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【 ドイツ車世代別メンテ / 高齢世代 (新車から21年以上) / vol.05 ワイパーに発生するトラブルと解決方法 】

高齢世代になってくるとワイパーの不良が目立ってくる。動作がおかしかったり、間欠機能が使えなかったりと安全に走行する上でも支障をきたす症状が多いので、きっちりとメンテしておかないと突然の雨で走行できなくなることもある。

 

モノワイパー内部のギアが経年劣化で
砕けて粉々になってしまうことが多い

 

Parts Data

✔このパーツの役割は?

フロントウインドーの視界を確保

 雨や雪などがフロントウインドーに付着したときでも視界を確保する装備がワイパー。ドイツ車の多くは2本アームのクルマが多いが、角目世代のメルセデスでは1本アームのモノワイパーを装着するクルマもある。1本でもフロントウインドーの86%を拭き取る性能を持つ。

✔壊れるとどんな症状が出る?

 ワイパーが壊れると、間欠機能が使えなくなったり、ワイパーが何かに引っかかっているような動きをする。リレーなどの電気的な不良と、ギアなどの機械的な不良の2つの原因がある。

✔長持ちの秘訣は?

異常な動きをしたら早めに点検する

電気的な不良が原因である場合、突然動かなくなることがあるので予兆を掴むのは難しい。機械的な不良が原因である場合は、異常な動きをすることがあるので早めに点検することが大事。モノワイパーの場合は、定期的にスライド部分に注油することも大切なメンテだ。

 

異常な動きや間欠機能が
使えなくなるのが主な症状

 車齢21年以上の高齢世代のドイツ車では、これまで手を入れてこなかった部分のメンテナンスが必要になってくる。ここで紹介するワイパーもその一つ。まさかワイパーが壊れるとは想像しにくいと思うが、実際に作動不良が発生しているのだ。
 ご存知のように、ワイパーは雨が降っているときにフロントウインドーの視界を確保する装備。モーターとギアを使ったシンプルな構造ながら、安全に走行するためには欠かせない重要な部分である。突然、トラブルが発生すれば走行できなくなる可能性もあるので、きっちりとメンテナンスをしておく必要があるのだ。
 ワイパーにトラブルが起きたときの症状として多いのは、ワイパーが異常な動きをしたり、間欠機能が使えなくなるなど。原因として考えられるのは、電気的な不良と機械的な不良の2つがある。電気的な不良として多いのがワイパーリレーやコントロールユニットで、内部にある基板のハンダ部分にクラックが入ってしまうことが多い。コントロールユニットがダメになった場合は、ワイパーだけではなく、他の部分にも不具合が現れやすい。
 機械的な原因としては、ワイパーを作動させるギアが劣化して破損してしまうのがお約束のパターン。ワイパーが何かに引っかかっているような動きをした場合は、ギアの不良である可能性が高い。また、ワイパーを固定するボルトが何らかの理由で緩んでしまい動きがおかしくなることもある。
 対処方法としては基本的に新品か中古を使って交換するしかないが、角目世代のメルセデス・ベンツの一部に装着されるモノアームワイパーは分解整備が可能だ。
 多くのドイツ車は2本アームのワイパーが主流だが、角目世代のメルセデスの中には1本アームのモノワイパーを装着しているクルマがある。例えば、W124こと初代EクラスやW201こと190シリーズがそうだ。構造的には非常に凝った作りになっていて、フロントガラスの中央からワイパーアームが伸び縮みすることでフロントガラスの大部分を拭き取り、視野を確保する。1本アームでもフロントガラスの86%を拭き取る優れたワイパーなのである。
 それだけ凝った作りになっているがゆえに、トラブルが起きて新品交換となると約15万円の費用が必要になる。だが、分解修理ならリーズナブルに直すことが可能だ。
 ワイパーユニットの内部には、回転するギアとアングルを介してスライドクランク運動をする部位がある。ワイパーが途中で止まりそうになる場合はスライド部のグリース切れであることが多く、ここは分解して注油すれば復活する。モーターは回るが全く作動しないときは、ギアが破損している可能性が高い。実際に内部を見てみると、ギアが欠けて粉々になっていることが多く、これでは正常に動くはずもない。その場合は分解して、中古品のギアを使って修理するのが一般的だが、現在では程度のいい部品が減ってきているようだ。W201とW124では基本的な構造は同じなのだが、ギア部分を流用するには若干の加工が必要になる。あるショップではこの部分のギアを新品にすることが可能なので、詳しくは左下の囲み記事を参考にしてほしい。

写真中央にあるブラックのボックスがワイパーリレー。間欠機能などを制御しているユニットだ。電気な不良である場合はこれが怪しい。
ワイパーリレー内部を見てみると、基板部分にクラックが入っているのを確認できた。ここにハンダを盛り直してやると復活することもある。
角目世代のメルセデスに採用されているモノアームワイパー。アナログな機構だが、フロントウインドーの大部分を1本のアームで拭き取る。
アームの上下運動など複雑な動きを実現するリンケージ部分。頑丈な作りになっているので、この部分がダメになるケースは少ない。
 

ワイパーリレーの不良も
多く発生している

 電気的な不良によるトラブルはモノワイパーにおいても同様だ。やはりワイパーリレーが原因であり、基本的にはリレーを新品に交換すればOK。だが、内部にある基板のハンダ部分にクラックが入ることによりトラブルが起きるケースが多いため、クラックの箇所が特定できればそこにハンダを盛ることで簡単に直すことができる。リレーを抜き取るときに強い力で左右に揺すると、ハンダにクラックが入ってしまうことがあるので、DIYで直すときはなかなか抜けなくても慎重に作業しよう。
 モノワイパーの修理においては、中古ASSYで交換するというチョイスもある。分解修理か中古品かというのは予算に応じて検討するべきだが、中古品も同じような環境で使われてきたものなので、トラブルが再発するリスクが高いということは認識しておく必要がある。
 ワイパーのギアがダメになる原因は経年劣化なので、残念ながらこれといった予防策はない。雨が突然降ってきたときに壊れてしまうと事故にも繋がるトラブルなので、動きに違和感を感じたら早めに点検することと、定期的にスライド部分に注油するなどのメンテナンスが必要。ギアが破損した状態で使い続ければ、あまり壊れないモーターが焼きついてしまうことも考えられる。ワイパーの分解修理はそれほど費用がかかるわけではないので、今まで一度も手を入れていなければ、予防整備をしておくのがもっとも安心だろう。
 また、全てのドイツ車に共通するワイパーのお手入れとしては、ワイパーブレードの清掃がある。ドイツ車の純正ワイパーブレードは国産車と比較すると高く、ワゴンなど前後3本を交換すると8000円近くなるクルマもある。これを少しでも長く使うためにはワイパーブレードをマメに水拭きしておくことが大事。これをやっておくと、ウォッシャー液を使ったときのガラスへのキズも最小限に抑えることができる。アームを持ち上げて清掃するときは、アームが曲がらないように丁寧に作業することも重要なポイントだ。

モノワイパーのトラブルでもっとも多いのがギアの破損。グリースが切れて粉々になっていることがほとんどだ。
アーム側にも小さなギアがあるが、ここがダメになるケースは少ない。もちろん、オーバーホール時には全体的な点検を行なうのが基本。
モノワイパーにトラブルが起きる原因で多いのはギア部分がほとんどで、モーターが焼きついて動かなくなることは少ない。
ワイパーの脱着作業についてはそれほど難しいものではない。中古ASSYを使って修理するときは程度を重視して慎重に選ぼう。