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2021.09.15

【絶版車入門ガイド】モデル選びから購入後の維持まで、気になる旧世代ドイツ車の疑問をスッキリ解消!

 「古いクルマは維持が大変」というイメージが強いが、素性の分かる個体を選び、乗り出す前にきっちりとメンテナンスすれば何も恐れることはない。ここでは購入に役立つモデル選び、中古車相場、チェックポイントなどを入門ガイドとして解説していきたい。

1.モデル選びのポイントは?

メカニズムの違いが維持費の目安を決める

お目当てのクルマがあってもグレードによってエンジンも足回りも違う。もっと言えば、年式による違いもあるのでそれを把握しておくことが大切。

 モデル選びのポイントとして重要なのが、構造の違いが維持費を決めるということ。例えば、V8やV12を積む上級モデルは憧れの存在だが、直6や直4に比べて消耗品の数が多く、凝った作りになっている箇所もある。クルマによっては車高調整用のレベライザーが付いてリアショックが専用品というケースや、AMGやBMWのMシリーズといったスペシャルモデルは、エンジンや足回りに専用品を使っているのでノーマルと同じようにとはいかない。
 また、同じクルマでも年式によってエンジンが違っていることもあるので、そこも維持費に関わってくる部分だ。それゆえ、欲しいクルマが決まったら、年式による違いを知っておくこと。前期型と後期型で何が違うのか、部品代に違いはあるのかなどを知識としてマスターしておきたい。
 それだけに、はじめて絶版ドイツ車に乗るならベーシックなクルマを選んでおけば、維持費で悩むことはないだろう。もちろん、心に決めた憧れのクルマがあるなら迷わず選ぶのがベスト。他には代え難い魅力があるクルマなら、どんなトラブルでも乗り越えられるはずだ。
 根強い人気を持つ絶版ドイツ車は、流通台数もそれなりにあるため探すのは簡単だが中古車価格には大きな開きがある。それこそヒトケタ万円から500万円オーバーまで、物件によって大きな差があるのだ。価格はコンディションの差と考えてもいいが、必ずしも当てはまるわけではない。とくに世界限定車や数が減ってしまった人気車は、その価値だけで値が決まることもあるので注意が必要だ(これについては次のコーナーで詳しく解説する)。
 また、走行距離が少ないからコンディションが良いというわけでもない。屋根付きのガレージに大切に保管されて、定期的なメンテナンスもしっかりとされたクルマであれば間違いなく極上だが、いわゆる放置車両はこれまでのメンテナンスのツケが一気に回ってくる。そのため絶版ドイツ車は価格や走行距離ではなく、クルマのコンディションを最優先することが失敗しないコツ。記録簿などからこれまでの整備内容が確認できるクルマを選ぶことが重要だ。
 クルマを見にいく時はなるべく多くの中古車を見比べることが大事。最初は何も分からなくても、いろいろと見ていくうちに違いが分かるようになってくるもので、自分が優先すべき点も見えてくる。そうやっているうちに売れてしまう場合もあるかもしれないが、それも縁だと思うくらいの余裕があったほうがいい。

《ワンポイントアドバイス》
低走行の極上車でもメンテナンスは必要

 大切に保管されて定期的にメンテナンスされてきた極上車は、ノーメンテでも平気だと思ってしまうが、それは間違い。例えばゴムマウントやブッシュは走行距離が少ないと交換されないことが多いからだ。長い時間が経過していく中でゴムパーツは静かに劣化していく。やはり、走行距離だけでクルマのコンディションを見極めるのは難しい。

年式のわりに低走行というクルマもある。そこで重要になるのが、これまでどんな整備されてきたかということ。放置車両の場合、消耗品の交換がまとめて必要になることも。
エンジンや足回りなど構造の違いが維持費に影響を与える。同じ車種でも年式によってエンジンが異なる場合もあるので、その違いを把握しておくことが大事。

2.中古車相場の注意点

希少性と人気により程度に関係なく相場が上昇することも

需要と供給の関係で成り立っている中古車相場だが、絶版車によっては通常とは異なる値動きになることも。希少性と人気がキーワードだ。

 中古車相場は需要と供給の関係で成り立っている。絶版車となり中古車としての流通量が多いうちは、販売店同士の価格競争もあって相場の目安が見えてくるもの。しかし、流通量が減ってくると、不人気車はどんどん値を下げ、逆に人気車は希少性の高さから高値をキープするようになる。いわゆるクラシックとして高い人気を持つモデルがそれに当てはまり、マーケットによっては価格が高騰していくこともあるのだ。
 こうした状況が80年代のドイツ車にも見られるようになってきた。ネオクラシックやヤングクラシックなどと言われることもあるが、空冷のポルシェ、BMWのMシリーズやアルピナ、メルセデスのAMGといったスペシャルモデルを中心に相場が上がっているのだ。
 このようなマーケット状況の場合に注意したいのが、希少というだけで高値となっているケース。ユーザーから人気があり、かつ希少価値が高いクルマは、コンディションに関係なく相場が上がっていることがある。世界限定車や自分自身としてゾッコンのクルマがあって費用も時間もかけられるだけの覚悟があるなら迷うことはないが、相場が上昇傾向にあるドイツ車を選ぶ時にはそのコンディションをしっかりと見極めることが大切だ。
 その見極めのポイントになるのが、整備履歴。これがちゃんと残っているクルマであれば、いつどんな整備をしてきたのかが把握できるため購入後のメンテナンス計画が立てやすい。同時に費用の目安だって見えてくるから、維持費で悩むこともなくなるわけだ。
 ただ、そういったクルマに出会えるタイミングはそう多くはない。だからこそ、できるだけ多くのクルマを見て回り、実車の状態、整備履歴の有無などを確認するようにしたい。このように検討しながらクルマを選んでいる行為自体がじつは面白かったりするのだが、その過程で運命の一台に出会えることだってある。

《ワンポイントアドバイス》
整備履歴などが分かるショップの管理車両がお勧め

 整備も行なっているショップの場合、これまでの整備履歴をショップが記録していることがある。例えば、過去数年間面倒を見てきたクルマであれば、販売車両に記録となる整備明細が残っていなくても整備履歴を確認できる。そういったクルマは管理車両と呼ばれることが多い。ただし、そのショップを信頼できるということが重要となる。

3.どんなクルマを買えばいい?

安心して乗りたいなら仕上げ済みの車両を選ぶべし

ここで言う仕上げとは、機関面のメンテナンスがきっちりとされていること。購入後に同じ内容の整備をするよりもリーズナブルなケースが多い。

 中古車には新車のような手厚い保証はないし、100%安心というものでもない。20~30年前のクルマになってくると、これまでのオーナーの乗り方やメンテナンスの状況によってコンディションは様々。少しずつメンテナンスしながら乗るというスタイルもあるが、初心者にとっては不安を抱えたまま乗りたくないという思いが強いはず。
 旧世代ドイツ車に長く乗っていると「あ~また壊れたよ」なんてトラブルも笑い話になるのだが、これまでドイツ車に乗ったことがない人にとってはそうは思えないはず。編集部のスタッフだって最初はそうだった。それがいつの間にか話のネタになってしまうのだから慣れというのは本当に怖いと思う。そんなスタッフたちだって本音で言えば壊れてほしくないし、何もないほうがいいに決まっている。
 そんな時にどんなクルマを選べばいいのか。そのチョイスのひとつとして提案したいのが、すでに仕上げが済んだクルマを選ぶこと。この仕上げとは、レストアまではいかなくても、機関面に必要なメンテナンスがすでにされていることをいう。納車整備と言われることもあるが、その内容が重要になるのだ。
 インターネットなどで中古車検索をしていると、どこまで整備したかを明記するショップが出てきている。整備費用を計算したら恐らく100万円級だなと思うクルマまであった。車両代にプラスされていることもあって仕上げられていないクルマよりも価格は高い。だが、整備した内容がそのまま販売価格にプラスされているケースは少なく、商品として成り立たせるための整備だから購入後に同じ内容のメンテナンスをするよりもリーズナブルであることがほとんど。また、整備内容が分かっているからその後のメンテナンス計画が立てやすく、予算の目安も付けやすい。一番の心配事であるトラブルや費用といった面を最初からクリアできるのが、この仕上げ済みの車両なのである。
 そうなると、どこで買うかというのが重要になってくる。なるべく多くのショップを回り、敷居が高いと思うところにも勇気を持って行ってみるべき。いざ足を運んでみたら、すごく気さくな人たちばかりなんてこともあるのだ。
 そして何より、安心して絶版ドイツ車を楽しめることが一番のメリットとなる。憧れの名車を手に入れても乗らずに飾っておくだけではもったいない。ドイツ車は走ってこそその魅力を感じられるクルマなのだから。

《ワンポイントアドバイス》
専門店や修理工場に多い仕上げ済み車両

 大規模な中古車販売店よりも、その車種の専門店や修理工場に仕上げ済みの車両が販売されていることが多い。弱点も熟知しているので、トラブルが多いポイントを先回りしてメンテナンスしていることも。また、自社の管理車両でこれまでの整備履歴が分かることもある。何かとメリットが多いのが専門店や修理工場の仕上げ済み車両なのだ。

納車整備と言ってもその内容はショップによって様々。エンジンオイルなど油脂類の交換くらいしかしない場合もある。費用が発生することなので整備内容はしっかり確認を。
機械式の燃料噴射装置を持つクラシックモデルなどではレストアされて販売されるのが普通。こうした流れが80~90年代のドイツ車でも行なわれるようになってきた。