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見えない劣化を数値化する足回り診断機 ボッシュのSDL(サービス・ダイアグノーシス・ライン)

足回りの劣化は体感によって気づくことが多いため、異音や振動などが発生するタイミングでメンテナンスを行なうことがほとんど。修理工場でも目視での点検が基本なのだが、ここで紹介するボッシュ製の足回りテスター「SDL(サービス・ダイアグノーシス・ライン)は、足回りの劣化を数値化できる画期的なテスターなのである。

高度なセンサーによってストローク量などを的確に診断

足回りの劣化は目視やテスト走行、そして症状など総合的な視点から点検して原因を特定する。それに加えて新たな点検メニューとなっているのが、ボッシュ製の足回り診断テスター「SDL(サービス・ダイアグノーシス・ライン」だ。

 これまでのショックアブソーバーの点検では、乗り心地やフィーリングといった体感と、オイル漏れの有無など目視によって診断されている。SDLは、ショックアブソーバーの状態を具体的な数値やグラフで示すことによって、目に見えないショックの劣化を分かりやすくした点検システムなのである。

 SDLは専用の点検ラインにクルマを通して、足回りのコンディションを診断する。ショックアブソーバーテストでは、タイヤが接地した状態で細かな上下運動を行ない、高度なセンサーによってストローク量などを計測。タイヤと路面の吸着率などがコンピュータに送られて処理される仕組みだ。左右の減衰力の差も数値やグラフで表示されるので、例えばフロントの右側だけが劣化しているといった状況もチェックできる。

 ショックアブソーバーの役割は、金属製のスプリングに乗っているボディが跳ね続けないように抑制すること。ショックが劣化すると段差を乗り越えたときに揺れが収まらなかったり、コーナリング時の安定性が低下するなどの症状が出る。もっと簡単に言えば、乗り心地が悪い、クルマ酔いをするなどといった状況になった場合、前後左右、どのショックが劣化しているのかを特定できる凄い点検マシンなのである。

赤の板がショックアブソーバーの点検を行なう部分で、細かな上下動とセンサーで計測する。

ローラーが付いているのがブレーキテスター。制動力やローターの真円度を測定する。

目視や体感での診断が主だった足回りの点検を分かりやすく

数値化した画期的なテスター

 エアサスペンションを搭載しているクルマではエア漏れが気になるが、油圧式ショックよりも劣化の状況が分かりやすいという。メルセデス・ベンツではコンピュータ診断機でエアサスを点検することが可能で、電気的にアクチュエータを作動させて点検する。

 一方、SDLではアクチュエータを作動させずにチェックするといった違いがある。SDLは体感では分かりにくい軽微な劣化でも診断できるので、エアサスの状態、走りのフィーリングがいつもと違うといった感覚的な症状でも数値化できるのが魅力だ。さらに、ショックアブソーバーテストと併せて、ブレーキの制動力テストも行なえる。同じライン上にあるのでセットで実施され、ブレーキの制動力が車検の基準値にあるのか、ローターの真円度を計測して引きづりがないかなどを点検できる。このブレーキの診断にも注目で走行パターンの違いによる診断も可能。

 SDLによる診断結果は、メカニックが丁寧に説明してくれる。数値やグラフが示す意味を分かりやすく解説してくれるので、メカが苦手な人でも理解を深めることができるはずだ。診断データは持ち帰ることができるので、今後のメンテナンス計画を立てる上でも非常に役に立つ。

 また、注意したいのはアライメントが狂っていると、ショックテスターでは正確な診断ができない。そのため、アライメントが規定値になっていることが前提となる。事実、走行フィーリングが悪化する原因としてアライメントが狂っているケースは多い。その判断は、やはりメカニックの知識が必要になる部分である。

ショックアブソーバーはオイル漏れなどにより劣化していく。これまでの点検では目視や体感によって判断していたが、SDLがあれば見えない劣化具合を数値化することができる。

モニターに車両情報を入力して点検を行なう。社外のショックでも測定は可能だ。

ブレーキテストでは、左右のバランスを点検できるほか、ローターの劣化もチェック可能。