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5シリーズ ALPINA BMW

2022.02.20

【走りの本能を刺激するスペシャルカーの世界 Vol.10/ALPINA B10 Bi-Turbo E34】超高性能サルーンとして用意されたアルピナのイメージリーダー

かつて世界最速のリムジンと言われたB7ターボはアルピナのイメージリーダーとして君臨してきたが、その後を継ぐ高性能サルーンとしてデビューしたのがB10 Bi-Turboである。名機ビッグシックスを極限までチューニングしツインターボ化。その強烈な加速力は多くのクルマ好きを魅了し続けている。

ALPINA
B10 Bi-Turbo E34

フロントではインタークーラーを収めるためにスポイラー中央に大きなエアダムがあるが、リアから見るとNAモデルとの違いはエンブレム以外に見当たらない。
 

異次元の世界へと誘う
強烈な加速力を持つ

 アルピナのイメージリーダーだったB7ターボの後を引き継ぐ超高性能サルーンとして用意されたのがB10 Bi-Turboである。
 ビッグシックスに組み合わされるタービンは、ギャレット製のT25をツインで装着。シングルターボより低い回転域から豊かなトルクが湧き出し、そのままトップエンドまで維持することによって無理のない高出力化を実現している。パワースペックもB7Sターボの330psさえも凌駕する370psと直6ユニットとしては強烈だが、その走りはまるで異次元の世界だ。
 ベースとなっているのが重量のあるE34のボディだけあって、走り始めの一転がりはゆったりとした感触だが、そこから一瞬にして豪快な力強さに満たされていくのである。ファイナルを極端に高めていることに加え、ツインターボ化やシャシーの強化でノンターボのB10 3.5よりさらに150㎏は重くなっていることも、この独特なフィールを生んでいるのだろう。強靱なボディによるカタマリ感と暴力的な加速は、このクルマだけが持つ強烈に個性的な乗り味。乗りやすく、恐ろしく速いというキャラクターはMTさえ操れれば誰でも乗りこなせるという反面、あまりにもあっけなく非日常的な速度まで加速していく様に空恐ろしさすら感じてしまう。
 強化されているクラッチも極端な重さではなく、ミートに気を使うこともない。ガッチリとしたペダルやシフトのフィールは、ドイツ車好きならば好感を持つに違いない。
 多くのカーマニアを釘付けにした最速のサルーンには、25%のリミテッドスリップデフとゲトラグ製の5速ミッションに加え、リアにはBOGE製のレベライザー付きショックアブソーバーが装備されている。
 メーターの下部には吸気圧や油温などを表示するデジタルコクピット・インジケーター、センターコンソールにはブースト圧をコントロール可能なツマミも用意し、見た目こそ派手ではないが、各所にはアルピナらしいスペシャル感が詰まっている。スピードメーターは320㎞/hまで刻まれているが、290㎞/hの最高速度を考えると、確かにアルピナの通常仕様である300㎞/hスケールでは不安がある。スーパーカー級の性能を備えた普通のサルーン。どこまでも通好みな一台だ。

アルピナだからこそできた
高性能のスーパーサルーン

 高性能のスーパーサルーンということもあって、維持に関してはやはりスーパーカー級。とくにアルピナ製の専用パーツを随所に用いたエンジンは部品代の高さに悩まされるだろう。例えばショック一式で約100万円だ。ただ、供給面に関しては今やノーマルE34よりよっぽど安心というのが、アルピナの素晴らしさでもある。そのあたりもアルピナがチューニングメーカーではなく、自動車メーカーであると言われる一端だろう。
 V8にツインターボを備えたB7 Bi-Turboも09年に登場しているが、電子デバイスを用いたハイパフォーマンスカーでは同じ速度で走っていても感動が薄い。当時のアルピナにしか作れなかったスーパーサルーンであり、それがたった507台しか存在しないこと、それがこのモデルの大きな魅力なのである。

ビッグシックスの排気量はそのままに、ギャレット製のT25タービンをツイン搭載したエンジンルーム。エキゾーストマニホールドは分厚いヒートシンクの下に収められている。

ドア内張りやステアリングコラム下などにも、天然のウッドを用いたパネルが配置されるインテリア。MTながらクルーズコントロールが装備されている。

シートは電動調整機能を持ったレカロ製。前後のスライドは手動となる。オプションで「アルピナハイドロレザー」と呼ばれる起毛人工皮革も選べた。
電気式のブーストコントローラーが備わる。中古車の中には、電気的に加工して最大ブーストに固定されているものもあるようだ。

Mechanism Topic

ビターボのエンジンルームは、アルピナの専用部品でギッチリと埋め尽くされている。スロットルへと繋がるインテークパイプは、高いブースト圧に耐えられるようジョイント部分も見るからに強化されているのが分かる。メーターの下にはインジケーターが備わっており、最大「1.8bar」と表示されるが、これはブースト圧ではなく吸気圧。ここから大気圧を引くとブースト圧になるわけだ。ちなみに、B10 Bi-Turboの最大ブーストは約0.7barで設計されている。
 
●主要諸元 B10 Bi-Turbo

全長 (mm) : 4720
全幅 (mm) : 1750
全高 (mm) : 1390
ホイールベース (mm) : 2765
トレッド 前/後 (mm) : 1480/1480
車両重量 (kg) : 1695
エンジン方式 : 直6SOHC+T×2
総排気量 (cc) : 3430
ボア×ストローク (mm) : 92.0×86.0
最高出力 (ps/rpm) : 370/6000

最大トルク (kg-m/rpm) : 53.0/4000
タイヤサイズ (前) : 235/45ZR17
       (後) : 265/40ZR17
新車時価格 (万円) : 1760