予兆なく壊れてしまうことが多いので
予備パーツを持っておくと安心感が高い
Parts Data
このパーツの役割は?
エンジン制御に必要な情報をモニター
クランク角センサーはクランクの位置をモニターし点火タイミングに使用する情報を得ている。エアマスセンサーは空気の流入量、オーツーセンサーは排気中の酸素濃度、水温センサーは文字通り水温を監視している。いずれもクルマを正常に走らせるために重要な役割を持つ。
壊れるとどんな症状が出る?
突然エンストしたり、エンジンがかからなくなったり、ハンチングなどエンジン不調の原因になりやすい。オーツーセンサーがダメになると、燃料を多く噴射するため燃費が急激に悪化する。
長持ちの秘訣は?
定期的にコンピュータ診断を受ける
センサーは突然寿命を迎えてダメになってしまうことが多いので、現状を把握しておくことがポイントになる。コンピュータ診断を受けるとセンサーの状態をチェックできるので、定期的に受けておきたい。突発的なトラブルについては予備パーツを積んでおくことで対処したい。
センサーは目的によって
構造が大きく異なる
電子制御化が進み様々な快適装備を満載するようになった現代の自動車には、色々なセンサーが使用されている。センサーはその目的によって様々な構造を持っているが、大きく分けると抵抗値の変化によって電圧を変えて情報を送るものと、自ら電気を発生するものに分けられる。
若年世代のドイツ車では、クランク角センサー、エアマスセンサー、水温センサー、オーツーセンサーの不良によるトラブルが多い。
まずクランク角センサーは、クランクが現在どの位置にあるのかをモニターして、点火タイミングなどに使用する情報を得るためのセンサー。フライホイールのギア山の一部などに磁気を持たせ、その回転をホール素子と呼ばれるICで拾って波形にするもの。1~1.5Vという微弱な電圧のため、専用の回路でOFF=0VとON=5Vという信号に変換してからCPUに入力している。
メーカーを問わずクランク角センサーの不良によって突然エンジンがかからなくなるトラブルが多発しているので、交換履歴がハッキリしない中古車の場合はトラブル前に換えてしまうのも手だ。部品は高くても2万円程度なので、長距離ドライブが多いユーザーならば、出先でのトラブルで必要になるコストと比較すれば微々たる金額だろう。交換作業も決して難しいものではない。
同様にエアマスセンサーも消耗品と言っていい。これは、流入する空気の量を測定するセンサー。ホットワイヤー式は、温度によって抵抗値が変わる白金の特性を利用して、白金線に一定の電流を流して加熱し、流れ込む空気量の変化によってこれが冷まされ抵抗値が変化することで電圧の変動をモニターする構造。風が強くなると寒く感じる原理を利用したセンサーである。現在では耐久性を高めたホットフィルム式が主流になっている。
水温センサーは、温度によって抵抗値が変化する金属の特性を利用して、水温の変化を抵抗値に置き換えるもの。抵抗体としては白金が使用されている。温度が高くなると抵抗値が下がり、センサーからの電圧は上昇する。これを利用して水温計、冷間時の燃料増量噴射量、電動クーリングファンのコントロールなどを行なっている。これがダメになると燃料の噴射量や電動ファンが正常に作動しなくなり、エンジンが冷えている時に始動しにくいとか、水温計の表示は高いのに電動ファンが回らないなどの症状を引き起こす。
排気系に備わるオーツーセンサーは、エキゾーストマニホールド内部に試験管のような形状で飛び出してセットされている。ジルコニア素子の表面に白金をコーティングしたセンサーだ。センサーの裏側は空気に触れていて、両面の間で酸素濃度の差が大きいと電気を発生するため、排気中に酸素が少ない=燃料が多い燃焼状態だと1V程度の電気を発生する。ここでの情報を元に燃料の噴射量などを調整するため、フィードバック制御と呼ばれる。例えば、オーツーセンサーからの電気信号が途絶えた場合、エンジンは燃料が足りない状態で運転すると異常な高温になってしまい破損の恐れがあるため、燃料をどんどん濃くしてこれを防ぐ。オーツーセンサーが壊れると燃費が悪化するのはこのためだ。異常な信号が出たり信号が途切れた場合には、コンピュータが安全策を取るプログラムがされているのである。
交換履歴が分からない
センサーには予防整備を
センサーが使用される範囲はエンジン制御だけではなく、ABSを作動させるためのホイール回転センサーや、トラクションコントロールのためのヨーレートセンサー、ステアリングアングルセンサーといった高度なものにまで進化している。
昔はセンサーが正しく作動しているか電気テスターを片手に、センサー端子の抵抗値変化を測るというのが定番で、この時代には配線も一つ一つのセンサーに専用の線が引き回されていたから、ハーネスの色分けで配線図を見ながら辿るというやり方だった。だが、現在では診断コンピュータを介さないとセンサーのチェックは難しくなってきている。コントロール・エリア・ネットワーク・バス(CANバス)が搭載されたデジタル式の制御では、電線によってやり取りされるのは以前のような電流ではなく、信号化されたデータ電流。あくまで電気という形で送られていることに違いはないものの、大きな進化を遂げているのが分かる。
こうした仕組みを考えてみると、センサーは消耗品として考えるべきで、交換履歴が分からないセンサーについては予防整備として新品交換しておいたほうが安心だ。センサーの不具合は予兆もなく突然発生することが多いということも、その理由の一つ。エアマスセンサーは高価だが、クランク角センサー、水温センサー、オーツーセンサーは高いパーツではないので、消耗品と割り切って交換しておくことをお勧めする。
また、定期的にコンピュータ診断を受けておくことも大事。センサー類の不良は診断機で必ずモニターされるので、その状態を把握しておけば突然のエンジン不調などに悩まされる確率をグッと減らせるのだ。