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BMW PORCHE クーペ

2023.09.10

【 GERMAN SPECIAL CARS!! vol.03 至福の時間を特別なクルマで。/ 大排気量で スペシャルなGTカーの世界。ビッグクーペの誘惑 】

下手なセダン顔負けの大柄なボディに、あり余るパワーを誇る大排気量エンジン。それをたった二人のためにしか使わないビッグクーペは、決して経済的な乗り物と言うことはできないだろう。だがしかし、そんな無駄こそが贅沢であり、スペシャルであり、ビッグクーペ最大の魅力でもある。他のジャンルのクルマでは絶対に味わえない独自の世界を見ていこう。

 

無駄という名の贅沢がもたらす独自の世界

 誤解を恐れずに言えば、クーペというジャンルのクルマの本質は「無駄」にあると言って良いだろう。
 止めればセダンやワゴンと変わらないスペースを占有するのに、乗車できるのは2名+アルファ。ラゲッジの容量もワゴンとは比べるまでもないし、走らせれば排気量なりの燃料を消費する。クーペだからと言って、他のジャンルのクルマより消耗部品が長持ちすることもなければ、クルマ自体の耐久性が特別高いわけでもない。2枚しかないドアは大きいばかりで、リアシートに荷物を置くのだって苦労してしまう。つまるところ、クーペとは実に無駄の多い乗り物なのである。しかしながら、その「無駄」こそが贅沢なのであり、スペシャルなクーペの魅力とは考えられないだろうか?
 クルマを単なる移動の手段、物を運ぶ道具と考えたら、それこそ660㏄の軽自動車で大抵のことは十分こと足りる。仮にそれで不満が出たとしても、2リッターのセダンであればまず問題はないだろう。だからこそ世の中には2リッタークラスのセダン、ワゴン、ミニバンが溢れているのだろうが、その一方でクルマは趣味性の強いツールであるし、オーナーの個性を表現するアイテムでもある。必要最低限である理由はどこにもなければ、そもそも人間は本能として贅沢を楽しいと考える生き物だ。クーペの「無駄とも受け取れる贅沢」に魅力を感じたとしても、決しておかしなことではない。いや、どんなジャンルのクルマより無駄が多いからこそ、背徳がもたらすエクスタシーとでも言うべきか、むしろ惹かれてしまうのである。
 そんな贅沢の極みとも言えるのが、本稿で取り上げるビッグクーペだろう。そこいらのセダンなんかよりも大柄なボディなのに、二人しか快適に座れないタイトなキャビン。搭載されるV8オーバーの大排気量エンジンは、決して軽くないボディを軽快に加速させてもなお余る大パワーを誇るものの、税金や保険、燃費面での負担も決して小さくはない。
 まさに無駄だらけではあるけれど、居住性をあまり意識せずサイズを大胆に生かした「流麗なスタイリング」や、二人だけのための「豪華で濃密なインテリア」、右足にほんの少し力を入れるだけで、シーンによっては「スポーツカーをも追い回せる動力性能」は、ビッグクーペでしか味わえない独特の贅沢。何物にも代えがたい魅力と言えるだろう。
 ハイオクガソリンの価格がリッター当たり200円に到達するこのご時世だが、そもそもが無駄の極致。昔、流行した某芸人のネタのように「でも、そんなの関係ねえ」と一蹴するだけの魅力が、ビッグクーペには確かに存在する。そして、それはさまざまな犠牲を払ってでも手に入れたいほど、僕らを誘惑してくる存在なのである。