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PORCHE

2021.07.02

【名車回顧録 Part.04】PORCHE carrera 3.2 Type930 スポーツカーとしての本来の楽しさと ドイツ車らしい硬質感が堪らない

911シリーズとしては2代目となる930。このクルマがデビューした頃は衝突安全基準、排ガス規制など自動車を取り巻く環境に大きな変化が訪れた時期だった。様々な制約がある中で細かなマイナーチェンジとモデル追加を実施。その結果、930はポルシェの人気を一気に押し上げたのである。

PORCHE 911carrera 3.2 Type930

2代目911シリーズ

取材車は930として最終型となる89年式。74年の登場から細部の小変更を数多く実施しているため、完成度としてはもっとも高い年式だと言える。

ポルシェと言えば
やっぱりこのカタチ!

 クルマに詳しくない人であっても、ポルシェと言えば2代目911シリーズのカタチを思い浮かべる人が多いと思う。
 930と呼ばれるこのクルマは、74年から89年まで生産され、全世界で17万台以上がデリバリーされた。現在でもマニアックなファンが多く存在し、細かなスペックから変更点、乗り味の違いなどを熟知しているユーザーもいる。
 このような根強いファンに支えられているため、空冷エンジンを搭載していた時代のポルシェは今でも中古車として多く出回っている。年式的に見れば最終型でも25年前のクルマなのだが、なぜこんなにもユーザーからの支持を集めているのだろうか。
 これまでに出会った930ユーザーの声を改めて思い返してみると、スポーツカーとしての本来の楽しさ、ダイレクトなフィーリングが残されているという声が多い。
 現代のポルシェはハイテク制御により、スピードや安全性などクルマとしての性能は極めて高いレベルにある。機械式では実現できなかった数々の問題を、電子制御化によって解決しているのだ。
 もちろん、クルマは日々進化していくものだからこれを否定するつもりはないが、昔憧れたワクワクするような感覚、クルマを走らせる楽しさや喜びを、現役のスポーツカーとしてのレベルを保ちつつ楽しめるというのが930の大きな魅力なのではないだろうか。
 装備類を見ればパワステはないし、ミッションもマニュアルのみ、おまけにクラッチだって重い。渋滞にハマったら大変だし、駐車場での切り返しにも腕力が必要になる。コンピュータ制御されていないエンジンは燃料の消費量も多めの傾向にある。だが、そういったことも許容できてしまうのが、930というクルマなのだ。
 自分のドライビングスキルによって速く走らせることができるし、スキルが追いつかなればもちろん思ったようには走れない。ポルシェに挑戦していくようなドライビングにこそ、スポーツカーとしての本来の楽しさがあると思う。930にはそれが色濃く残っているのである。

通称「ビックバンパー」とも
呼ばれている930

 930は通称「ビッグバンパー」とも呼ばれているが、厳密にはターボやカレラを除けば3ℓエンジンの78年以降のモデルを指す。最大の特徴はその通称名にある通り、アメリカの衝突安全基準である5マイルバンパーを備えたスタイリング。大型化されたバンパーに合わせてフロントのウインカーランプがバンパーに組み込まれ、テールランプも中央にポルシェのロゴが入ったガーニッシュを加えて洗練された雰囲気に。
 さらに、ドアサッシュやウインドーのモールディングをクロームからブラックへと変更している。他のクルマが5マイルバンパーを備えた途端にカッコ悪くなってしまったのに対し、911は実にスタイリッシュでモダンなムードをまとうことに成功している。
 15年という長きに渡って生産された930は、ボディ、エンジン、トランスミッションなど年式によって違いがある。今となってはそんなところもマニア心をくすぐる要素。シンプルな機械仕掛けだから生み出せる硬質感も、やはり930ならではだ。

エンジンフードを開けても補機類しか見えず、本体はもっと下にある。手前にある大きなフィンは冷却のためのものだ。2.7ℓからスタートした930だが、最終の89年式では3.2ℓまで拡大している。
初代モデルから受け継ぐ5連メーターが印象的なインパネ回り。トランスミッションはマニュアルのみで、クラシックな雰囲気もたっぷりと味わえる。
フロントシートは電動調整が可能で、チェックのオシャレな柄は当時のオリジナル。リアシートは2つあり、一応座れるが頭上スペースが狭く窮屈なので補助席と考えるのが一般的だ。
年式的には25年前のクルマだが、クーラーが装着されているので、夏場でも乗り切れる。

Mechanism Topic

15年以上生産されたクルマだけにエンジンの変更点も多い。排気量だけを見ても、当初は2.7ℓだったが、その後3ℓ、3.2ℓへと進化。ターボエンジンも登場。燃料噴射装着はLジェトロニックとなっている。組み合わせられるトランスミッションは、87年に扱いやすいワーナーシンクロタイプに変更されていることから、ビギナーには87年式以降の方が運転しやすいはず。プロショップによると、87~89年式の3.2ℓのカレラがオススメとのことだ。
 
●主要諸元 911 Carrera(1989y)
全長 : 4300 mm
全幅 : 1650 mm
全高 : 1350 mm
ホイールベース : 2280 mm
トレッド 前/後 : 1375/1395 mm
車両重量 : 1290 kg
エンジン方式 : 水平対向6SOHC
総排気量 :3164 cc
ボア×ストローク : 95.0×74.4 mm
最高出力 : 225/5900 (ps/rpm)
最大トルク : 27.3/4800 (kg-m/rpm)
タイヤサイズ : 205/55ZR16(前) 
       : 225/50ZR16(後)
新車時価格 : 985 万円