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【 ドイツ車世代別メンテ / 高齢世代 (新車から21年以上) / vol.04 トラブル回避!! カーエアコンを全体的に見直す 】

クルマが古くなると、どうしてもトラブルが多くなるのがカーエアコン。修理したと思ったら、また違うところが壊れたり、毎年ガスを足しながら使っているケースも少なくない。こんな状態を打破するためにも、一度全体的に見直すことが大切だ。

 

故障によって発生した金属片や
正しい値に戻ったガス圧が連鎖の原因に!?

 

Parts Data

✔このパーツの役割は?

冷媒ガスを圧縮して液化する

 エンジンの動力を利用して、冷媒ガスを圧縮して液化する装置がコンプレッサー。このガスが再び気化する時に周囲の熱を奪う性質を利用して、エバポレーターと呼ばれる熱交換器を冷やすのがエアコンシステムの基本的なメカニズム。家庭用のエアコンと基本は同じである。

✔壊れるとどんな症状が出る?

 電気式のマグネットクラッチを使ってエンジンの動力を伝えたり切ったりしているコンプレッサー。劣化すると作動中に大きな振動や異音が出たり、最悪の場合は焼き付いてロックする。

✔長持ちの秘訣は?

オイルとガスの量を正しく

 冷媒ガスと共に循環しているオイルがコンプレッサーの内部を磨耗から守っている。オイルが漏れて減ってしまった場合には、適量を充填してやることが大切。またガスの量が足りない状態で作動させるのもコンプレッサーに大きな負担となるため、ガスの量にも注意して。

 

コンプレッサーが壊れたら
配管内の丁寧な洗浄が大切

 輸入車ユーザーにとって、カーエアコンは鬼門の一つ。長く乗っている人なら、何度も悩まされたことがあるのではないかと思う。基本的な構造は家庭用のエアコンと何も変わるところはなく、違いはモーターで動かしているコンプレッサーがエンジンの動力によって駆動されていることくらいのもの。なのにどうして故障が多いのかと言えば、やはりエンジンルームの熱と走行による振動によって劣化が進むというのが主な原因だ。しかし家庭用のエアコンだって、20年も経てば壊れて取り替えられることの方が多いわけで、この世代となれば手を入れるのはある意味当たり前のことでもある。
 そんなカーエアコンに定番のトラブルといえば、コンプレッサーの不良。ガタが出て作動すると大きな振動が発生する、焼き付いて動かなくなってしまう、などパターンは色々とあるが、共通しているのはオイルやガスが不足しているという点だろう。エアコンの冷媒ラインの中には、ガスに混じってオイルも循環している。エンジンのように専用のオイルパンを持たないエアコンのコンプレッサーは、このオイルによって内部を潤滑しているのだ。通常、コンプレッサーに充填される形で供給されるこのオイル、コンプレッサーを新品に交換した時には新しくなると考えていい。しかし普段はオイルの量をチェックすることも、劣化具合を調べることもない。オイルが漏れて減ってしまえば、潤滑が不十分になり振動や故障が発生しやすくなる。
 一方のガスにも注意が必要で、補充する時に空気などの不純物が混ざってしまうと、ガスの量が不足しているにも関わらず、ガスの圧力だけが上がってしまう。多くのガスチャージは圧力を見てガスを補充しているため、実際にはガスが足りていないのに圧力が上がったことでガス量はOKと判断してしまい、ガス不足での運転がコンプレッサーの寿命を縮めてしまっているのだ。こういった原因によってコンプレッサー内部の磨耗が進み、振動が出るようになると、修理工場でコンプレッサーを交換する。ところがこの時、磨耗した古いコンプレッサー内部から出た金属の切子といった異物は、長いエアコンの配管の中を回っている。これを十分に取り除いてやらないと、せっかく交換した新しいコンプレッサーが、すぐにダメになってしまうかもしれない。完全に壊れてロックしてしまった場合などは、さらに大きな金属片などが冷媒ラインに回っている可能性が高くなる。
 また正しい修理によって元気にコンプレッサーが動き出した場合には、キッチリと充填されたガスが正しい圧力まで圧縮されて高圧ホースの内部に満たされるようになるため、劣化したシール類が耐えられなくなってガス漏れが起きるというケースも少なくない。これは冷却系にもありがちなパターンだが、全体が劣化したなりのバランスで保たれているところに一部分だけを新しくすると、他のところが耐えられず次々と壊れてしまうというトラブルの連鎖が発生しやすいのである。

システム内にガスをチャージするための器具。高圧側と低圧側の2つの圧力ゲージが付いているが、冷媒の量を測定することはできない。

メルセデス・ベンツの車体に張られている冷媒量を示すステッカー。システム全体で750gのR134aガスを充填するように指示している。
冷媒ラインの内部から出てきた金属の切子などの異物。このような汚れが溜まってくると、コンプレッサーにもトラブルが出やすくなる。
 

エアコン故障の原因は
冷媒系以外にも色々とある

 こんなパターンで故障が起きる度にエアコンガスを大気中に撒き散らして、毎回新しくチャージしているのでは環境に対しても財布に対しても最悪。ガス漏れやコンプレッサーのトラブルによって冷媒系統を外す場合には、エアコンシステム全体を点検して、経過年数的に劣化が進んでいるであろう部分には手を入れておくべき。高圧&低圧ホースや、エキスパンションバルブは消耗品だし、ドライレシーバーは冷媒系統を外して内部が空気に触れた場合は必ず新品に交換するように指定されている部品でもある。
 エアコンがいきなり効かなくなったという場合、冷媒系統ではなく制御系に問題があるケースも多い。21世紀のドイツ車はエバポレーターからのガス漏れも滅多なことでは起こさなくなり、冷媒系のトラブルは減少傾向。これから先は制御ユニットやリレーなどの故障をまず疑う方がよくなりそうだが、古いモデルでも意外に見落としがちなのがサーミスタと呼ばれる凍結防止装置。エバポレータが凍り付いて破損するのを防ぐために取り付けられている半導体式の温度センサーで、温度が下がり過ぎると安全のためシステムの作動を止めるようになっている。このセンサーの調子が悪くてエアコンが動かないということもあるので、いきなり冷媒系のトラブルを疑わず、色々とチェックしてみることが大切。他にもヒーターとエバポレータからの風を調整するフラップが動かなくなっていたり、風を送り出すブロアーファン自体が動いていないというパターンもある。
 大きな修理工場の場合は自社で直してしまうところもあるが、エアコンの修理は板金塗装のように「電装ショップ」と呼ばれる自動車の電機の専門店に出されることも多い。あまり一般ユーザーを相手にしないため目立たない場所にあってぶっきらぼうなお店が多いのは難点だが、電装ショップに直接持ち込めば修理工場に払う中間マージンをカットできるのはメリット。また古いクルマでは純正部品の入手に時間がかかったり非常に高価だったりするエアコンのホース類は、オーダーで製作してくれる業者もあるので信頼性の高い国産のホースを使って作ってしまうという手もある。エアコンは知恵を使って効率的に、一気に直してしまおう。

作動中のエキスパンションバルブ周辺は、結露などによって絶えず濡れた状態になっている。この水分も部品を劣化させる原因の一つ。
コンプレッサーの内部では、まるで小さなエンジンのようなピストンが往復運動をして冷媒ガスを圧縮している。当然、潤滑は大切。
メルセデス・ベンツ用のサーミスタ。エバポレータユニットの横から刺さるように取り付けられている。これの不良にも注意が必要。
システム内の冷媒ガスとオイルをすべて回収して、指定した量を再び充填するためのシステム。エアコンの健康を保つには一番だ。
回収したオイルと再充填に使用するためのオイルのタンク。12AとR134aでは使用するオイルも異なるため、タンクが複数付いている。
 

OEM?or社外品?
失敗しないパーツの選び方

エアコン関係には社外部品が少ない

エバポレータが真鍮製で定番の要交換部品だった頃はともかく、現在ではエアコン関係の部品はさほど需要が高くないため、あまりOEMや社外品が多くはない。メルセデス・ベンツやBMWなどメジャーなモデルではエキスパンションバルブ程度は探せるが、価格的なメリットはあまりないので保証の付く純正品の方がいいだろう。一方、非常に高価なのが低圧&高圧ホースで、これはよほどの覚悟がないと純正部品を使うのは躊躇してしまう。そんな時は、国産のエアコンホースを使ってオーダーで作ってしまった方が割安で信頼性も高いというケースが少なくない。エアコンガスは超高圧であるため特殊なカシメが必要になるが、作り自体は単なるホースなので心配は無用。ガス漏れによってホースの交換が必要になった場合は、専門店に相談してみるといいだろう。

オーダーによって国産のホースを使用してワンオフで製作したエアコンホース類。様々な太さがある。取材したショップは重機用の油圧ホースなども生産する耐圧ホースの専門家だった。
かつては劣化によって穴が開くのが定番だったエバポレータだが、現在は耐久性が高くなりあまり聞かないトラブルとなった。