ALPINA B3S E46
ボディサイドにアルピナの象徴でもあるデコラインが備わるエクステリア。エアロパーツは控えめで、上品な印象を醸し出している。フィンタイプのアルミホイールやマフラーなどもアルピナ専用品となっている。
高い技術力で生み出される
繊細なフィーリング
アルピナはBMWからホワイトボディを供給され、独自のチューニングを加えながら手作業で作り上げるれっきとした自動車メーカーである。創業は1964年。レースへの参戦などを経て、自動車メーカーとして独立していくことになる。長い歴史を持つアルピナだけに時代によってクルマ作りは変わっているが、その高い技術力やノーマルのBMWにはない繊細なチューニングは強烈な個性を持っており、世代を問わず多くのファンが存在する。
ここで紹介するアルピナは、E36をさらに煮詰めたような進化を遂げ、非常に高い完成度を誇る4代目の3シリーズ（E46）がベース。E46は今なお高い人気をキープしているが、その中でも飛び切りのスペシャルなのがアルピナB3である。
歴代のモデル同様、BMWからホワイトボディの供給を受け、アルピナのファクトリーでほぼ手作りによって組み立てられているが、B3シリーズでは前期の3.3モデルで1299台という、従来のアルピナモデルよりはかなり多い生産台数となっている。ハンドリングと乗り心地のバランスは伝統通り非常に高いレベルで両立されていて、Mスポーツの路面追従性の悪さからくる非常に硬い乗り心地とは対照的に、しっかりと踏ん張りながらも上質感のある乗り味を実現。エンジンはメカニカルチューンによって全域で滑らかさと力強さをプラスし、いかにも精密機械のようなフィーリングに仕上がっている。
エンジンにはアルピナの
こだわりが詰まっている
そんなアルピナB3の後期モデルに用意されたのが、ここで紹介しているB3Sシリーズ。3299ccだった排気量はボアを86.4ミリから87ミリへと拡大することで3346ccへと拡大、限界まで削られたシリンダーの隣のピストンとの間隔はわずか３ミリしかない。この精巧な仕事を可能にするのがアルピナの高い工作技術と精度なのだ。排気系にも専用のタコ足が搭載され、排気効率を理想的なものに近づけている。
リムジン、ツーリング、カブリオレのボディバリエーションに、スイッチトロニック付きの5速ＡＴか6速のＭＴが選べたB3S。M3とは違った方向性でE46のもう一つの頂点として、今も絶大な人気を誇っている。比べることすら意味がないが、中古車のプライスもBMWの通常モデルの3倍近い300万円以上のプライスとなることも。それだけの人気を保っているということだろう。
現在では本当に珍しくなってしまった作り手の体温を感じるようなスペシャルモデルであり、熱狂的なファンを持つアルピナ。一台一台にナンバリングされるという特別感も手伝って、極めて廃車になる率が少なく、年数を経ても走行距離が多くても、驚くほど良好なコンディションに保たれているものが多い。所有することの価値をオーナーが良く理解していて、たゆまぬ愛情を注ぎ続けているという意味では、最も手入れの行き届いているドイツ車に違いないだろう。
そういった意味でもアルピナに乗るということは、そのクルマを良い状態に保つという責任を負うことであり、もちろん十二分にその価値があるクルマである。だからこそ、いつまでも現存しているのだ。
Mechanism Topic
●主要諸元 B3Sリムジン（2004y）
全幅 (mm) : 1740
全高 (mm) : 1395
ホイールベース (mm) : 2725
トレッド 前／後 (mm) : 1470/1475
車両重量 (kg) : 1480
エンジン方式 : 直6DOHC
総排気量 (cc) : 3346
ボア×ストローク (mm) : 87.0×93.8
最高出力 (ps/rpm) : 315/6300
最大トルク (kg-m/rpm) : 36.9/4800
タイヤサイズ (前) : 225/40R18
(後) : 255/35R18
トランスミッション : 5AT
