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デジタルVSアナログ チューニング手法と効果を比較する!Part.01【デジタル編】

デジタル世代とアナログ世代ではエンジンの制御が異なることから、チューニングの方法も変わってきている。両者を比較しながらその効果と手法について比較してみたいと思う。まずはデジタル世代に有効なECUチューニングについて解説しよう。

ECUチューニングとは、電子制御燃料噴射装置のクルマにおいて、燃料の噴射量やタイミングを変更し、ノーマル以上のパワーやエンジンレスポンス引き上げるメソッドのこと。燃料の噴射量やタイミングを変更するには、ECUのマッピングの書き換えが必要だ。そのアプローチはインジェクションの種類などによっても異なり、古い電子制御ならメインECUに備わるロムを付け替える方法が主流となる。90年代の後半からはメインECUに外部パソコンからアクセスし、データの上書き的な手法も可能になっている。コンピュータ診断用のプラグが備わったことで、メインECUにパソコンでアクセスできるようになったため、マッピングの変更作業自体はデジタル世代の方が容易になっている。

 ECUチューニングでパワーアップが可能な理由をごく簡単に説明すると、ノーマルデータよりも多く(または長く)燃料を噴射するようにプログラミングを変更するというもの。ノーマルマッピングの安全マージン部分で燃料を多く噴射したり、燃費や排気ガス性能を向上させるために燃料を絞っていた部分で増量させてパワーアップを実現している。

ECUチューニングのキモとなるのはマップの矯正

エンジンには全く手を付けずに効率的にパワーアップ

燃料噴射量の決定には一定の方程式があり、エンジンの回転数やアクセルの開度などによって設定されたマップと呼ばれるデータに補正を加えながら調整している。ECUチューニングはこのマップの数値を意図的に変更。ノーマルのセッティングには必ず安全マージンがあるので、それを若干引き出すことで燃焼効率を高めパワーアップや燃費向上を実現しているのだ。データの書き換えだけなのでエンジンには全く手を付けない。

 
 

専用のECUを搭載しているチューニングカーでもパワーを引き出せる

スペシャルモデルでも更なるパワーアップが期待できる

メルセデスのAMGやBMWのMシリーズはノーマルでも高性能を誇る。こうしたデジタル世代のスペシャルモデルはECUにも手が加えられており、専用のセッティングがなされているのだ。それだけECUをいじることは手軽なパワーアップ法なのである。では、これ以上のパワーアップは望めないかというと、そうではない。市販車である以上必ず安全マージンがあるので、マップをいじることで更なるパワーアップが期待できるのだ。

 

 このECUチューニングのメリットは、セッティング自体に大きなハズレが出にくいということだ。サーキット専用車のチューニングと異なり、パワーアップと引き替えに実用性や快適性を犠牲にしたくはないはず。具体的な例を挙げれば、エアコンもちゃんと利いて欲しいだろう。となれば当然アイドルアップも必要になる。加えてABSやESPなどの安全装備がしっかり働いてくれなければならないし、CAN通信であらゆる電装品がリンクしているクルマなら、それらも正常に動かなければならない。チューニングによってECUトラブルに発展しかねない不安要素も、ノーマルのECUベースとすれば回避しやすくなる。そのためには、ノーマルのECUデータをキッチリと解析した後に、パワーアップが可能なデータを作ることが重要で、これを行なえば信頼性の高いチューニングメソッドとなる。反面、ノーマルのECU解析が完全に行なわれていなければパワーアップの望みが薄いだけでなく、先に述べた快適性や安全性に問題が生じる可能性が高くなる。多くの電装品がECUと複雑にリンクしているデジタル世代ほど、ノーマルのECU解析が非常に重要となっている。乱数の組み合わせからなるデータをいかに解読するかが、最新のECUチューニングではキモになるのだ。

 古いECUと新しいECUの違いは、情報量と処理速度の差というパソコンなどと全く同じもの。そのためデジタル世代ほど幅広いチューニングが可能で、センサーの数が多ければ多いほど、チューニングが可能な範囲も増える。また、デジタル世代ほど入念なエミッション対策が施されているので、とくに低中回転域ではパワーを引き出しやすい傾向にある。つまり、燃費と排気ガス対策のために、低中回転域ではかなり燃料を絞る傾向にあるのがデジタル世代のトレンドなのだ。このあたりの燃料マネージメントを見直せば、さほど燃費を悪化させることなくパワーアップも可能になる。

 ちなみに、古いノーマルECUベースのチューニングでは、ロムデータのハンダ付け不良やメインECU自体の不良などが不安要素となるので、この手のモデルが得意なショップに依頼するのが無難だ。また、ノーマルECU自体の処理速度が遅いことや、マッピング自体も緻密ではないため、パワーアップの限界点は比較的低い。よりパワーを求めてインジェクターの容量やカム交換などを行なうと、再びマッピングを書き換えることになる。

 これは新旧問わずだが、ノーマル以上のパワーをどれだけ求めるのかを最初に決めておかないと、マッピングの書き換え、つまり燃料のセッティングをやり直さなければならない必要に迫られるので注意したい。

 

 

代表的な手法は2つ。OBDポートなどメンテナンス用のコネクターにPCを繋ぐやり方と、ECUを外してデータを書き換える方法だ。

純正のECUは様々な走行条件に対応するために安全マージンが多めに取られている。それを少しだけ引き出してやるのがECUチューンなのだ。