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2023.04.20

「ドイツ車復活レシピ」クルマを長持ちさせるためのサビ撃退法

 酸化と言ってもいろいろあるが、ここではボディのサビや電気の流れの悪化、オイルへの悪影響についての対策を解説していきたい。まずはボディのサビ。79年に登場したS123をサンプルに、サビが発生しやすいポイントを検証してみたい。

サビが発生しやすいのはどこか?W123をバラして徹底調査

80年代を代表する名車であるW123。とくにワゴンモデルは希少で、現在でも多くのファンに支持されている。

<<< ボディ編 >>>

モールの裏側
見た目にはサビが見られなかったモールやドアハンドルだが、取り外すとサビが確認できた。
ドア内部
ドアの内張りを剥がしてみると、水切りゴムやウェザーストリップあたりに多くサビが見られた。
フロントフェンダー内
フロントフェンダーはキズつきやすいため、サビが発生しやすい。内部もご覧の通り。
フロント回り
鉄板の繋ぎ目からサビが発生し、バンパー内部にもサビが進行していた。
ヘッドライト回り
ライト回りにもサビが確認できた。シールが劣化して水分が侵入してしまったからだろう。

目に見えるところより見えないところが怖い

 W123をサンプルにサビが発生しやすいポイントを探ってみた。結果としては目に見えるところより、見えないところのほうが怖いということだ。飛び石などでボンネットやフェンダーなどにキズが付いた場合は自分で確認できるため、タッチペンなどでDIY補修をするか、キズが大きければ板金塗装をしてサビを食い止めることができる。しかし、モールの裏側やフェンダー内部は作業が大がかりになるため自分で対処するのは難しいのが現実だ。
 自分でできる対策としては現状よりもサビを進行させないこと。例えばウインドーの水切りゴムやウェザーストリップを確認し、劣化がひどいなら交換することも視野に入れておきたい。雨水などを逃がす水抜き穴も詰まらせないように定期的にチェックしておくと安心だ。サビ止め剤を吹いておくのも効果的だが、サビが発生しているところに吹いても意味はないので、しっかりとサビを落としてから吹くのが鉄則であることを覚えておこう。
 また、サビが発生しやすい箇所をよく知っているのが修理工場。日々多くのクルマを整備しているだけに、サビやすいポイントや進行の程度を熟知しているからである。良心的な工場であれば、ひとこと言っておけばオイル交換や定期点検のついでにサビのチェックもしてくれるはずだ。
 鉄の酸化によるサビは放置しておいても直ることはない。さらに水分が侵入するとどんどん悪化してしまうので、なるべくサビさせないことが大切なのである。

ボディのサビ対策あの手この手

水切りゴムの劣化をチェック
紫外線や熱など経年劣化によりウインドーの水切りゴムが機能を果たさなくなると、水が侵入しサビの原因となってしまう。要チェックポイントだ。
水抜き穴を定期的に清掃
雨などの水分を逃がす水抜き穴にホコリやゴミが詰まってしまうと水が抜けなくなってしまう。割り箸などを使って定期的に清掃しておこう。
ドアの内張りからサビを防ぐ
ドアの内張りや下回りなどにサビ止め剤を吹いておくのも有効な手段。内張りのシールをしっかりと装着することもサビ予防においては重要だ。
サビてしまったら早急に対処
ボディはサビさせないことが大切なのだが、もしサビてしまった場合、早急にサビを落としてタッチペンなどで補修するか、板金塗装をしておくこと。

<<< オイル編 >>>

酸化によるオイルの劣化は作動部に大きな悪影響を与える

 エンジンオイルやブレーキフルードなどクルマには多くの作動油が使われており、これらのオイルは熱や酸化によって劣化していくのが主とされている。ここではエンジンオイルとブレーキフルードの劣化がクルマにどのような影響を与えるのかを解説していきたい。
 劣化したエンジンオイルを使い続けると摺動部が摩滅し、クランクシャフトやピストンにキズが付いてしまったり、ひどいと破損してしまいエンジンに致命的なダメージを与えてしまう。また、ゴムシールへのダメージも大きくなることから寿命を縮め、結果的にオイル漏れを引き起こす要因となる。
 安全に走る上で重要なブレーキフルードは吸湿性と沸点が高いのが特長。じつはここが重要なポイントで、劣化したフルードは湿気を吸収し、水が混入したような状態になる。そうなると沸点が下がり、ブレーキ使用時に発生する熱により気泡が生じてしまうのだ。これがベーパーロック現象で、ブレーキが利かなくなるという想像もしたくないトラブルを引き起こす。また、ブレーキの構成部品であるキャリパーやピストンなどには鋳鉄を使用しているため、ここに水が侵入するとサビが発生し、ブレーキに悪影響を及ぼす。これもいわゆる酸化によるものである。
 これらを防ぐためにもオイルは定期的に交換する必要がある。エンジンオイルは走行5000km、ブレーキフルードは1年または2年を目安に交換しておくことが一番の対策だ。

ブレーキの金属パイプに水が侵入するとサビが発生し、キャリパーやピストンに悪影響を与える。キャリパーのオーバーホールも重要なメンテ。
エンジンオイルには様々なブランドがあるが、基本的に規定の粘度さえ守れば、どのオイルを選んでもエンジンが壊れるようなことはない。

ブレーキフルードは絶対に混ぜないこと

 ブレーキフルードは透き通っていれば問題ないが、真っ黒な状態なら交換が必要な時期。ブレーキフルードは足しながら抜くのが基本で、全部抜いてしまうとエアが入ってしまうので注意。また絶対に混ぜずに、ブランド、規格は同じものを使うのがベストだ。

漏れていない限りフルードの量が減ることはない。漏れがないのに減っているならパッドとローターの交換時期だと覚えておこう。

<<< 電気編 >>>

ターミナル部が腐食すると電気の流れが悪くなる

 酸化によるダメージは電気の流れにも悪影響を及ぼす。クルマのボディは全体がマイナスの配線となっており、オルタネーターで発生した電気はバッテリーに蓄えられプラスの配線から様々な作動部に送られて仕事をした後、ボディを経由して戻ってくるというのが流れ。まず大事なのがオルタネーターの出口である電気の源流となる部分。このターミナルが酸化などにより腐食していると100%の電気が流れなくなってしまう。また、エンジンルームを開けると数多くのアース線が接続されているのが分かる。このアース線はボディのあらゆるところに直接接続されるため、ここも腐食すると抵抗が増えて回路に正常な電気が流れなくなり、ライトが暗くなるなどのトラブルが発生する。
 これらの対策としては電気の入り口であるオルタネーターのターミナル部分、各機器とボディ、ボディとバッテリーのマイナス端子を接続しているターミナル部分を目の細かいサンドペーパーでキレイに磨いてやることで電気の流れはかなり改善される。作業をする際には必ずバッテリーのマイナス端子を外すこと。ショートしてしまったら電気系パーツなどに多大なダメージを与えてしまうので注意が必要だ。
 費用をかけてあれこれアーシングをする前に、まずは元からある電気の流れを良くすることが大切だ。電気の正常な流れは、クルマの調子に関わる重要な部分なのでしっかりと対処しておきたい。

ターミナル部分を磨く際には必ずバッテリーのマイナス端子を外すこと。これをやっておかないとショートして電気系統を壊してしまうことも。
ターミナルはなるべく目の細かいサンドペーパーを使って磨く。たったこれだけのことでも電気の流れはかなり改善される。

接点復活剤を使ってはいけないところも

 ターミナルをキレイに磨いたら接点復活剤を吹いておくと効果が高い。ただし、デスビキャップやローターの金属ポイントに使うのはNG。両者のポイントはスパークすることで電気が流れる仕組みになっており、物理的には接触していないので、かるく清掃すればOKだ。

電気系メンテに有効な接点復活剤。こうした小さな手入れでも愛車の健康は保たれる。作業は難しくないのでDIYビギナーでもできるメニューだ。