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2023.03.14

【次こそは乗りたい! 憧れの絶版名車】本当に正しい旧車の取扱い説明書②

 旧車に発生するトラブルは、部品の劣化だけではない。ちょっとした扱い方や運転の仕方によっても愛車にダメージを与えてしまうことがあるのだ。とはいっても決して難しいわけではなく、少しの気遣いや心がけによってトラブルを予防できるのである。ここでは旧車に乗るにあたって重要となるポイントを挙げてみた。楽しい旧車ライフを送るためにもよくチェックしておいてほしい。

排気ガスはエンジンの調子を示すバロメーター

 旧車が走り去った後の、オイルが焼ける残り香と遠ざかるエグゾースノートはクルマ好きにとって心地よいものだが、オイルが盛大に燃えているのは問題あり。エンジン内部でオイル下がりを起こしている可能性が高い。また黒い煙が出るのは燃料が濃すぎるか点火のスパークが弱い証だし、白煙がいつまでも止まらないというのもエンジン内部に大きな問題がある可能性が考えられる。 
 このように、排気ガスはクルマの健康状態を示すバロメーター。凄腕のメカニックともなれば、排気ガスのにおいを嗅いだだけでトラブル箇所の見当が付くこともあるという。さすがにユーザーではそこまでの必要はないが、日頃から排気ガスの色に気を配るくらいのことはやっておきたい。青白い色をしていたり、黒いススが出ていたりという状態の変化をいち早く見つけることができるのはユーザーだけ。いつもと比べて明らかな異常を感じた時は、すぐメカニックにチェックしてもらうようにしよう。古いクルマにトラブルフリーで乗るためには、コンディションの変化に敏感になる必要がある。つまりは、赤ちゃんのウンチから健康状態をチェックするようなもの。

マフラーから白煙や黒煙が出ている場合、何らかのトラブルが発生している可能性が高い。エンジン内部に大きな問題を抱えていることも考えられるので、排気ガスがいつもと違うと感じたら早めに修理工場で点検してもらうことが大切だ。
知ってお得なマメ知識

マフラーから白煙が出ている原因として多いのがオイル下がり。これはエンジンヘッドに備わるバルブステムシールの劣化によるもので、放置しておくとエンジン本体にもダメージを与えてしまう。純正品を使ってきっちりと交換しておくことが重要だ。

ブレーキを踏んで壊れるクルマは機械として不良品

 どんなに「急が付く行為がNG」という旧車でも、ブレーキだけは話が別。「クルマを壊すかも……」と急ブレーキをためらって追突したのでは本末転倒だ。ブレーキを思いっきり踏んで壊れるクルマは、機械として不良品である。旧車が気になるような人に普段から無用に急ブレーキを踏むような運転をする人はいないと思うので、ブレーキは普通に踏めばいい。ただ、一部にはエンジンのバキューム圧を利用した倍力装置が備わっていないクルマがあるなど、利きに関してはイマドキのクルマほど良くないことも多いので、車間距離を十分にとって、万一のことを意識しつつ走るのが無難だ。
 メンテナンスにおいても、ブレーキキャリパーとマスターシリンダーの定期的なオーバーホール、ブレーキフルードやホースの交換、前後の圧力を調整するプロポーショニングバルブなどが備わっているクルマならばそういった部品の点検も忘れないようにしておきたい。長い時間が経過しているクルマほど、命に関わるブレーキ関係のメンテナンスは重要度を増している。いつでも思いっきり踏めるように、キッチリ整備しておくことが大切なのだ。

ブレーキのメンテナンスは重要なポイント。安全に止まられなければクルマは走る凶器になってしまうので、確実にメンテナンスしておく必要がある。パッドの交換だけでなく、ブレーキキャリパーのオーバーホールやフルードの交換も忘れずに。
知ってお得なマメ知識

ブレーキフルードは吸湿性が高く、長期間使い続けるとトラブルの原因になる。湿気や水分によってブレーキの配管やキャリパーなどにサビを発生させることもある。それゆえ2年に1回は必ず交換して、ホースやマスターシリンダーなどブレーキシステムの点検も怠らないようにしたい。

クルマ全体が暖まるまではあらゆる部分に優しく走る

 エンジンが暖まるまで暖機運転をする人は多いが、暖まらないと本来の性能を発揮できないのはエンジンだけではない。トランスミッションもオイルが暖まらないと入りづらいし、足回りにしてもショックアブソーバーのオイルやアーム類に備わるゴムブッシュが暖まってこそ柔軟な動きが実現する。旧車の場合、こういった部分をゆっくりと走りながら暖める暖機走行がより大切になるのだ。
 具体的な方法を解説しておこう。まずエンジンを始動したら、燃料の量を増やすチョークを戻しても止まらない程度、2~3分暖機をしたらクルマをゆっくりとスタートさせ、アクセルを控えながら10分程度走らせる。これには住宅街の中など交通量が少なく自分のペースで走れる場所が適している。冷えている間はATの変速が遅かったり、MTならギアが入りにくかったりするはずなのでそれらに気を配ることが大事。
 幹線道路に面した家で乗られていたクルマはコンディションが良くないと言われるほど、寝起きの猛ダッシュはクルマに負担が大きいもの。大通りに出てアクセルを踏み込む前に、ウォーミングアップを十分に済ましておこう。

暖機運転が必要なのはエンジンだけではない。旧車の場合はクルマのあらゆる部分を暖めてやることが大事。例えば足回りに備わるゴムブッシュも暖められてこそ柔軟な動きになる。寝起きでダッシュするのは人間もツライが、それはクルマも同じなのだ。
知ってお得なマメ知識

エンジンは設計された温度になった時に最適なクリアランスで本来の性能を発揮できるようになっている。ミッションも同様であり、油温が低い状態でのシフトアップやダウンといった動きは負担が大きく、部品の摩耗が進みやすい。ミッションの寿命を延ばすためにも暖機走行は重要なのである。

水気を溜め込まないように日ごろから気を付ける

 現代のクルマは亜鉛メッキによる防錆処理がしっかりと施されているため簡単に錆びることはないが、旧車の場合は十分に注意する必要がある。
 水分が溜まるとボディの腐りの原因になるので、とにかく水気を溜め込まないように心掛けることが大切。雨に濡れた傘を車内に置いた時などは、晴れたらフロアカーペットを干すようにしたい。ゴム製のフロアマットが使用されている場合はとくに水気が抜けにくいので要注意。キャビンだけでなく、トランクルームの床も錆が出やすいポイントだ。
 またフロントガラス下やドアの裾などにあるボディの水抜き穴が、長年の汚れや再塗装などで詰まってしまっている場合も多い。これは大きな補修を必要とする重大なダメージへと直結するので、旧車を手に入れたらとにかく水はけを確保しよう。竹串などを使って水抜き穴の詰まりを確認しておくことも大事。
 冬場などに雨でもないのに窓がやたらと曇る場合は、ヒーターコアなどから冷却水が漏れているかもしれない。これも錆や腐りの原因となるポイントなので、外からの水気だけでなく、日ごろから内部にも注意しておくようにしよう。

防錆処理がされていないクルマは、本当にサビる。それでは雨の日には乗れないと思ってしまうが、ユーザーがフォローしてやればいい。水抜き穴が詰まっていないかを確認したり、水気が抜けにくいところは水分を拭き取って溜め込まないようにしよう。
知ってお得なマメ知識

旧車の査定における重要なポイントがボディのサビ。これがひどい状態だと売却時に査定を依頼しても値段が付かないこともある。良いコンディションを保っておけば買った以上の価値になる可能性を持つ旧車なので、ボディにサビが発生しないよう日頃から気を配っておきたい。

ドアを閉める時はベルトなどの挟み込みに注意

 自動巻き取り付きの3点式シートベルトならまず問題ないが、旧車には2点式や3点式でもショルダー部分に巻き取り機構を持たないタイプが存在する。
 こういったクルマでは、ドアを閉める時にベルトやアンカー部分を挟み込まないように注意が必要だ。ベルトのバックルにある金属部分などをドアに勢いよく挟んでしまえば、バックルが破損するだけならまだ幸い、ボディ側に大きな凹みを作ってしまうことも十分に考えられる。ベルトを外したらドア側へ垂らさずに、シートの座面上に置く習慣を付けておくと安心。助手席に乗るゲストにも、さりげなく注意を促しておく必要があるだろう。
 またドアそのものも多少下がっている場合などがあるので、後ろ手で「パタン」と閉めるのではなく、一度クルマに向かってドアノブを持ち、キッチリと押し込むように閉めるようにしよう。
 また、旧車世代ではさすがに集中ドアロックやキーレスエントリーなどは備わっていないので、インロックには十分注意しておきたい。鍵山が摩耗していると、鍵屋さんを呼んでも開けられないケースが考えられるからだ。

旧車のシートベルトは、ショルダー部分に巻き取り機構を持たないクルマも存在する。そのため、ベルトを外す時やクルマから降りる時に注意しておかないとドアに挟み込んでしまったり、バックルがボディに当たって凹んでしまう可能性もある。
知ってお得なマメ知識

ドアを必要以上の力でドンと閉める人がいるが、それはNG。パワーウインドーを装着したクルマであれば内部のレギュレーターなどへの負担が大きくなるからだ。まだ手動式のウインドーでは、引っかかりや抵抗を感じたら操作を止めること。こうした小さな気遣いがトラブル予防に繋がるのである。

燃料は常にタンクの半分以上を心がける

 樹脂製の燃料タンクとなった現代のクルマでは関係ないが、金属製タンクの旧車の場合はガソリンを常に半分以上入れておくように心掛けたい。
 その理由としてまず挙げられるのが、タンクの錆びを予防するため。そしてエンジンの熱によってガソリンの成分が劣化するのをなるべく抑えるためでもある。キャブレター式のモデルでは、多くのクルマで機械式の燃料ポンプが使用されている。これはエンジンの動力を使ってガソリンを吸い出す構造で、エンジンブロックに直接取り付けられている。当然、エンジンの熱をモロに受けるのでガソリンが高温になりやすい。アクセル開度によってはキャブレターを通過して再び燃料タンクへと戻されるガソリンは、電磁式ポンプの場合よりも温められやすい。走るたびに高温に熱せられれば揮発成分が劣化しやすくなるので、なるべく全体量が多い方が温度変化を抑えることができる。
 また真夏にはガソリンが燃料配管の内部で熱によって気化してしまい燃料が吸い出せなくなるパーコレーションという現象が発生することもあり、これは一時的ながら走行不能になる厄介なトラブルだ。

旧車の多くは金属製の燃料タンクを搭載している。サビが発生してしまうと、それが燃料系にまわってしまい思わぬトラブルの原因になるのだ。それを避けるためにも燃料は常に半分以上をキープ。これは熱による燃料の劣化を抑制することにも繋がる。
知ってお得なマメ知識

燃料タンクのメンテナンスは旧車にとって重要なポイントになるわけだが、部品交換のほかにタンクをリペアするという方法がある。旧車を扱っている専門店であればこうしたノウハウは持っているので積極的に活用するべき。旧車の燃料系メンテはタンクから始まると言っても過言ではない。