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2023.03.14

【次こそは乗りたい! 憧れの絶版名車】本当に正しい旧車の取扱い説明書①

 旧車に発生するトラブルは、部品の劣化だけではない。ちょっとした扱い方や運転の仕方によっても愛車にダメージを与えてしまうことがあるのだ。とはいっても決して難しいわけではなく、少しの気遣いや心がけによってトラブルを予防できるのである。ここでは旧車に乗るにあたって重要となるポイントを挙げてみた。楽しい旧車ライフを送るためにもよくチェックしておいてほしい。

旧車の操作系は独立したスイッチ機構ではなく直接つながっている

 現代のクルマでは、組み立ても修理のための部品交換も簡単な、電気仕掛けのスイッチが操作系の主流。多少手荒く扱っても、壊れるのは手が触れる部分だけで、その先にあるエンジンやトランスミッションといった重要な機構部分はコンピュータが介入することで異常な操作から守られている。
 ところが、旧車の場合はすべてダイレクト接続。アクセルペダルはワイヤーでスロットルバルブに直接繋がっているし、シフトノブはトランスミッションにリンケージで直結されている。極端な話、時速100㎞/hで走行中にシフトをリバースに入れても、イマドキのAT車ではそのまま駆動力が伝わることはないが、クラッチを切ってギアを入れてしまえばタイヤが逆回転するというのが旧車なのである。
 このダイレクトさが操る楽しさを生み出していることは間違いないのだが、それだけに操作一つにも思いやりを持って接してやることが、クルマを壊さないコツとなっている。
 そこでこのコーナーでは、ちょっとした気遣いでトラブルを未然に防ぐ、旧車ならではの構造に優しい取り扱い方をわかりやすく紹介したいと思う。トラブルフリーで乗るための大切なポイントは、日常の接し方にもあるのだ。

アクセルは踏むのも戻すのもスライドさせる感じで

 アクセルを全開にして、そのクルマのポテンシャル最大限の走りを楽しむのはクルマ趣味の醍醐味でもあるけれど、旧車の場合はいきなり蹴り込むように踏んではいけない。
 まず、多くのクルマはキャブレターを使用しているので、スロットルがいきなり全開になっても燃料の供給が付いて来ないため息切れしてしまう。ペダルに乗せた足をスライドさせるような感覚で、ジワっと踏み込んだ方が素早くエンジンの回転を高めることができるのだ。アクセルを戻す時も同様で、いきなりパッと放すとクルマの動きがぎくしゃくしてしまう。燃料噴射装置を備えているクルマの場合も、機械的な負圧のセンサーなどを使った旧式なものなので、演算などのスピードは速くはない。こちらもゆっくりしたアクセルワークが確かな加速に効果的と思っていい。
 また、アクセルペダルとスロットルバルブは細いワイヤーで接続されているので、ワイヤーの劣化やスロットルの動きが渋くなるなど経年劣化が進んだ状態でいきなり強い力で蹴り込むと、ワイヤーが切れてしまう原因にもなりやすい。バルブが開く感じをイメージしながら、ゆっくりと踏み込むようにしたいものだ。

キャブレターを使用しているクルマの場合、いきなりアクセルを全開にしても燃料が付いていかない。焦らずにジワっとアクセルを踏み込んでいけばスムーズに加速していく。これはアクセルワイヤーの負担を軽減することにも繋がるのだ。
知ってお得なマメ知識

キャブレターには加速ポンプが備わっている。アクセルを急に踏み込むと燃料が追いつかないためポンプで押し出しているのだ。そのため、アクセルを煽るような乗り方をしていると燃料を多く消費してしまい燃費も悪化してしまう。「アクセルはジワっとゆっくり」が基本である理由は、こんなところにもある。

シフトノブは位置の感触を確かめつつ操作する

 旧車ではAT車もMT車も、シフトのセレクターレバーはトランスミッション内部までロッドにより直接接続されている。複雑な形状のロッドに樹脂製のガイドやブッシュなどが組み合わせられているため、数十年という時間の中で磨耗が進んでいるのが当たり前。そうなると、どうしても位置決めが曖昧になってくる。本来ピタッと止まるべき場所で止まらないとか、左右にグラグラと動いてしまうとか、全体的に緩くなってしまうのが普通なのだ。
 これを一般的な感覚で操作すると、「ガリッ」と異音が出たり、「ガツン」と大きなショックを感じたりすることが多いはず。こういった症状は、トランスミッションの側からしてみれば誤操作のようなもので、曖昧になったシフト操作をドライバーが上手にフォローしてやらないと、ミッション内部にストレスが蓄積して最終的には壊れてしまう。
 ではどうすれば良いのか? シフトを操作する時は感触を確かめながら、スムーズに入る位置を覚えるように心がけたい。自然にスッと吸い込まれる位置が必ずあるはずなので、シフトゲートのガイドに頼らず、その場所でギアチェンジすることが大切だ。

シフトのセレクターレバーは位置決めが曖昧になってしまうことがあり、それを普通の感覚で操作してしまうと異音が出たり、内部に大きなダメージを与えてしまう。スムーズに入る位置は必ずあるので、優しく操作してやることがトラブル予防に繋がる。
知ってお得なマメ知識

DレンジからRレンジ、またはその逆といったシフトチェンジはクルマが完全に停止した状態で行なうのが基本。イマドキの電子制御式はそこまで神経質にならなくても大丈夫だが、旧車の場合は別。こうしたクルマに優しい扱い方はミッションを長持ちさせることにも繋がるのである。

ステアリングは止まった状態で回さないのが基本

 「パワステのないクルマはステアリングが重い」という人がいるが、これは据え切りをするからそう感じるのであって、走っている限り現代のクルマよりボディが小さく重量が軽い旧車なら不都合を感じることはないはずだ。最も問題になるのはクルマを駐車する時だと思う。これはどうしてもクルマが止まった状態でステアリングを回す「据え切り」をしたくなるシーン。普段パワステ付きで軽々と回るクルマに乗っている人は、ベストな角度で一度停止して、そこから切り返してからまたバックするという運転のクセが付いていると思う。それを旧車でやっていては、回す腕も、クルマの操舵系もたまったものではない。
 パワーステアリングが普及する以前は、車庫入れの時でもハンドルはクルマを動かしながら切るのが当たり前だった。よっぽど狭い場所への縦列駐車など特別な場合は別として、バックさせながらステアリングの切り込み加減をコントロールしてピタリと望む位置へクルマを導く技術を誰もが持っていたのだ。これに関しては、据え切りをしないように心がけて、駐車の腕を磨く以外に方法はない。コツを掴めばすぐに上達するだろう。

ノンパワステのクルマで据え切りをすると本当に重いし、操舵系パーツへの負担も大きくなる。クルマが動いている状態であれば普通の感覚で操作できるので、駐車の時は据え切りしないように心がけ、クルマを動かしながらステアリングを操作しよう。
知ってお得なマメ知識

現代のクルマと比べて旧車のステアリングは遊びが大きくなりがち。だが心配は要らない。ほとんどの旧車はステアリングギアボックス内部のシールや消耗品が供給されているのでオーバーホールが可能。同時に遊びの調整もできるのだ。遊びが大きいと感じたらプロに点検してもらおう。

5秒間キーを回してかからなかったら再チャレンジ

 エンジンがかかりにくいからといって、スターターをいつまでも回し続ける人がいる。これは誰も出ない電話を呼び出し続けるのと同じで、マイナスなことしかない。イグニッションキーを回してスターターを回転させるのは5秒間程度。それでかからなければ、一度キーを戻して10秒くらいタイミングを開けてから再度チャレンジするようにしよう。
 コンピュータで緻密に制御された現代のクルマと違って、旧車の場合は数日放っておいただけでもエンジンがかかりにくくなることがある。始動に必要な燃焼ガスの状態も、燃料が濃すぎたり、スパークが弱かったりとなかなか整わないこともある。スターターはクルマに備わる部品の中で最も消費電流が大きなパーツ。意味なく回し続ければバッテリーの過剰な放電につながるし、長年の疲れが蓄積しているマグネットスイッチなどスターター内部の機構が壊れてしまうケースも多い。チョーク機能が十分に働いていることを確認して、2~3回試してみてもかからないようならば、燃料と点火スパークがちゃんと来ているがチェックした方がいい。旧車はちょっとしたことで不具合が生じていることもある。

エンジンがかかりにくいからといって、スターターを回し続けているとトラブルの原因になる。5秒程度回してかかなければ一度キーを戻し、10秒後くらいに再チャレンジ。それでもエンジンがかからなければ燃料系や点火系などの不具合が考えられる。
知ってお得なマメ知識

エンジンが冷えた状態から始動させるコールドスタートでは、コールドスタートバルブやウォームアップレギュレータなどによって燃料を多く噴射、空気量も増やし燃焼を促進しながらエンジンにとって最適な温度になるようにしている。これらの不良によりアイドリング不良や黒煙が出ることがある。

 

 

  ~ 続く ~