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3シリーズ BMW E30 M3

2022.02.07

【走りの本能を刺激するスペシャルカーの世界 Vol.05/BMW M3 (E30)】レーシングカー直系の血筋を持つ だわりの直4ユニットを搭載

ツーリングカー選手権に参戦するためのホモロゲーションモデルとして登場した初代M3。エクステリアは大きく張り出したブリスターフェンダーとエアロパーツによって武装されている。レーシングカー直系の血筋を持つMチューンのエンジンは現代のクルマにない刺激的なフィーリングを持っている。

 

BMW M3 (E30)

フロントとリアが大きく膨らんだブリスターフェンダーにトランクスポイラーを装着したレーシーなエクステリア。軽量であることも見逃せないポイントだ。サスペンションはフロントがストラット式、リアがセミトレーリングアーム式となる。
 

当時は市販車とは思えない
刺激的なクルマだった

 80年代を代表する名車と言っても過言ではないのが、初代M3。大きく張り出したブリスターフェンダーとエアロパーツを纏ったスタイルは、当時のクルマ好きたちを魅了。その頃日本ではF1などのモータースポーツが流行していたが、ドイツではモータースポーツへの参戦が文化として成り立っている。BMWはブランドのイメージアップを図るためのコマーシャルだけではなく、新技術を生み出すための場所としてレースを活用している。
 E30こと2代目3シリーズをベースに作られたM3もそんな背景から生まれた。ドイツツーリングカー選手権への参戦である。市販車をベースとしたグループAでは、年間5000台を生産し、かつ大幅な改造はできないなどのレギュレーションをクリアしなければならなかったため、ベース車両の素性の良さが求められた。それだけにM3はエクステリアからエンジンに至るまで、市販車とは思えないほど刺激的なクルマに仕上がっているのだ。
 まず目を引くのが、前後のフェンダーに大きな膨らみを持たせたブリスターフェンダー。そもそもはトレッドを拡大するための手段として採用されたデザインだったが、次第に高性能をアピールする手段へと変わっていった。空力性能を高めるエアロパーツと相まって、そのレーシーなスタイルは圧倒的な存在感を放っている。当時はこのスタイルにBMWファンが熱狂し、憧れを抱いた人も多かったはずだ。

名車M1に通じる
エンジンを搭載している

 エクステリアだけを見ても只者ではないクルマの雰囲気がビシビシと感じられるのだが、M3の本当の凄さはやはりエンジンにある。
 S14ユニットと呼ばれる2.3ℓの直4DOHCは、名車M1に搭載されたM88ユニットと同じボア×ストロークを持つ。M88ユニットはレーシングエンジンとして高い耐久性を持ち、何とポルシェ935に勝つために開発されたものだ。大量の空気を吸い込むために4バルブヘッドが与えられ、ストレート形状のインマニや排気効率に優れたエキマニ、各部のバランス取りによるスムーズな回転などにより官能的なフィールを生み出している。
 そのM88ユニットの魅力が詰まった4気筒版が、M3に搭載されているS14ユニットなのである。もちろん4気筒ならではの魅力も見逃せない。6気筒よりも軽いことは走行性能におけるメリットが大きく、BMWらしい軽快なハンドリングをより強く感じられる。もっと言えば、F2マシンに搭載されていたエンジンと基本的には同じで、さらにターボを装着してF1マシンに搭載されたエンジンと同じブロックを使っているのだ。そんなエンジンが市販車に搭載され、ナンバー付きで公道を走れることがすごい。全身から伝わってくるレーシングエンジンの鼓動を感じながら、クルマを操る楽しみはこの時代のM3だからこそより濃く残されているのだ。ちなみに、このS14ユニットはボディが次世代のE36型に進化した後もレースで使用され、タイトルを獲得するほど高いポテンシャルを秘めていたのだった。
 日本には2.3ℓ版のみが正規輸入されたが、2.5ℓに拡大したスポーツエボリューションも存在する。

高回転域まで鋭く回るDOHCの2.3ℓ直4ユニット。型式はS14だが、その中身は名車M1に搭載されたM88ユニットと同じボア×ストロークを持つ。レーシングカー直系のエンジンなのだ。
全体的にはシンプルな構成となるインテリア。センターコンソールがドライバー側を向く伝統のデザインを採用している。メーター、ステアリング、シフトノブなどはMの専用品を装着。
取材車のシートはオシャレなチェック柄で、サポート性に優れている。室内は適度な包まれ感があり、ドライバーは運転に集中できる。乗車定員は4名となっている。
大きく張り出した前後のブリスターフェンダーが、スペシャルな雰囲気を醸し出している。

Mechanism Topic

レースに勝つための作り込みが
各所から感じることができる

ベースとなっているのはE30こと2代目3シリーズ。ブリスターフェンダーやエアロパーツなどすぐに違いを見つけられる部分は多いが、細部にもレースに勝つためのこだわりの作り込みがなされている。例えば、空気抵抗を低減させるためにCピラーとリアウインドーの傾斜角度を作り直しているのだ。その結果、ノーマルのCd値は0.38だったのに対して、M3では0.33に改善。こうした細部の作り込みによって、実際のレースでも大活躍したのである。