TOP > 記事 > 【激レア独車 05/F.M.R Messerschmitt KR200 1960y Part.2】戦闘機をモチーフとした大胆なデザインを持つ小型3輪車。隠れた細部の魅力をチェック!!

【激レア独車 05/F.M.R Messerschmitt KR200 1960y Part.2】戦闘機をモチーフとした大胆なデザインを持つ小型3輪車。隠れた細部の魅力をチェック!!

✔乗り降りしやすいシート設計
✔独特な構造のトランスミッション
✔カブリオレやロードスターもある

トランスミッションに
リバースギアがない!

 誰もが振り向く個性的なエクステリアデザインもさることながら、その中身も普通の乗用車とは違った個性的な作りになっている。
 前後1座となるシートレイアウトには驚かされるが、フロントシートは跳ね上げ式になっている。ボディにドアがなく、キャノピーを開けて乗り込む戦闘機のようなメッサーシュミットだけに、乗り降りしやすいような設計になっているのだ。このへんはいかにもドイツ車らしい配慮と言えるだろう。
 トランスミッションは4速MTだが、リバースギアは存在しない。これでは駐車するときに困ってしまうが、じつはこれにはメッサーシュミットならではの作法がある。メッサーシュミットのスターターは独特な構造になっており、バックするときには一度エンジンを切ってからエンジン自体を逆回転させる。ギアを一速に入れればそのままバックできるというわけだ。前進4速、後進4速というちょっと変わった仕組みになっているのである。最初は戸惑うかもしれないが慣れてしまえば問題はないはずだ。
 メッサーシュミットに搭載されるエンジンは、多くの小型車に採用されているザックス製の2サイクル単気筒。燃料供給システムはBMWのバイクなどにも搭載されるBING製のキャブレターを採用している。
 独特なデザインを持つメッサーシュミットであるが、生産期間が9年と長かったため様々なバリエーションがあるのも魅力。今回の取材車のようにプレクシグラス製の透明トップを持つベーシックバージョンを基本に、キャンパストップのカブリオレ、KR201と呼ばれるロードスターもラインナップされている。さらに、4輪バージョンのTg500というモデルも存在し、これは排気量を493㏄に拡大して2サイクルのツインでパワーアップ。より軽快な走りを実現し、トランスミッションにはリバースギアが追加されている。中古車としては3輪バージョンよりも希少な存在だ。
 最後にフロントに装着されているF.M.Rというロゴについて解説しておきたいと思う。メッサーシュミットを作ったF.M.R社(ファールツオイク・ウント・マシネンバオ)とは、メッサーシュミット社における自動車部門。53年に独立した会社であるため初期のメッサーシュミットにはF.M.Rのロゴは入っていない。初期型のフロントマスクにはメッサーシュミットをイメージしたバッジが装着されていたが、メルセデスのスリーポインテッドスターと似ていたことからクレームが入り、○の中にF.M.Rの文字が入ったバッジに変更されている。しかし、今度はアウトウニオン社からのクレームが入り、最終的には◇型に変更されるなど、年式によってバッジデザインが異なるのも特長だ。

アーマチュアには2種類の
メーカーが存在する

エンジンはザックス製の2サイクル単気筒。年式から見て、一度はオーバーホールをしていると思われるが、定期的に点検しておきたい。
 
 60年以上前のクルマではあるが、構造が非常にシンプルであるため、きっちりと整備すれば現代でも十分に走れる性能を備えている。整備のポイントはやはりエンジン。この2サイクルの単気筒エンジンは冷却ファンを使った空冷式で、その奥にはスターターと発電の役割を持つアーマチュアが搭載されている。一つで二つの役割を持つ重要なパーツなのだが、セルが回らなくなるといった場合はここが怪しい。トラブルが発生したら交換となる。ちなみにアーマチュアは年式によってメーカーが異なり、シバ製とボッシュ製がある。
 エンジンフードを開けると本体の横にリレー類が取り付けられている。現代のクルマのように、ボディアースが集中している部分があり、ここも接点を磨くか、接点復活剤などのケミカルを吹いておくと、電気の流れがスムーズになるので定期的にメンテナンスしておきたい部分だ。注意したいのがリバーススイッチでこれがダメになると、バックしたいときにエンジンが逆回転しなくなってしまう。基本的に電気系はシンプルで部品点数も少ない。それゆえトラブルが起きるポイントも決まっているので、現代のクルマのように突然電子ユニットが壊れて数十万円かかる、ということはない。
 エンジン本体は2サイクルの単気筒なので構造自体はシンプル。シリンダーヘッドは4本のねじで留まっているだけだ。走行距離が多いクルマは、コンロッドのブッシュが劣化してガタが出ていることもあるようなので注意が必要。ちなみにコンロッドには対策品があるので、オーバーホールをするときには対策パーツを使うようにしたい。アルミ製は対策前のパーツだ。トランスミッションのクラッチも消耗品なので、エンジンをバラすときには同時に作業したほうが効率が良い。
 年式から見て、販売車両として店頭に並んでいるクルマはレストアに近い整備がされていると思うので、コンディションが悪いクルマさえ掴まなければ大掛かりな修理が必要になるケースは少ないだろう。ただし、オイル漏れが酷いクルマやエンジンがかかりにくいクルマは何らかのトラブルを抱えていると予想されるので、試乗などをする際にはチェックを忘れないようにしたい。

燃料はガソリンとエンジンオイルの混合

 メッサーシュミットに使う燃料はガソリンだけではない。これにエンジンオイルを混ぜた混合燃料を給油しなければならないのである。燃料とオイルの混合率は25:1が基本だが、外気温が高くなる真夏は10:1くらいが良いというのがプロの見解だ。ちなみに、燃料タンクの容量は14ℓで予備タンクに2ℓが入る。燃費が悪いわけではないが、ガス欠には気をつけたい。

Detail Check

パーツや各部の作りに至るまで細かく見てみる!

見た目も中身も普通の乗用車とは
ひと味違う個性を持っている

フロントシートは跳ね上げ式

フロントシートは跳ね上げ式になっており、ロックを外すとシートが上がる仕組み。ドアがないため、乗り降りしやすいよう工夫がなされているのだ。

BING製のキャブレターを搭載

メッサーシュミットの燃料供給システムはBING製のキャブレター。BMWのバイクなどにも同メーカーのキャブレターが使われている。

Restore & Maintenance

レストア&メンテナンスのポイント

シンプルな構造だから
整備性が良い

部品点数が少なく、シンプルな構造となるメッサーシュミットは、トラブルが起きても原因が特定しやすく、整備性が良い。複雑な機構を持つ現代のクルマよりも維持しやすいのがメリットだと言える。

現代のクルマと同じようにボディアースが集中している部分がある。接点復活剤などを定期的に吹いて、電気の流れをスムーズにしておきたい。
エンジンフードを開けると、コイルやリレーなどが集中して取り付けられているのが分かる。部品点数が少ないのでトラブルが起きても原因を特定しやすい。