ATメーカーが定める
最新のオーバーホール
そんなZFのATを、古くからオーバーホールや修理、そしてリビルト対応などを行なってきたのがデルオート。現在、日本で唯一の「ZF社オフィシャルステーション」として、ATやパワステなどをオーバーホールしているところだ。また、ここでオーバーホールされたATは、全国の整備工場などへリビルトATとしても出荷されている。ここであらためて説明を加えると、リビルトAT対応とは、事前にオーバーホールしてあるATを壊れたATと交換するもので、修理の時間と費用の短縮が可能になる。壊れたATは交換作業後に業者に送られ、再びリビルトATとして再生される。昨今では、交換ではなく壊れてしまったATをベースに専門業者がオーバーホールし、それを再び使うケースにおいても、リビルトAT対応と呼ぶところもある。
このリビルトAT対応、時間と費用の短縮というメリットのほかに、デメリットも存在する。どのようなオーバーホールが行なわれたのかが分かりにくいため、信頼のおけるリビルトATでなければリスクが高まり、せっかくのメリットが失われてしまう。
そのデメリットを解決しているのが、ZF社公認のファクトリーであるデルオートだ。メカニックはドイツのZF本社にて研修を行ない、深い知識と高い技術力を身に付けている。また、ZF社の純正品を使用するのはもちろんのこと、トラブル事例や最新のパーツ情報など、ATオーバーホールや修理に必要な情報をZF本社とオンラインで共有しているため、最新かつ正しい修理を行なうことが可能なのだ。その中には、自動車メーカーでも把握できていない情報もあるとのことで、ATの製造メーカーと直接繋がっているからこその話でもある。これらによって、より完璧なATオーバーホールや修理が可能になり、高い信頼性を持ったリビルトATを提供できるのだ。
これらの高い技術力と信頼性以外に、エンドユーザーにとって大きな魅力が、ディーラーよりもリーズナブルな費用で済むということ。ディーラーと同等かそれ以上の信頼性がありながら、その費用は安く抑えられるのだから、ぜひとも知っておきたい工場なのである。
1年保証、しかも走行距離無制限
これは信頼の証だ
さて、ここからはデルオートに入庫していた2005年式のBMW745iを例に取り、ATのオーバーホールに関して話を進めていく。
まずはATの診断から。試乗や作動確認、ATFの状態などのチェック以外に、特徴的な診断方法がAT専用の診断機を繋ぐこと。クルマ全体の故障診断機とは異なり、これはATに備わる専用のカプラーに繋ぎATの状態を確認できるもの。ATの異常履歴や点検項目は非常に多く、この専用テスターだけでトラブル原因を把握できることも多いという。もちろん、ZFのATに関する豊富な知識を持つメカニックが診断した場合に限ることだが。
トラブル原因が確認できたら、ATが分解される。ATの頭脳ともいえるバルブボディ本体の異常だけならAT本体を降ろさずに済む場合もあるが、内部のクラッチやシール類の交換などが必要と判断された場合は、AT本体の脱着を行なう。
降ろしたAT本体はキズや摩耗状態などを入念にチェックしながら分解され、再使用するパーツは徹底的に洗浄される。といっても、電子制御式のATへとシフトされてからは、再使用するパーツは減少傾向にあるとのこと。例えば、トルクコンバーター。デルオートでも専用の洗浄マシンや分解洗浄を行なうこともあるが、現在は多くの場合で新品に交換しているそうだ。またバルブボディも同様で、ここにトラブル原因があった場合は丸ごと交換するのがセオリー。スプリングやチェックボールなどで油圧経路を調整していた機械式ATと異なり、電子制御式ATはその役目をアクチュエータの細かい制御によって行なっており、それらの交換はできない。よってバルブボディをまるごと交換するのがセオリーとなっている。
トラブル原因の確認と洗浄後は、ZFの純正パーツを使用して組み付ける。シールやパッキン類に新品パーツを使用することはもちろんだが、ディスクプレートなどの消耗品全てを新品へと交換。これにより消耗品に中古パーツと新品が混在しないため、プログラム通りの電子制御が可能になる。と同時に、AT全体の信頼性向上にも繋がるわけだ。また、ディスクプレート等の組み付けは、各ATごとに定められたクリアランスに合わせる必要がある。車種やグレードによってクリアランスの設定値は変わり、その数値もZF社公認のファクトリーだから分かること。そして組み付け後はATのベンチテストを行ない、実際にエンジンで動かし作動確認とCPUの初期化やエラーコードを消去する。数多くの点検と洗浄、そしてパーツの交換を行なって完成したATは、1年間および走行距離無制限の保証が付いてユーザーの元に渡るのである。