エンジンマウントは走行距離ではなく
経過時間で交換すべき消耗品
Parts Data
このパーツの役割は?
振動を抑制するための緩衝材
クルマに使われているゴムマウントは緩衝材としての役割を持たされている。エンジンマウントはエンジンを下から支え、エンジンから発生する振動を抑えている。ミッションマウントも同様だ。プロペラシャフトの前後に備わるディスクジョイントも緩衝系パーツの一つである。
壊れるとどんな症状が出る?
エンジンマウントやミッションマウントが劣化して潰れてくると振動が大きくなり、エンジンが下がってしまうことで各部の負担が増え、二次的なトラブルが発生してしまうことがある。
長持ちの秘訣は?
オイル漏れを一掃しておくことが大事
漏れたオイルがゴムマウントに付着すると寿命が極端に短くなるので、きっちりとオイル漏れを一掃しておくことが大事。また、エンジンをかけなければゴムマウントの寿命が長くなると思いがちだが、駐車中でも常にエンジンなどの重さを支えているため、劣化は進む。
漏れたオイルが付着すると
マウントの寿命を縮める
なぜエンジンマウントが劣化するのかというと、これには2つの原因が考えられる。
まずはゴムパーツの宿命でもある経年劣化。エンジンマウントは走行中やアイドリング時の振動を抑えるだけでなく、駐車中でもエンジンを支えているので常に負担がかかっている。さらにゴムパーツは炭素分子を含む有機物なので酸化してしまう。その元となる酸素は大気中にたくさんあるわけで、何もしなくても劣化が進んでしまうのだ。また、ほとんどの化学変化は熱によって促進されるので、気温やエンジン回りの温度が上昇すれば劣化は進みやすくなる。ガレージで長く眠っていた低走行の極上車であっても、エンジンマウントの劣化は静かに進行しているのだ。もし、極上車を購入して急に走行距離が延びるような状態になれば、硬化していたエンジンマウントにいきなり大仕事をさせることになり、亀裂が入ってしまいオイルが漏れ出してしまうこともある。これは足回りのブッシュ類にも言えることなのだが、エンジンマウントは走行距離ではなく、経過時間で交換すべき消耗品だと言えるのである。
もう一つが、エンジンやATFなどのオイル漏れによる劣化。同じゴムパーツであっても、使われる箇所によって適したゴムを使っている。エンジンオイルやATFなど、想定していないオイルがエンジンマウントに付着すれば、急速に劣化が進んでしまう。オイル漏れを一掃しておくことが、エンジンマウントの寿命を延ばすことにも繋がるということを覚えておきたい。
メンテナンスが不足しているクルマの場合、このどちらの原因にも当てはまる。先にも述べたようにエンジンマウントが劣化すると、その他の部分に与える影響が大きいので、きっちりとメンテナンスしておくことが重要だ。
エンジンマウントの交換サイクルは、履歴が分かれば走行5万㎞くらいが目安で、時間にすると6~7年といったところ。また、エンジンマウントを交換するときは、ミッションマウントも同時に交換しておいたほうが効率的だ。これは文字通り、ミッションの振動や動きを抑制しているゴムマウントなので、エンジンマウントと同様に劣化が進んでいく。決して高い部品ではないので、万病の元となる振動を抑えるためにも手を入れておきたい。
緩衝系パーツとしてもう一つ紹介しておきたいのがディスクジョイント。これはゴムの板のような部品で、AT内部から発生する大きな振動を抑える役割を持っている。プロペラシャフトの前後にボルト留めされており、合計2つ備わっているゴムマウントだ。
劣化の症状としては、ATをDレンジに入れたときに下回りからゴツンという大きな振動が出るようになる。ゴムが劣化してボルト留めの部分にすき間が生じてくると大きなバックラッシュが発生するようになり、最終的には走行中の振動にも繋がってしまうのだ。ここも消耗品なので定期的に交換しておこう。