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Audi 激レア独車

2021.09.29

【激レア独車 03/Audi 100 1975y Part.2】希少な初代アウディ100。隠れた細部の魅力をチェック!!

✔フロント回りが「GL」専用デザイン
✔ソレックス製のキャブレター仕様
✔クーラー標準装備で快適に走れる

モデル途中にフロント側の
足回りをストラットに変更

 取材車はGLという初代アウディ100の最上級グレード。ここではエクステリアやインテリア、そしてエンジンなどもっと詳しく見ていきたいと思う。GLとその他のグレードを比較してみると、ヘッドライトがメルセデスのような角型から丸型4灯に変更されているのがポイント。フェンダーにはサイドマーカーと、メッキのフェンダーアーチも装着されている。そのほかではエンジンの排気量が異なり、パワフルになっていることも大きな特長だ。ダイムラー・ベンツが設計したスワール型燃焼室を持つ直4SOHCに、ソレックス製のシングルキャブレターを搭載。圧縮比は10・2で最高出力は115psを発揮する。最上級グレードということもあり、見た目も含めてその他のグレードとの差別化がなされているのだ。
 足回りは全車共通でフロントがダブルウィッシュボーン、リアがトーション・クランク・アクスルだったが、後のマイナーチェンジでフロントがマクファーソンストラットに変更されている。ミッションは当初、4速MTのみだったが、GLには3速のAT仕様を追加。同じエンジンを積むクーペSにもこの3速ATが用意され、オプションで選ぶことができた。余談だが、そのクーペS(4速MT)の最高速度は185㎞/h、0‐100㎞/h加速は10・1秒というスペックだった。
 インテリアを見ると、当時としては洗練されたイメージを持つデザインとなっている。ウッドパネルをふんだんに使って高級感を演出し、センターコンソールにあるアナログ時計が時を刻む。4リングスのロゴが入った細みのステアリング、当時のラジオやカセットデッキ(SANYO製)もクラシカルな雰囲気を盛り上げてくれるものだ。クーラーが装備されているから、これから手に入れても快適に走ることができる。
 ちょっと私見を加えさせていただくなら、ナビゲーションは付けずにオリジナルのインテリアのイメージを残しておきたいところ。ウインドーが手動式になっているので、後付けするとしたらETCくらいだろうか。それだけ味わい深い印象を持つインテリアなのである。
 この初代アウディ100をこれから探すのは大変だ。日本に現存しているクルマはほとんどないし、いつ売りに出るかも分からない。また、コンディションも含めて、まともに走るクルマは非常に少ないだろう。コンディション無視でベース車だけを探すにしても、かなり難しいのではないかと思う。それだけに今回紹介したアウディ100は激レアなクルマ。当時を知る人にとっても、実車を見たことがある人は少ないはず。それだけに個性的で濃厚な味わいを持つクルマであり、当時はメルセデス・ベンツやBMWに匹敵する仕上げがなされていたモデルなのである。

機関系のメンテナンスは
難しくないがサビには注意

取材車の燃料系パーツを見てみると、電磁ポンプに変更されているのが確認できた。燃圧が安定するのがメリットだ。
 
 クラシカルな雰囲気を持つデザインはとても素敵だが、30年以上前のクルマなので、その中身についてはきっちりと整備してやる必要がある。一般的な中古車では壊れたところを直しながら乗るというスタイルでも維持していけると思うが、このアウディ100のように70年代のクルマはレストアに近い整備を最初にしておく必要がある。
 とくに注意したいのがボディの状態。サビが発生してそのまま放置しておくとどんどん悪化してしまう。見える部分はすぐに発見できるので問題はないが、下回りやバンパーの裏側など、見えない部分にサビが発生していないかをチェックしておきたい。そのサビやすいポイントをよく熟知しているのがメカニックだ。下回りを毎日のようにチェックしているので、そのポイントをよく心得ているからである。それゆえ、オイル交換などのついでに工場に持ち込んだときには、サビの状態も確認してもらうといいだろう。また、水抜き穴などに詰まりがあると、ドア内部などに水が溜まってしまいサビの原因となる。エアガンなどを使ってゴミやホコリなどを除去しておきたい。
 機関系のパーツは今でも入手できるので普段のメンテナンスで困ることはないが、海外にオーダーするケースも多いので時間がかかることも。メンテナンスとしては点火系、水回り、燃料系といった部分をまとめて整備していくのが効果的。周辺のゴムホースなどと一緒にリフレッシュしておくといいだろう。ポイント別に見ていくと、点火系はプラグやプラグコードのチェック。コードが劣化して電流がリークしてしまうとエンジン不調の原因になるので注意しよう。水回りではラジエター。これで容量が足りるのかと思うほど小ぶりなタイプなので、冷却性能が落ちてくると水温の上昇にも繋がる。ゴムホースも含めて定期的に点検しておきたい。取材車の燃料系は電磁ポンプに変更されていた。燃圧が安定するのでエンジンの始動性などが向上するのがメリット。こうした変更も旧車にとっては有効な手段だと言える。キャブレターも定期的な点検と調整が必要だ。基本的にはシンプルな構造なので、一度きっちり整備すれば後の維持はそれほど難しくない。このへんは旧車のメリットだ。

ロゴ付きのブラックボックスの中身は……

 エンジンルームを開けて目に飛び込んでくるのが、アウディのロゴが入った黒いボックス。これにはエバポレーターが入っており、エンジンルームからもアクセスしやすい設計になっている。ちなみに、その奥に見えるのがブロアファン。GC的世代のドイツ車のエバポレーターはダッシュボードをバラす必要があるなど交換には手間と時間がかかるが、シンプルな設計のアウディ100ではそんなことはないのである。

Detail Check

パーツや各部の作りに至るまで細かく見てみる!

最上級グレードである「GL」は丸目4灯。

クーラー装備で快適に走れる。

夏場は特に気になるクーラー

旧車に乗る場合に気になるのがクーラーの有無。夏場はとくに気になるが、アウディ100には標準でクーラーが装備されているので快適に過ごせる。

ソレックス製のキャブ仕様

燃料供給システムはソレックス製のキャブレター仕様。定期的な調整などが必要になるが、きっちり調整すれば信頼性は高く、維持費も安い。

Restore & Maintenance

レストア&メンテナンスのポイント

きっちりと整備すれば
その後の維持はラク

70年代のクルマなのでメンテナンスというよりは、レストア的な整備が必要になってくる。ここでは取材車である75年式アウディ100をサンプルに、レストアのポイントを紹介していきたい。

小ぶりなラジエターはエンジンの横に装着されている。水回りのキモとなる部分なのできっちりとメンテナンスしておきたい部分である。
点火系ではプラグコードやディストリビュータの状態に気を配っておきたい。エンジン不調に直結するポイントなので定期的に交換しておこう。