が進んだ高年式モデルの維持は簡単なのかというと、じつはそうとも言えない状況なのである。現代のクルマはハイテクで快適性や安全性、そして走行性能にも電子制御を用いている。これはクルマの進化として自然な流れでもあるのだが、維持の費用という面においてクラシックやネオクラシックと大きな差があるわけではないのだ。
デジタル世代のドイツ車には高速データ通信を可能にしたCANデータバスが採用され、各部の状況を瞬時にコンピュータへと送り燃料噴射から安全装備の作動まで細かな制御を行なえるようになっている。
整備の環境においても大きく変わり、クルマにコンピュータ診断機を繋げばトラブルの原因を特定するヒントを得られるようになっているなど、すべてにおいて効率化がなされているのである。
しかしながら、デジタル化による弊害があるのも事実なのだ。センサーや電子ユニットを多用しているため、この部分にトラブルが多い傾向にある。部品はユニット化されている箇所が多いため、部分的な不良であってもまるごと交換しなければならず、場合によっては数十万円のユニットを交換しなければならないケースもあるのだ。
電気的な不良が増えたことで、トラブルのパターンが複雑化しているのもデジタル世代の特長。コンピュータ診断機はこの世代のクルマをメンテナンスするのに欠かせないツールだが、これで全てが分かるというわけではない。エラーコードが出ている箇所を全て交換しても直らないケースがあるからだ。
エンストやアイドリング不調が症状として出ているのに診断機ではエラーコードが出なかったり、エアマスセンサーの不良というエラーコードが出ていても原因は他のところにあったりする。
よくある事例としては、ABSの警告灯が点灯した場合にコンピュータ診断をしてみると、ABSセンサーの不良と診断されることが多い。だが実際には、ABSユニットに問題があることがほとんどなのだ。これはBMWで頻発しているトラブルケースである。このように、コンピュータ診断機の結果だけではトラブルが解決しないケースが多いのだ。
もちろん、配線が切れているような明らかな故障はちゃんと診断してくれるが、そのほかにも複雑なトラブルがいろいろとあり、これらはデジタル化による弊害の一つと言えるだろう。
デジタル化によってクルマが快適で速くなったのは確かだが、電子ユニットの多用、接触不良、センサー、熱によるトラブルは多く、警告灯が点灯する頻度も高くなっているようだ。新車保証期間中であれば何かあっても心配は要らないが、中古車として購入する場合には、何か起きたときの費用が高くつくケースがあるというのが現代のドイツ車なのである。とくに電子ユニットが壊れてしまった場合の負担は大きく、分解修理もできない。
シンプルだからメンテナンスしやすい
一方、シンプルな構造を持つクラシックやネオクラシックはメンテナンスのサイクルは短い傾向にあるが、部品が細かく出ることや分解整備ができる箇所が多いため維持においてはさほど難しくなく、この世代のドイツ車をよく知る修理工場も多い。1年に1回プロによる点検を受けて、適切なメンテナンスを施してやれば、現代のドイツ車と同じように維持できるのである。リーズナブルなOEMパーツや信頼できる社外パーツを使うなど、工夫次第で維持費を抑えることも可能だ。タテ目のメルセデスに年間20万円の維持費で乗っている人だっているのだ。
古いから維持が大変というのは、適切なメンテナンスをせずに乗りっぱなしにされたクルマのこと。もちろんこれは、現代のクルマにおいても同様である。
維持費というのは古い、新しいだけではなく構造によって決まる。さらに中古車においては、これまでのメンテナンス状況が大きく影響するのだ。リアルクラシックやネオクラシックだから維持が大変なのではなく、程度の良いクルマを選べば、現代のクルマよりも安く維持できることだってあることを知っておいてほしい。
トラブル原因が複雑になった
電子制御時代のドイツ車
高度な電子制御システムを持つ高年式のドイツ車は、コンピュータ診断機によってトラブルの原因を特定しやすくなったが、必ずしもテスターの結果が原因ではないということもあり複雑になっている。エラーが出た電子ユニットではなく、じつはセンサー不良だったりといろいろなパターンがあるのだ。