Q : 朝出かける時にエンジンが掛かりにくい時があります。一度動き出した後は大丈夫なんですけど、何かトラブルが起きているのでしょうか? 心配です。(福島県・U.Kさん)
A : 電気系パーツの不具合が
原因であることが多い
キーを回すと弱々しくスターターが回るか、カチンとリレーの音しかしないという場合も。これは完全にバッテリー上がりなので、電気さえ供給してやれば問題なくかかるという最も簡単なケース。こんな時に備えてドライバッテリーを使ったバッテリーパックを用意しておけば安心だが、ない場合は他のクルマからジャンプコードで電気を借りる。輸入車のバッテリーは前兆なしに突然ダメになることが多いので、注意しておきたい。
さて、スターターは元気に回るのに始動しない時は少々やっかいだ。様々な原因が考えられるが、旧式のディスビとプラグコードを使ったエンジンの場合は、メインコードの差し込みを確認してみる。コイルに一次電流を供給するコネクター部分が緩んでいることもあるので、このあたりもチェック。
スターターが回るのにエンジンが始動しない原因は、プラグに火が飛んでいないか、燃料が供給されていないかのどちらかなので、前に使った時まで何も問題がなかったのなら、まず電気系から疑うのがセオリー。古いクルマの場合は接触不良、電子制御世代ならセンサーの不良が最も疑わしい。プラグを外してコードを繋ぎ、スパークが来ているか点検する方法もあるが、感電の危険もあるのでオススメはできない。
とりあえずエンジンは回り出すものの、回転が安定せずアクセルを軽く吹かしていないと止まってしまうような状態もよくある。これはウォームアップ系の問題による症状で、エンジンが暖まった状態では発生しないはず。応急策としてはアクセルを踏み込みながらスターターを回し、エンジンが暖まるまでアクセルペダルを調整して踏んでやれば手動で代用できるはずだが、早急に修理工場で点検してもらいたい。
またこれとは逆で、噴射する燃料が多くて、混合気が濃くなり過ぎ調子が悪くなるというケースもある。エンジン始動時に「ボッボッボッ」と詰まったような音でアイドリングして、始動後に黒煙が出るようなクルマはこの疑いがある。コールドスタートバルブの噴射量がおかしいか、制御するコンピュータに問題があることも多いので、この場合はちょっと複雑なトラブルである可能性も考えられるので早め修理工場に持ち込もう。
他にも、ヘッドガスケット抜けやピストンリングの摩耗による圧縮抜けなどによっても始動性は低下するので、かかりが悪くなってきたと感じたら全体的なチェックをしておくことが大切になる。
エンジン温度によって始動の仕方が違う
エンジン始動には、正式にはコールドスタートとホットスタートの2種類がある。どちらもイグニッションキーを回すだけなのでドライバーの作業としては変わらないのだけれど、クルマのやっていることは大きく異なっている。エンジンが冷え切っている時は、まず固くなったオイルの大きな抵抗に耐えるため、通常よりも多く燃料を噴射する。このためにシリンダーの数とは別に、コールドスタートバルブと呼ばれる専用のインジェクターを備えているのが普通だ。当然、燃焼させるための空気も通常のアイドリングより多く必要になるので、ウォームアップレギュレータなどと呼ばれる専用の部品で、別経路を用意している。これらはエンジンが十分に暖まったことを感知すると、作動しなくなって通常のアイドリングに戻る。回転数が落ち着いた状態になるまでの役割なのだ。旧式のクルマではバルブ自体に温度変化で動くバイメタルが使用されていたが、現在は水温センサーで得た情報を基にコンピュータが判断してアイドリングを調整している。
こういった機構に異常が起きると、エンジンが冷えている時のクランキングが長くなったり、かかってもしばらくプスプスとかぶったような状態になり、アクセルを軽く踏んでいないと止まってしまうなどの症状が出ることがある。また逆に、エンジンが暖まった状態の時だけかかりにくくなってしまう、という症状と原因もある。つまりは、エンジンの温度によって、スタートさせる時のやり方が大きく異なっているということを理解しておく必要があるのだ。