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【German Neo Classics / vol.03】1989y BMW 635CSi(E24)理想のスタイルをとことん追求。この時代だからこそ生まれたデザイン

「世界一美しいクーペ」と呼ばれたE24型初代6シリーズ。燃費や効率ばかりを求める現代とは違って理想のスタイルにこだわって作られたモデルだ。今でも振り返ってしまうほどの魅力があることが、本物の証である。

 

「世界一美しいクーペ」と呼ばれた

初代6シリーズ

BMW 635CSi

(E24)1989y 

デザインからメカニズムまで

どこを見ても感動が止まらない

 初代6シリーズのエクステリアは、「世界一美しいクーペ」と呼ばれたほど、理想のスタイルをとことん追求してデザインされているのが特徴。燃費や効率だけを重視して作る現代では、絶対に描けないデザインだ。低いトランクデッキを持つワイド&ローの姿には、空力や燃費などを気にせず理想のスタイリングを追求した、割り切りの美学を感じる。
 工業製品のデザインは、機能を前提に考えられる。クルマのコンセプトや設計された性能を発揮することが最優先だからだ。もちろん、予算だってある。デザイナーたちはそんな中でせめぎ合いながら、最終的には妥協の産物として決定される。
 だがE24は、なぜこんなにも美しいのか。このクルマのデザインを担当したのは、フランス人のポール・ブラック。ダイムラー・ベンツに所属していたこともありタテ目のメルセデスのデザインを担当している。BMWに移ってからは、5シリーズ(E12)、3シリーズ(E21)、7シリーズ(E23)、そして6シリーズ(E24)を描き、逆スラントノーズ、小ぶりなキドニーグリル、丸目のヘッドライトという、当時のBMWフェイスを完成させた。
 E24の柔らかなラインを見ていると、タテ目のメルセデスに通じるものがあると思うのは筆者だけだろうか。いずれにしても、妥協の産物であるはずの工業デザインの範疇で、今もなお美しく感じてしまうのは奇跡とも言える。現代ほど燃費や効率にうるさくない時代だったからこそ生まれたデザインなのだ。
 では、E24のモデルライフを振り返ってみよう。76年にデビューし、633CSiの導入が開始される。84年にはマイナーチェンジを実施してバンパー形状やエンジンが変更され、635CSiチェンジ。さらに87年にマイナーチェンジして大型のウレタンバンパーが装着された。この87年から最終の89年までが後期型とされている。
 エクステリアを見ると、初期モデルはメッキのドアミラーやバンパーを装着して全体的に細い線で構成されていたが、安全対策から末期には大型のウレタンバンパーとなりボリューム感を増している。
 インテリアは、ダッシュボードが階段状の二段構造になっていて、空調の吹き出し口が奥の方にあるのが特徴的。でも基本的にはこの時代のBMWに共通のテイストでまとめられていて、奇抜さはない。パワーシートがやたら細かく調整できたり、後期モデルではリアシート専用のエアコンシステムが搭載される(クーペなのに!?)など、装飾より実用的な装備を重視しているのがドイツ車らしいところ。クーペなのでリアシートはそれほど広くはないが、セパレートされていて飛行機のファーストクラスのような贅沢さ。当時の7シリーズにも引けを取らない高級な作りになっている。
 メカニズム面では、ブレーキサーボがエンジンの負圧ではなくアキュームレータに溜めたガス圧で作動するなど凝った作り。エンジンは、BMWファンならご存知のビッグシックスこと直6SOHCが搭載されている。このエンジンは、繊細で驚異的な滑らかさを誇ったことからシルキーシックスと呼ばれるようになった。今でも直6を積むBMW代名詞となっているほど、メカニカルな魅力に溢れている。デザイン同様に、このシルキーシックスの感動を現代のクルマに求めることは難しい。
 この個性的でネオクラシックの醍醐味を強烈に味わえるE24の中古車は、年々少なくなっている。だが、じっくりと探せばコンディションの良い個体に巡り合うこともあるのだ。今回撮影した89年式の635CSiがまさにそう。このクルマは、神奈川県横浜市にある趣味車専門店「ズームカーコレクション」で販売されていたもので約5年ほど前で248万円(税込)のプライスとなっていた。 装着されているパーツを見ていくと、Mテクニックのステアリング、前席にレカロシート、ステンレス製のタコ足、マフラー、足回りはビルシュタインでH&Rのスプリングでローダウンしてある。足元にはカロマット、リアにはBOSEのスピーカーが鎮座している。さらに窓枠やグリル回りをブラックアウトしてあり、精悍な印象になっているのもこのクルマの特徴だ。80年代のクルマらしいカスタマイズが施された1台なのである。
 そんな懐かしいアイテムに加えて、美しいデザイン、そしてビッグシックスの味わい深いフィーリングを味わえるのは、中古車が減ってきた今だからこそ贅沢なクルマ趣味と言える。

センターコンソールがドライバー側にオフセットされた、当時のBMWらしいデザインが採用されている。ステアリングはMテクニックに変更してある。トランスミッションは電子制御式の4速タイプ。本国にマニュアルがあったが、日本には導入されなかった。シートはレカロに変更してある。高いサポート性を持つ優れものである。リアシートはセパレートされていて、後席用のエアコンまで装備。フロアマットはカロで、インテリア全体を見ても良いコンディションを保っている。
ズームカーコレクションで販売されているこの635CSiには、ステンレスのマフラーやタコ足など、当時らしいカスタマイズが施されている。足回りはフロントがストラット、リアがセミトレーリングという当時のBMWに共通する仕様だ。
 
【SHOP DATA】

ズームカーコレクション

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