911シリーズの後を継ぐフラッグシップモデルを想定して登場した928。911よりも上級で、かつスポーツ性能も兼ね備えたGT的なモデルとして位置付けられている。各所にはポルシェらしいこだわりのメカニズムを搭載し、高性能をとことん追求した928は先進的なデザインを採用。日本のスーパーカーブームを彩った名車である。
PORCHE 928 GTS
スタイリッシュな2+2のクーペスタイルながら、北米でのニーズに対応すべく、ビックサイズのボディを採用。デビューは77年で、小変更を繰り返しながら95年まで生産が続けられていた。今でも根強いファンが存在する。
911とは全く異なる
ラグジュアリー要素を強調
911シリーズがポルシェの代名詞となった現在では想像もできないが、928は911よりも上級な後継モデルとして開発された。空冷・水平対向・RRの機構を持つ当時の911シリーズとは違って、928では水冷・V8・FRを採用。911のスポーツ路線とは異なるラグジュアリー要素を重視し、高級車らしい質感とGTカーとして高い走行性能を追求しているのが特長だ。
もちろん、リアルスポーツカーである911シリーズを生み出したポルシェの高い技術は928にも投入されている。当初積まれたV8エンジンはアルミとシリコンの合金を多用し、シリンダーライナーを持たない凝った作りのもので、4ℓの排気量から240psを絞り出す。エンジンはフロントミッドシップと呼んでもいいほど、エンジンルームの後方に搭載されている。
V8ユニットが生み出すハイパワーをリアタイヤに伝えるトランスミッションは、一般的にはフロントにマウントされるものだが、928では重量配分を考えてリアに。加えてバイザッハアクスルと呼ばれる簡易4WS機構も備え、大柄なボディをものともしない高いコーナリング性能を見せる。リアルスポーツ顔負けの実力車なのである。
そんな928の最終進化型がGTSで、928S、S2(日本独自の仕様)、S4、GTと進化を続けた928の集大成だ。エンジンは当初の4ℓから5・4ℓにまで拡大し、最高出力は350psとなり、最高速も294㎞/hに達した。そのパワーを無駄なく路面に伝えられるようトレッドが広げられたほか、フェンダーもワイドになりブレーキディスクが大径化されるなど各部は強化されている。
911シリーズに匹敵する
ポルシェが作った名車
このようにして、高級スポーツカーとしてのポジションを確立するための高性能化が図られたが、結果として911シリーズほどのオーラを引き継ぐことはできなかった。しかしながら、77年のデビューから95年に生産終了するまでの長きに渡って、ポルシェがこれほどまでに高性能化を目指し作り上げた928はやはりスペシャルな存在。高い工作精度と頑なに高性能を追求した作りは、911シリーズに引けを取らない名車だと言える。
ポルシェ928は日本におけるスーパーカーブームを彩ったこともあって、今でも熱心なファンが多い。当時としては斬新だったエクステリアデザイン、ポップアップ式のヘッドライトなどルックスだけを見ても、まさにスーパーカーだった。そんな憧れを持っていた人も少なくないだろう。中古車の数は以前に比べて減ってきているが、全く探せないというわけではない。基本的な快適装備は揃っているから、今でも十分に走りを楽しめる。本気で峠を攻めればそれなりに応えてくれるクルマではあるが、エンジン特性といい、重めのステアリングといい、安定感のあるハンドリングといい、やはりハイウェイクルーザーという性格が強い。それも柔らかで快適なという類ではなくて、男の仕事場として集中できる空間といったイメージ。東京~大阪間をハイウェイで一気に駆け抜けたりするには、またとない相棒になってくれるだろう
Mechanism Topic
全幅 : 1890 mm
全高 : 1282 mm
ホイールベース : 2500 mm
トレッド 前/後 : 1551/1616 mm
車両重量 : 1620 kg
エンジン方式 : V8DOHC
総排気量 : 5396 cc
ボア×ストローク : 100.0×78.9 mm
最高出力 : 340/5700 (ps/rpm)
最大トルク : 50.9/4250 (kg-m/rpm)
タイヤサイズ : 225/45ZR17 (前)
: 255/40ZR17 (後)
最高速度 : 294 km/h