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【中古ドイツ車購入術の決定版】管理車両と極上車とは?

中古車購入において気になるのは走行距離だが、それだけでコンディションを見極めることは難しい。ここで紹介するのは、多走行車だがショップの管理車両であるパターンと、コンディションに優れ、価格もそれなりに高い極上車。それぞれののメリットとデメリットについて考えてみたい。

 

【極上車】

内外装のコンディションは抜群だが
機関面は要チェック!

低走行の極上車でも
メンテナンスは必要になる

 予算制限がなく、もしくは潤沢な予算を用意できるのであれば、内外装が新車のようで走行距離が少ないクルマを選ぶのがベストなのは言うまでもないが、現実はそうはいかない。ただ車種によっては現実的な価格で極上車と呼ばれる中古車が射程圏内に入ってくる人もいるだろう。そこでここでは極上車を選ぶ際の注意点について解説していきたい。
 走行距離が少なくてこれは極上だと言われたクルマを買ったら、納車直後からトラブル続きで腹が立った。そんな話を聞くことがある。「まだ2万㎞しか走っていない」なんて聞くと、ほとんど新車のような気がしてしまうけれど、10年、15年という時間が経過していればメンテナンスが必要なのは当然のこと。そういったことをちゃんと説明しない販売店で買うのはどうかとも思うけれど、探したところで他にそうは見つけられないのが低走行極上車なので、購入後のことはあくまでも「自己責任」というつもりで、ラッキーにも発見できたなら、キッチリとメンテナンスをしてから乗り出すようにしたいものだ。
 また低走行車といっても、ロクなメンテナンスもせずに放置していただけの車両もある。そこでポイントになるのが、屋内保管であることだ。紫外線はダッシュボードやシート生地、ウッドパネルなどの焼けや割れ、変色の原因となるだけでなく、ガラスの強度をも低下させてしまう。リアウインドーの端の方が白く曇ってきたりするのも、紫外線などによる害なのだ。青空駐車場でクルマが劣化する時間を止めることは不可能に近い。
 注意したいのがカーポートの下などに入れてあったクルマで、屋根から出ていたボンネットから前だけが焼けていたり、左右のどちらかだけが日に当たっていたようなものもある。また、あまり乗られていなかったクルマの場合、駐車スペースに置かれていた荷物なとで風通しが悪くなって、車内はカビ臭くてホイールの裏が1本だけコケだらけなんてこともあったりする。
 やはりクルマを保管するのに大切なことは、太陽光線を防ぎつつ湿気を寄せ付けない風通しの良い場所というのが基本なのだ。
 こういった保管状態が影響するのは見た目だけではない。エンジンルームの中や下回りなどの機械部分にもゴムや樹脂など、インテリアや外装と共通する素材が使われているため、当然同様に影響を受けてしまう。外装は程度が悪いけれど、エンジンルームの中は完璧です、なんてクルマは、後から部品を総取っ替えでもしない限りはあり得ないのだ。
 また、ディーラーやプロショップに完全オマカセ整備なら問題ないが、乗らないとついついめんどうになってしまうのがメンテナンス。エンジンオイルやブレーキフルード、クーラントなどの交換も先延ばしになってしまいがちだ。
 しかしこれらは距離が伸びなければ交換する必要がない、という性格のものではない。オイルは酸化によって性能が低下するし、ブレーキフルードは湿気を吸って配管やキャリパー内部にダメージを与えてしまう。ラジエターを長持ちさせるためにも、クーラントの交換は欠かせない。こういった液体類の管理がキッチリとされていたかを探ることで、そのクルマのメンテナンス状態の見当を付けることができるのだ。
 機械的な部分の消耗があまり進まない低走行車なので、エンジンルームをのぞき込んでも明らかに新しく輝いている部品など手が入っている箇所を確認することは難しいだろう。そんな時にチェックしたいのが、対策品が出ているポイントだ。これが交換されていれば後から手入れされた証拠になる。整備記録については定期点検のみの記載になるのであまり参考にはならないが、明細が残っているようなクルマであれば、きっと良い状態を保っているはずだ。

タイヤのコンディションも低走行車のメンテナンス状態を知るポイント。山が減っていなくても4本交換しているなら好印象だ。
ブレーキフルードを見れば、液体類の管理状況が把握できる。吸湿性が高いため、走らせていなくても定期的な交換が必要だ。
カーポートの下にあったクルマは、部分的な日焼けに注意が必要。ボンネットだけとかリア回りだけとか、とても気になる部分。
エンジンルームも湿度による影響を受ける。アルミが白く錆びたりゴム部品の寿命が短くなったり、電機系にも悪影響が…。
 

【管理車両】

多走行車でも
整備履歴が分かれば維持しやすい

これまでの整備履歴が
分かる管理車両

 管理車両という言葉をあまり聞いたことがないかもしれないが、いわゆる整備状況や素性が分かるクルマのことを、ここでは管理車両と呼ぶ。
 分かりやすい例をあげると、ディーラーで新車を買って点検や整備もそこで受けてきたクルマは、整備記録簿によって車両の状態を管理していることになる。整備記録簿がない中古車や、記録簿があっても記載のない物件は現状は分からないが、記載のある記録簿は点検・整備を受けていたのかが確認できる、ひとつの目安となっている。
 この記録簿とは別に、前オーナーが愛車を大事に管理してきたと予測できるものが、整備明細書や領収書などだ。記録簿への記載はなくとも、半年ごとにキッチリとオイル交換してきたという整備明細書などがあれば、これはこれで、前オーナーによる立派な管理車両とも言える。
 今回注目したいのが、ショップ側が独自に走行距離や点検・整備をしてきた記録。顧客管理のひとつとも言えるが、販売時期、販売価格、走行距離、車検や点検・整備の記録、そして買い取り価格などの情報だ。細かく車両の情報を記録していれば、買い取り価格や販売価格で大いに参考になる。また、必要な整備ポイントなども把握しやすいため、販売車両へと仕上げるときにも手が掛からない。販売店側は売りやすい中古車となり、ユーザー側はリスクの少ない買い物ができるという、お互いのメリットを生むのが、ここで言うショップの管理車両なのである。
 ユーザーの整備記録を管理することは、整備工場でも行なっていることだ。販売店の場合、整備は外注というところも少なくないが、整備工場ならばその記録も詳細なものとなることが多い。そしてこれらのクルマの中には、工場側に買い取ってもらう場合や、委託販売車両、さらには個人売買を希望しているユーザーも存在する。
 在庫を抱える販売店とは異なり、いつでも購入できるというものではないが、タイミングが良ければ整備工場の管理車両と出会うことができるのだ。この場合、工場側も一見さんには販売しないということも多いので、まずは整備工場の顧客になることが必要になるだろう。それでも、整備工場の管理車両は高い安心感が期待できることは確かだ。何せオーナーとなる人物以上にクルマのことをよく把握しているのだから。
 長くドイツ車ライフを楽しみたいという人は、信頼できる整備工場と仲良くなって、程度の良い管理車両が出てくるのを気長に待つというのもひとつの手段。輸入中古車を初めて購入する人にはややハードルの高い手法だが、すでにドイツ車に乗っているという人には、検討する価値のある管理車両の狙い方だろう。
 クルマを買う時は、とかく数値的な情報に影響されがち。年式、価格、走行距離、車検の残り……。どれも重要だが、走行距離だけに捕われていると本当にお得なクルマを逃してしまうこともあるから、中古車としての本質を見極めるようにしたい。

たとえ走行距離が多くても整備履歴がはっきりしていて、定期的にメンテナンスされたきたクルマは当然ながらトラブルも少なく、価格も安い。
程度の良い管理車両は販売と買い取りを繰り返す。クルマによっては3人のオーナーの手に渡っていくことも。
愛車に行なった定期点検の記録だけでなく、オイルやタイヤの交換といった一般整備の明細や領収書などが残っていることもある。
記録簿は定期点検の際に記載されるので、すべての履歴がここに残っているわけではないが、ショップ側が情報として把握していることもある。

馴染みの修理工場で
クルマを買うという選択

管理車両や委託販売車が
紛れていることも!

 整備工場が行なう顧客管理は、当然のことだが車検や定期点検以外の修理やオイル交換なども含まれる。したがって、車両の状態は必然的に分かりやすいものとなり、これらが管理車両として販売されるケースもあるのだ。メンテナンスや納車待ちかと思いきや、委託の販売車両が工場内に紛れていることがある。まずは、管理車両があるかどうかを聞いてみるといいだろう。