前モデルの930に対して
大きく進化した964
Porsche 911Carrera2 Cabriolet
(964)1994y
ここ数年で、空冷エンジンを積む、いわゆる空冷ポルシェを取り巻く環境は大きく変わった。為替の影響で海外へ輸出されることが増え、その結果中古車の数が減少し、相場も大きく跳ね上がったのだ。今ではその「911バブル」も落ち着きを見せているのだが、実際に空冷ポルシェを探すとなると、なかなか良い個体が少ないという話も聞く。
そんな中で出会ったのが、神奈川県横浜市にあるズームカーコレクションで販売されていたポルシェ911カレラ2カブリオレである。911シリーズとしては3代目にあたるモデルで、その型式から964と呼ばれることが多い。
89年のデビュー時は4WDのカレラ4のみだった964。その後カレラ2が登場しているが、当時は話題になった。そんな964だが、見た目こそひとつ前の930に似ているものの、その中身は大きな進化を遂げている。サスペンションにコイルスプリングが使われるようになったことで、走らせても、930のように大きめな入力でトーションバーの反発感を感じることはない。ボディの剛性感を感じさせるしっかりとした乗り心地と安定感を両立させた、実に完成度の高いサスペンションになった。
初代ナロー時代のスポルトマチック以来となる、2ペダルの911が用意されたのも964における進化ポイント。ティプトロニックはMTモード付きのATの走りというだけでなく、3.6ℓの豊かなトルクが、トルコンの存在を感じさせないほどレスポンスのいい動きで、楽しませてくれる。もちろんMTでブリッピングすれば、空冷フラット6独特の鋭い反応でドライバーを喜ばせてくれる。
エアコンやパワーステアリングなど快適装備も充実しており、現代でも十分に使える性能を備えている。ズームカーコレクションで販売されているカブリオレのトップは電動式で、リアスクリーンはビニール製だ。
930の重いステアリングとマニュアルミッションを駆使しながら走るのは味わい深く楽しいけれど、ティプトロニックやパワーステアリングなどの快適装備を搭載することで、誰にでも乗れる空冷ポルシェというポジションにいるのが964。それでいて、ルックスは初代のナローに通じる伝統が踏襲されていることも、964の大きな魅力と言える。
メカニズム面では、エンジンマネージメントがLジェトロやKジェトロからモトロニックへと変わったことで、緻密な燃料制御が可能になった。これにより、気温や湿度などの影響を受けることなく、いかなる条件下でも安定した始動性とアイドリング、さらには加減速を可能にしている。これが乗りやすさに繋がっていることは言うまでもない。
ポルシェは堅牢なメカニズムを最高の品質で作り上げることで、独自の価値観を生み出している。RRという特異なレイアウトも、ポルシェの高い技術があってこそ実現し、維持できている。ポルシェ911はスポーツカーとして見ても特別なクルマなのである。
撮影した94年式のカレラ2カブリオレは、前オーナーの手によってきっちりと仕上げられた個体だ。エンジン、エアコン、AT、幌など費用がかかる部分に徹底的に手が入っている。新車当時からの記録簿やこれまで行なってきたメンテナンスの詳細まで残っているのだ。こうした資料はクルマのコンディションを把握するためだけではなく、今後のメンテナンスプランを立てる上でも非常に役に立つ。記録が残っているクルマが少ない中で、この個体は「素性が分かるクルマ」なのである。
中古車の数が減ってしまった今ではこうしたクルマに出会える機会は少ない。中古車は一点モノであり、一期一会。964を探しているなら、一度実車を見に行ってほしい。
このクルマを販売していたズームカーコレクションは、趣味人の秘密基地のようなところだ。壁面にはアレックスモールトンがあったり、オシャレなバイクも目に入ってくる。もちろんショールームには、趣味濃度が高いクルマばかりが鎮座。マルニことBMW2002も在庫していた。
クルマの仕入れは、前オーナーが大切に維持してきたクルマのみを扱い、きっちりと仕上げてから店頭に並べる。ショールームの裏には屋根付きの保管場所があるから、クルマが傷むことなく良い状態を維持できるのである。
このように、一般的な中古車販売店ではなく、男の趣味心をくすぐるものばかりに囲まれた空間となっているズームカーコレクション。そのため、週末などはたくさんのユーザーが集まってくるそうだ。趣味人にとって居心地の良い空間というだけではなく、代表の駒田氏の人柄も多くのユーザーに支持されている。
そんな中で出会ったのが、神奈川県横浜市にあるズームカーコレクションで販売されていたポルシェ911カレラ2カブリオレである。911シリーズとしては3代目にあたるモデルで、その型式から964と呼ばれることが多い。
89年のデビュー時は4WDのカレラ4のみだった964。その後カレラ2が登場しているが、当時は話題になった。そんな964だが、見た目こそひとつ前の930に似ているものの、その中身は大きな進化を遂げている。サスペンションにコイルスプリングが使われるようになったことで、走らせても、930のように大きめな入力でトーションバーの反発感を感じることはない。ボディの剛性感を感じさせるしっかりとした乗り心地と安定感を両立させた、実に完成度の高いサスペンションになった。
初代ナロー時代のスポルトマチック以来となる、2ペダルの911が用意されたのも964における進化ポイント。ティプトロニックはMTモード付きのATの走りというだけでなく、3.6ℓの豊かなトルクが、トルコンの存在を感じさせないほどレスポンスのいい動きで、楽しませてくれる。もちろんMTでブリッピングすれば、空冷フラット6独特の鋭い反応でドライバーを喜ばせてくれる。
エアコンやパワーステアリングなど快適装備も充実しており、現代でも十分に使える性能を備えている。ズームカーコレクションで販売されているカブリオレのトップは電動式で、リアスクリーンはビニール製だ。
930の重いステアリングとマニュアルミッションを駆使しながら走るのは味わい深く楽しいけれど、ティプトロニックやパワーステアリングなどの快適装備を搭載することで、誰にでも乗れる空冷ポルシェというポジションにいるのが964。それでいて、ルックスは初代のナローに通じる伝統が踏襲されていることも、964の大きな魅力と言える。
メカニズム面では、エンジンマネージメントがLジェトロやKジェトロからモトロニックへと変わったことで、緻密な燃料制御が可能になった。これにより、気温や湿度などの影響を受けることなく、いかなる条件下でも安定した始動性とアイドリング、さらには加減速を可能にしている。これが乗りやすさに繋がっていることは言うまでもない。
ポルシェは堅牢なメカニズムを最高の品質で作り上げることで、独自の価値観を生み出している。RRという特異なレイアウトも、ポルシェの高い技術があってこそ実現し、維持できている。ポルシェ911はスポーツカーとして見ても特別なクルマなのである。
撮影した94年式のカレラ2カブリオレは、前オーナーの手によってきっちりと仕上げられた個体だ。エンジン、エアコン、AT、幌など費用がかかる部分に徹底的に手が入っている。新車当時からの記録簿やこれまで行なってきたメンテナンスの詳細まで残っているのだ。こうした資料はクルマのコンディションを把握するためだけではなく、今後のメンテナンスプランを立てる上でも非常に役に立つ。記録が残っているクルマが少ない中で、この個体は「素性が分かるクルマ」なのである。
中古車の数が減ってしまった今ではこうしたクルマに出会える機会は少ない。中古車は一点モノであり、一期一会。964を探しているなら、一度実車を見に行ってほしい。
このクルマを販売していたズームカーコレクションは、趣味人の秘密基地のようなところだ。壁面にはアレックスモールトンがあったり、オシャレなバイクも目に入ってくる。もちろんショールームには、趣味濃度が高いクルマばかりが鎮座。マルニことBMW2002も在庫していた。
クルマの仕入れは、前オーナーが大切に維持してきたクルマのみを扱い、きっちりと仕上げてから店頭に並べる。ショールームの裏には屋根付きの保管場所があるから、クルマが傷むことなく良い状態を維持できるのである。
このように、一般的な中古車販売店ではなく、男の趣味心をくすぐるものばかりに囲まれた空間となっているズームカーコレクション。そのため、週末などはたくさんのユーザーが集まってくるそうだ。趣味人にとって居心地の良い空間というだけではなく、代表の駒田氏の人柄も多くのユーザーに支持されている。
インテリアデザインの基本的なコンセプトは一つ前の930とあまり変わらない。91年モデルからエアバッグが標準装備されている。リアシートは一応あるが、大人2名の長時間の移動は厳しい。フロントシートには電動調整機能が備わっている。
エンジンはこれまでの911に比べやや高い位置に搭載。4WDを設定するために必要な手段であり、弱点だった高速での安定性をカレラ4で克服している。
930は完全なるモノコックボディでなかったのに対し、964では930と同じアウターパネルを利用しながらも、フロアとバルクヘッドが互いに応力を分散させながら受け持つフルモノコック構造を採用。そのため、カブリオレやタルガなどのオープンボディの剛性も高いレベルにある。取材車の幌は新品に交換済み。
2ペダルMTであるティプトロニックを初めて採用したのがType964。これにより多くのポルシェビギナーたちを取り入れることに成功した。930まではクーラーがあったが、964ではエアコンを搭載。そのほかにもパワーステアリングを装備して快適性が大きく向上している。
男の趣味心をくすぐる
秘密基地のような空間
ズームカーコレクション
ズームカーコレクションのショールームは趣味人のための空間。壁面にはアレックスモールトンが飾られ販売している。店頭に並ぶクルマも趣味心を刺激するものばかり。見ているだけで時間を忘れてしまいそうなほど居心地がいい。ズームカーコレクション代表の駒田氏は、クルマだけではなく、バイクや自転車、さらにはビリヤードまで愛好する趣味人である。