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日本に現存する最古のGに見る ルーツと本質的な魅力 1979y Mercedes-Benz 240GD

メルセデス・ベンツGクラスの本質を深く知るために取材したのが初期型の240GD。日本に正規輸入される前のモデルで、日本に現存する最古のGとも言えるだろう。軍用車としての作りや雰囲気を色濃く残す初期型を眺めながらそのルーツを辿ってみる。

日本に正規輸入される前の初期型240GD

 オーナーがこの240GDと出会うきっかけとなったのが、ドイツ人の知り合いからの連絡。それはドイツ、シュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館所蔵の車両が売りに出されるという話だった。しかも以前より探していたW460の赤いカブリオレだったのである。

 オーナーの古くからの友人でもあり、現地でW460/461を専門で扱っている部品商からの連絡をもらったのはコロナが世界を席巻して1年経った2021年3月のこと。その月の末に車両を博物館から友人が引き取ったのだが、日本に送るに際して現オーナーは3つの要望を出した。まず、引き取った車両に付いていたハードトップを売却して純正の幌にすること。フロントシートが当時のオリジナルではないレカロが入っていたため、当時の廉価版のシートに戻すこと。そして、タイヤは日本で手に入らない軍用車専用のコンチネンタルタイヤにしてもらうことだった。こうして、シッピングの準備が整い日本の通関を経て、ガス検を受け、最終整備後、昨年の夏に晴れてナンバー取得となったのだ。この240GDはW460がワールドデビューした年に生まれた車両であるが、同型のゲレンデヴァーゲンが日本に正規輸入されたのがそれから3年後の1982年なので、日本では空白の年式となっていた。無論、後年に並行輸入という手はあったが、筆者自身、1982年以前に製造されたゲレンデを見たことがなかったことと、古くから国内においてGクラスを扱っているショップで空白期の年式の表記をしたGクラスを見たこともない。なので少々乱暴かもしれないが、あえて日本で現存する最古のゲレンデとあえて謳わせていただいた。

 話が逸れたが、この初期のゲレンデを正規の1982年式と比べてみると、いろいろなところが、少しずつ違う所に気がつくのである。そこで当コーナーでは現在まで続くGクラスのルーツを眺めながら、初期の車両にのみ見られる作りと、日本に正規輸入されてからのモデルとの作りの違いを比較してみたいと思う。

当初フロントシートに装着されていたレカロを外し、あえて当時のオリジナルシートにしてもらった。だがそれもチェック柄の破れがある布製だったため、現在のオーナーが今の状態に変更している。

左側Aピラーの付け根下、運転席ドア前に位置するところにある「シュタイヤー・ダイムラー・プフ」のプレート。金属製の彫り込みがあるが、初期型以降はステッカーのみに変更。現在では、とても希少なオーナメントである。

各部に軍用車の雰囲気を残すエクステリア。駆動系はコンソールにあるレバーで副変速機を切り替えるパートタイム式4WDを搭載する。現在、ショートボディのカブリオレはとても希少な存在であり、ボディや塗装のコンディションも抜群である。

なかなか当時の幌でコンディションの良い純正品を見つけるのが難しくなっているが、ドイツの友人がコンディションに優れた幌を探してくれたとのこと。

ラジエターの固定方法を見ると初期型は両脇よりエンジンルーム内につっかえ棒のようなバーでの固定に対し、その後はコアサポート上に2つのステーでの固定方法となる。こんなところにも違いがある。

 

比べて見ると大きく違う! 年式による構造の変化

 240GDと300GDを比較してみた。上から、雨どいの下側の形状の違い、ブリンカーランプの台座のゴムの厚み、ピントルフックの形状、ボンネットを開けた際に風などで倒れないようにするストッパーバーの有無。ドラッグリンク部の径の違い、さらには動力伝達の要であるプロペラシャフトのジョイント部のボルト数の違いなどが分かってくる。誌面スペースの都合で載せ切れなかったものとしては、ウィンドーウォッシャーのスイッチ。現在のようにワイパーレバー内にまだその機能がなかったため、足元ペダルの一番左端の奥に黒い金属製の足踏みスイッチとして置かれていたりする。マスターシリンダーから出ているブレーキオイルのラインも、初期はゴム製なのに対してその後は金属製のラインに変更されるなど、デビューして世に出てはみたものの、実際に使ってみて改良を繰り返してきたのかと想像させるところに、市販の四輪駆動車としての先駆け的な役割が見て取れるのである。

240GD

 

300GD

初期の作りがあってこそ完成度が高い今がある

空白の年式と言われる初期モデルの240GDと日本に正規輸入された後の300GDの各部を比較してみた。上の写真の中で注目なのが、ドラッグリンクの径。実際に計測してみると、1979年式が43mmに対して、1982年式は48mmと頑丈な作り。プロペラシャフトのフランジで止めるボルト数も異なっている。デビューから数年の間に改良が続けられてきたのだと想像できる。

市販四輪駆動車としての改良の軌跡が見て取れる

この240GDのオーナーはあくまでも普段使いとして乗っており、快適なゲレンデライフを満喫している。飾っておくのではなく実用車なのである。

リヤタイヤのマウントバーを開いた後、リヤパネルを下げることでリヤドアが開く仕組み。