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【 ドイツ車世代別メンテ/若年世代 (新車登録~10年未満)/vol.04 侮ってはいけないオイル漏れと二次的被害の実例 】

何かと後回しにされがちなオイル漏れ。しかしながら、漏れを放置しておくと思わぬ重大トラブルに繋がることもある。ここでは代表的なオイル漏れポイントと、漏れを放置したことによる二次的な被害について実例とともに解説しよう。

 

オイル漏れを軽視するとその代償が
非常に大きくなってしまうことがある

 

Parts Data

このパーツの役割は?

オイルが漏れないようにシーリング

 エンジンオイルなどをシーリングしているのがゴムパッキンやガスケットの役割。装着される場所と使われるオイルによってゴムの種類が異なるので、想定以外のオイルに対しては耐久性が低くなる。液体パッキンは、その名の通りペースト状になっているため使い勝手が良い。

劣化するとどんな症状が出る?

 症状としてはオイル漏れなのだが、漏れたオイルが別の場所に付着することでそのパーツの寿命を縮めたり、壊してしまうこともある。漏れがひどくなる前に対処しておくことが大切。

長持ちの秘訣は?

最適な油温を保つことが大事

 ゴムパッキンやガスケットは消耗品なので定期的な交換が欠かせないが、ゴムパーツは熱に弱いので最適な油温を保つことでその寿命を延ばすことができる。それゆえ、エンジン、ATなどを良好なコンディションに保っておくことが、結果的にゴムシールを長持ちさせる秘訣となる。

 

オイル漏れはどこから
漏れているかが重要

 にじみ程度なら問題ないとスルーされがちなオイル漏れ。部位によっては様子を見るというのも間違いではないのだが、いずれゴムシールやガスケットの交換が必要になる。しかしながら、そのまま放置されることが多いのも事実だ。オイル漏れが怖いのは、漏れだけにとどまらず重大なトラブルに繋がる可能性が高いということ。まずはこのことを認識しておきたい。そして、どこから漏れているかが重要なポイントとなる。
 まずはタペットカバーパッキン。これはエンジンの一番上に位置するいわゆるフタの部分に装着されるゴムパッキンである。イグニッションコイルやプラグコードなどを取り外しての交換になるが、比較的簡単に修理できるポイントだ。若年世代のドイツ車に多く発生しており、交換時期は走行距離で判断するよりも、漏れがひどくなってきたら交換するというスタイルが良いだろう。エキゾーストマニホールド側からの漏れがひどいと、漏れたオイルが高温になったエキマニに付着して煙を発生させることもある。車両火災の危険性もあるので定期的なチェックが必要だ。タペットカバーパッキンからの漏れを放置すると、プラグホールにオイルが溜まってしまい失火の原因になる。当然、エンジン不調を引き起こすから注意しなければならない。
 ブローバイケースが液体パッキンによってシーリングされているエンジンでは、ここからの漏れも多い。ゴムシールを交換するだけとは違って、使用する液体パッキンの量や塗り方によって寿命が変わってくる。作業はそのクルマのことをよく知る専門のメカニックに依頼したい。また、ケースに繋がるブローバイホースからもオイルが漏れることが多い。 

多くのドイツ車で発生しているタペットカバーパッキンからのオイル漏れ。放置するとプラグホールにオイルが溜まってしまうこともある。
タペットカバーはエンジンの一番上にあるフタの部分なので目視でも点検できる。漏れがひどくなってきたら早めに修理工場に持ち込もう。
 

漏れたオイルが周辺に
伝染するのがもっとも怖い

 そして、近年メーカーを問わず増えてきているのがオイルフィルターハウジングからの漏れだ。オイルクーラーとの接合部分や、エンジンに直接装着されていたりと車種によって変わってくるが、多くのドイツ車で発生している事例である。原因はエンジンやオイルクーラーとの間にあるガスケットが劣化してしまうことで、車種によっては複雑な形状になっている。ここからの漏れで怖いのは、漏れたオイルがプーリーやベルトに付着すると、ゴムが劣化してベルトが切れてしまったり、ロックして走行不能になるというトラブルが現実に起きているということだ。同じゴムパーツでも、シールとして使われているものと駆動系のゴムベルトや足回りのブッシュ類では耐油性能が異なる。そのため足回りのブッシュやベルトにオイルが付着すると、急速に劣化が進みぶにょぶにょになってしまい、思わぬトラブルの原因に繋がってしまうのである。
 また、オイルフィルターハウジングの下にオルタネーターが装着されているクルマで、漏れたオイルが付着したことで高価なオルタネータを壊してしまうという事例もあるから、ここからのオイル漏れは早めに対処しておくことが大切だ。
 オイル漏れは単なるゴムシールの交換と思われがちだが、漏れた箇所によっては大掛かりな修理が必要になることもある。例えば、エンジンとATの間にあるリア側のクランクシールからの漏れ。このシールがダメになると、ミッションのコンバーターシールに漏れたオイルが付着。前述したようにゴムの性質が異なることからコンバーターシールの寿命が極端に短くなってしまうのである。さらに、このリアのクランクシールを交換するためにはATを降ろす必要があるため、非常に手間と時間がかかるのだ。
 エンジン以外で多いのは、パワステのリザーバタンクやホースからのオイル漏れ。リザーバタンクはキャップにあるゴムシールの劣化が原因なので、ここは定期的に交換しておきたい。 そのほかにもオイルパンパッキン、電子制御式ATのカプラー部分、ATのオイルパンパッキンなどからのオイル漏れも多いので、オイル交換ついでに漏れの状況を点検しておきたい。オイルレベルセンサーなどのセンサーの差し込み口から漏れることもあり、主にOリングの劣化が原因なのでここもチェックしてもらおう。
 オイル漏れを軽視する人もいるが、その代償は非常に大きいということは知っておきたい。シール交換で数万円で済む修理が、放置してしまったことで費用が嵩んでしまうことは修理工場でよく聞く話だ。
 もし、DIYでシール類を交換する場合は、必ず指定のトルクで締め付けることが基本中の基本。勘違いしやすいのは漏れを止めようとして増し締めすること。これは逆効果であることを覚えておこう。

近年、多くのドイツ車で多発しているオイルフィルターハウジングガスケットの劣化によるオイル漏れ。パーツ代は安いが重要な役割を持つ。
オイルフィルターハウジングからの漏れで怖いのは、漏れたオイルが周辺の部品に付着すること。場合によっては壊してしまうこともある。
ブローバイケースが液体パッキンでシーリングされているクルマは、タペットカバーパッキンの交換と同時に液体パッキンを塗り直す。
ブローバイホースが劣化してオイルでベトベトになっているケースは多い。クルマによっては対策品が出ている。
リア側のクランクシールの交換作業はATを降ろす必要があるため手間と時間がかかる。ここからの漏れも放置できないポイント。
オイルレベルセンサーなどが装着されているところからオイル漏れが発生することもある。下回りは定期的に点検しておくこと。