W124ファンなら見逃せない走行3.3万kmのE280リミテッド
素敵な人は多いのに魅力が長続きしない。何十年も憧れをもって眺めていられる人が少ない。皆同じように見えてしまう……と某雑誌で語っていた某大御所俳優は無類のクルマ好きだった。中でもE500(W124)が大好きだという。基本的に2~3年でクルマを乗り替えてきたが、なぜかE500は長く乗り続けていたという。「芝居もクルマも、作り手のこだわりが大切」との言葉が今でも強く印象に残っている。
昨今どれも同じように見えてしまうクルマが多い中で、これほど長く愛され続けるW124の魅力とはいったい何だろうか。
その一つを挙げるならば、乗り手が設計者の思想やこだわりを感じることでモノ作りの原点を味わえること。ベテランユーザーならご存知のように、W124は設計段階から長く乗り続けることを前提として作られている。そのため消耗品を定期的に交換したり、機械的に壊れた部分を直せばまた元の快適な状態によみがえる。そして、10年、10万㎞時点では交換することのなかった部品が、やがて20万㎞、30万㎞と走行していくにつれて重要な部分も劣化してくる。部品を交換せざるを得なくなる。生産終了から26年以上が経過した今なお純正部品が供給されるメーカーは少ないが、メルセデス・ベンツなどのドイツ車メーカーは今でも部品を供給してくれるのである。それでも生産終了となった部品があるのも事実だが、そこはサードパーティが代替パーツを供給してくれている。これはメルセデス・ベンツが世界的に人気があるクルマであることが理由のひとつだろう。ビジネスになるからこそ部品を生産し、販売してくれるのだ。
我々ユーザーにとっては、こうした維持の環境が整っていることで、絶版名車たちを長く維持することができる。
一方、昨今の電化製品のような使い捨てのハイテクカーは、設計の段階から長く乗ることを前提としていない。壊れたら買い替える。極端に言えば、長く乗られては困るというスタンスで作られていると言える。単なるウインカーの球切れでさえもバンパーを取り外さなければ交換できない構造や、さらに機械的な故障よりもプログラミングの故障が厄介な場合も多い。
W124には、部品を交換するために必要な作業スペースを設けているのをご存知だろうか。整備のプロであれば知っていて当たり前なのかもしれないが、プロペラシャフトのベアリングマウントやデフのオーバーホールなどの作業を見ていると、実に理にかなった作りになっているのが分かる。26年経って初めてその意味を知った時は、改めて設計者の深いこだわりに感動すら覚えてしまった。「ハイテク&ローメンテカー」とは真逆の発想、こだわりである。
そう考えていくと、修理することを前提としているW124など往年のドイツ車だからこそ、確実に修理、メンテナンスしてくれる専門工場の存在も重要となる。今回取材したE280リミテッドは、W124専門店であるアイディングが自信を持ってメンテナンスしてくれるというから安心だ。旧車を強制的に排除するよりも、使い捨てを見直し森林火災を減らせばCO2の削減にも繋がる。メンテナンスしながら長く乗り続けることこそが、地球に優しいエコだと言える。