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【 U (アンダー) 50万円万円の激安ドイツ車はどこまで楽しめる?】実際に販売されている中古車を徹底的にチェック! / GERMAN CARS アーカイブ/2015年10月号より抜粋

現状販売ということで、30万円という激安プライスが付いている04年式318iツーリング。そのまま乗れるのか? それともメンテナンスが必要なのか? 整備費用はどれくらいかかるのか? など、激安BMWの真実に迫る!ちなみに記事はすべて2015年10月号からの抜粋なので、中古車の相場や「現行型」「先代」などの表記はすべて2015年当時のものとご承知おきいただきたい。

 

SAMPLE CAR BMW318iツーリング(E46)

現状販売30万円!!

BMW専門修理工場「ポールポジション」では自社で整備を施した中古車を販売しており、今回サンプルカーとして選んだのも同社で販売されている04年式318iツーリング(E46)である。取材時は入庫したばかりということもあり、現状販売なら30万円とのこと。そのまま乗り続けられるのか、それともメンテが必要なのか

 

「安さの理由」を知れば
狙うべきクルマが見えてくる!

 「200万円以下のドイツ車」を検証してきたが、それならば、いわゆる激安ゾーンの価格帯となる50万円以下のドイツ車はどうなんだろう。実は対象となるクルマさえしっかり選べばハッピーなカーライフを送ることができるのだ。
 まず知っておきたいのは、50万円という安さの理由である。新車で1000万円もするクルマが20年落ちとなって、走行距離も15万㎞を超えていれば、誰が見てもちょっと危ないな、と思うはず。そもそも、中古車市場は需要と供給のバランスで成り立っている。「価格が高い=コンディションが良い」というわけではないし、安くてもきっちりとメンテナンスされたクルマであれば安心して乗り続けることができる。
 ただし、中古車は一台一台コンディションが異なるので、個別に見極めるのは不可能に近い。そこで狙い目となるのが、中古車の人気として少し旬を過ぎた頃のクルマ。先に書いたように中古車は買い手の需要と売り手の供給のみで成り立っているから、需要が下がって流通過多になり、値落ちが進んだようなクルマがオイシイのである。もっと言うなら、メルセデスSクラスやBMW7シリーズのような上級クラスではなく、比較的構造がシンプルなベーシックグレードであれば最高だろう。
 今回サンプルとして選んだのは、04年式BMW318iツーリングだ。E46型と言われるこのクルマは11年落ちで、走行距離は7.6万㎞。BMW専門修理工場「ポールポジション」で販売されているクルマで、現状販売なら30万円という激安プライスだった。ちなみに現状販売というのは、文字通り仕入れた状態のままでの販売されている車両のこと。そのため整備や点検などは一切されていない。もし、はじめてのドイツ車として激安ドイツ車を選ぶなら、最低限の点検と整備はしておきたいところ。現状販売で売られていても、点検や整備を依頼することが可能な場合が多いので相談してみることが大事。逆に、中古の輸入車に乗った経験があるなら、メンテナンスしながら少しずつ仕上げていくという手もアリだ。
 ここでは30万円のBMWが、どんなコンディションで、今後どんなメンテナンスが必要になるのかを検証するため、あえて現状販売の車両をチョイスしている。
 取材当日、撮影場所にクルマを停めてぐるっとエクステリアを眺めてみる。デザインもまだまだ古さを感じないし、一般的な感覚で見たら、とても30万円には見えないと思う。もちろん、BMWのブランド力があってこそ、だと思うが、ツーリングであることもオシャレなイメージを感じさせる。あえて、ネガティブな部分を探すとすればボディに小キズがあり、ドアハンドルやボディサイドの樹脂パーツには経年劣化が見られる。だが、30万円だと割り切るなら、さほど気になるレベルではないと思う。200万円の中古車であれば絶対にNGだが、やはり価格とコンディションのバランスを考えることも、激安ドイツ車を選ぶ上で重要になる。それに、ボディや樹脂パーツは磨いたり、ケミカルを使ってメンテナンスすれば想像以上にキレイになる。

取り回ししやすいボディサイズ。ステーションワゴンとして考えるとカーゴルームは狭いので、セダン+αとして使うのが正解だ。
アルミホイールに小キズがあったが、30万円という車両価格を考えれば気にするレベルではない。タイヤは7分山なのでまだまだ使える。E46型ツーリングはリアウインドーが独立して開くので、荷物を出し入れするのにとても便利だ。
インパネ回りはシンプルながら質感にこだわったデザインを採用。国産車のような取ってつけたような装飾がないのが好印象。ステアリングやセンターコンソールには経年劣化が見られるが、このような状態になっている中古車は多い。
ATは電子制御式5速ATで、ステップトロニック付き。マニュアルモードにするとダイレクトな変速が楽しめる。シフトモードの+が下、マイナズが上になっているのは後期型から。ミッションに不具合はなく、そのまわりにあるパワーウインドーも正常に作動。灰皿のフタの部分に小キズが多いのはE46のお約束。
3シリーズがベースなので室内はコンパクト。ツートンのファブリックシートには汚れが目立つが、シート洗浄をすればキレイになるので問題はないだろう。
 
 室内に備わる快適装備はエアコンを含めて正常に作動。取材当日は35℃を超える猛暑だったが、エアコン全開の室内はとても快適だった。
 そしてもっとも重視するべきなのが、機関面のコンディション。このクルマはポールポジションで整備されてきたのでその履歴が残っており、いつ、どんな整備がされているかが確認できた。直近の整備では、経年劣化で割れることが多いラジエターのリザーバタンク、ゴムホース類などの水回り系、フューエルフィルター、ホースなどの燃料系、オイル漏れしやすいオイルフィルターエレメントのガスケット、足回りではロアアームブッシュなどが交換されていた。
 実際に試乗してみると走りに違和感はなく、バルブトロニック付きの4ユニットは軽快に回ってくれる。ハンドリングも素直で、パワーやスピードではないドライビングの楽しさを実感させてくれるのだ。これぞ、BMWが追求する駆け抜ける歓びなのだろう。このクルマは専用のサスペンションを装備するMスポーツではないので、乗り心地はとてもマイルド。ショックアブソーバーを交換すれば、より快適な走りが楽しめると思う。3シリーズツーリングのリアサスは、一般的な金属スプリングとショックの組み合わせ。エアサス搭載モデルに比べて維持しやすいのもメリットだ。
 このコンディションであれば、現状で乗り続けてもとくに問題はないように感じた。車検が半年残っているので、少なくてもそれまでは現状のまま乗れるのでは? と思えるコンディションだった。
ワゴンとはいえ、ボディサイズはコンパクト。軽快に回る直4エンジンと素直なハンドリングと相まって、ドライビングする楽しみを味わえる。ロアアームブッシュの交換など足回りにも手が入っている。
 

コンディションチェック!

気になったのは内装の状態
でも、解決方法はある!

318iツーリングのコンディションで気になったのは、前オーナーが社外ナビを取り付けた時のビス穴やドアパネルの劣化。内装部品は高価なので新品に交換すると費用は高くつくが、中古のダッシュボードや部分修理などを活用すれば安く修理できる。こうした方法が確立されているのもドイツ車のメリット。
 

Specifications 04年式318iツーリング

全長 : 4480㎜
全幅 : 1740㎜
全高 : 1435㎜
ホイールベース : 2725㎜
トレッド(前) : 1470㎜
トレッド(後) : 1480㎜
車両重量 : 1430㎏
エンジン方式 : 直4DOHC
総排気量 : 1955㏄
最高出力 : 143ps/6000rpm
最大トルク : 20.4㎏-m/3750rpm
トランスミッション : 電子制御式5速AT

 

BMW専門修理工場
「ポールポジション」で聞いた

今後メンテナンスが必要な部分

内外装に経年劣化が見られるものの、機関面や走りにおいては快調だと思われる今回の取材車両。では、プロのメカニックはどんな判断を下すのか。クルマ全体を点検してもらい、今後必要になるメンテナンスを洗い出してもらった。

SAMPLE CARの点検結果

メンテナンスが必要なのは基本的な消耗品

●エンジンオイル
●オイルフィルターエレメント
●ブレーキフルード
●パワステフルード
●ヘッドカバーガスケット
●スパークプラグ
●ソレノイドバルブのOリング
●バキュームポンプ
●オイルパンガスケット
●ATF
●ATFフィルター
●ATオイルパンガスケット
●ACマイクロフィルター
●フューエルポンプ
●ワイパーブレード
●バッテリー

ブレーキフルードなどの油脂類の交換は、乗り出し整備でやっておきたい部分。ヘッドカバーガスケットやバキュームポンプからのオイル漏れも定番なので、漏れがひどいようなら早めに対処しよう。オイル漏れは新たなトラブルの原因になるケースもあるので、修理工場でも早めの交換を勧めている。
 

「コツコツとメンテ」と「まとめて仕上げ」
どちらを選ぶかは乗り方次第

 11年落ち、走行7.66万㎞である04年式のBMW318iツーリング。内外装には年式なりの劣化が見られたが、機関面については問題なさそうな雰囲気。そこで、BMW専門修理工場ポールポジションで、このクルマを点検してもらい、今後メンテナンスが必要になる部分を洗い出してもらうと、その多くは右下にあるように基本的な消耗品がほとんどだった。
 まずは基本的なメンテナンスであるエンジンオイル、ブレーキフルード、パワステフルードなどのオイル交換、プラグ、ワイパー、バッテリーなども乗り出し整備としては手を入れておきたい部分だと言える。
 オイル漏れ関係ではヘッドカバーガスケットからにじみが出ていたこともあって早めに手を入れるべきという判断に。さらにブレーキの負圧を作るバキュームポンプはこのエンジンのウィークポイント。通常は部品交換となるが、ポールポジションではポンプを分解して劣化したOリングのみを交換してくれるから、費用を抑えられる。バキュームポンプを交換するのには手間がかかるが、オーバーホールで直してくれるのは嬉しい。バノスのソレノイドバルブからのオイル漏れも定番。こちらはOリングのみで部品が出る。
 さらに信頼性を高めるという意味で、フューエルポンプも交換しておきたいところ。ATについては、変速不良やショックもないので機能としては問題ないと思われるが、ATFとフィルターの交換を勧めている。ATを長持ちさせるためには欠かせないメンテナンスだと言える。
 じつは、ここでピックアップした項目のほとんどは、ポールポジションで販売する中古車に納車整備として実施している内容。これを受けるか、受けないかはユーザー次第だが、良いコンディションで乗るためには、最低限必要な内容である。
 代表の伊藤氏によると「今回撮影したクルマは、当店でメンテナンスしてきたので履歴が残っています。何をいつ交換したかが把握できるとメンテナンス計画も立てやすい。現状で乗り続けても大きなトラブルはないと思いますが、ここで挙げたメンテナンスをすることでより信頼性が高まります。安心を選んでまとめて仕上げるか、このコンディションであればコツコツとメンテナンスしながら乗るのもアリです。ユーザーさんの乗り方に合わせて提案しています」とのこと。
 価格は激安であっても素性の良いクルマを選べば、一般的な中古車と変わらず維持できるということだ。

激安ドイツ車の乗り方/まとめ

経年劣化は避けられないので
ある程度の整備予算は必要

メンテナンスを前提に設計されているドイツ車は、車両価格が300万円であっても定期的な手入れが必要。激安な良質車の多くは年式的にも10年落ちくらいが多いから、どんなにコンディションが良くても経年劣化は避けられない。やはり、ある程度の整備予算は用意しておく必要がある。ここで挙げてもらった整備を全て行なうと約20万円。車両代が30万円だから、乗り出し50万円で安心できるなら、決して高くはない。

 

※全て GERMAN CARS 2015年10月号より抜粋。
相場や「現行型」「先代」などの表記は
全て2015年当時のもの