最新技術を搭載しながらも基本構造は伝統を踏襲
最後に残った古き良き時代のメルセデス・ベンツ
何度も生産中止が噂されながら、高い人気に支えられ今も作り続けられているメルセデス・ベンツのGクラス。軍用車から転用された基本構造はヘビーデューティそのもので、飾り気のない無骨なスタイリングも本来のメルセデスらしい実用本意のパッケージングをどことなく感じさせる。そして何より、独特な構造ゆえ今でも熟練したマイスター達の手によって、ほぼハンドメイドで組み立てられている、最後に残った古き良き時代のメルセデスでもあるのだ。
そんなGクラスが誕生したのは1979年。初期モデルは何の愛想もないインテリアに、パワステもパワーウインドーも備わらない、まるで農業用機械のようなクルマだったが、次第に乗用車と変わらない贅沢な内装が備わり、快適装備も次々と追加、4WDシステムは日常使用に適したフルタイム式に改められた。強力なエンジンを積んだAMGモデルもラインナップされ、現在でも高い人気を誇っている。
2019年に誕生から40周年を迎えたGクラス。昨年、フルモデルチェンジといえるほど多岐に渡るリファインを実施。型式はW463Aと呼ばれ先代型からのアップデート版と思われがちだが、その中身は大きな進化と革新の技術が投入されている。まず、ボディは堅牢なラダーフレーム、4WDシステムはローレンジ付きフルタイム式。センター、そしてリヤ&フロントに用意された3つのデフロックシステムなどはGクラスの伝統を踏襲。一方、フレームは新設計され、強度・ねじれ剛性・耐久性・安全性を大幅に向上。アルミパネルを採用することで、従来より約170kgの軽量化も実現した。エンジンは気筒休止システムの採用や、新開発の9速ATにより燃費性能が向上。そして、もっとも注目したいのは、サスペンションだ。従来、Gクラスはデビュー以来のサスペンション形式=前後3リンク式コイルスプリング・リジッドを採用してきた。しかし今回のアップデートで、初めてフロントに独立懸架式=ダブルウィッシュボーン・コイルスプリング式を採用。またリヤについては同じコイル・リジッドながら、3リンク式から5リンク式に変更。これらにより、街乗りや高速道路での乗り心地と走行安定性がグレードアップされている。
オフロードについては3つのデフロックや、電子デバイス「ダイナミックセレクト」のGモードの採用によって走破性・脱出性能は向上している。さらにレーダーセーフティパッケージなど最先端の安全装備も搭載。ボディなどの基本構造は伝統を踏襲しながら、最先端の技術で各部をアップデートした新型Gクラス。その魅力はさらに深まっている。
予算ではなく本当に自分に合う1台をチョイスしてほしい
さらに先代型にも目を向ければ、単にGクラスといってもクラシカルな初代モデルから最新のAMGまで、年式によって個性や味わいが大きく異なる。そのため、これからGクラスに乗りたいと思っている人は、自分がこのクルマに求めるのは何なのか、まずはそれを明確にすることが大切だろう。クラシカルなメルセデスらしさを楽しみたいなら90年代の直6を積んだモデルも魅力的だが、本当は最新のV8が欲しいのに予算面で妥協して買うのはお勧めしない。見た目は似ていても、細かなリファインをしながら進化してきたGクラスなので、単に予算に合わせたクルマ選びをしてしまうと満足感が薄れてしまうかもしれない。ただ、なにせ40年も前に設計されたクルマなので、最新のSUVと比べれば劣っている部分も多い。乗り心地も硬く、快適な部類とは言えないだろう。でもそんな弱点を織り込んでも、有り余る魅力があるのもGクラスというクルマなのだ。
維持に関しても、基本的な部分の耐久性はとにかく高く、新車価格がSクラス並だからといって同等の維持費がかかるというわけではない。オイル漏れなどを放置せず、細かく手を入れてやれば大きな故障が起きるケースは希だ。さすがに国産車と同様とはいかないが、同世代のメルセデスEクラスを維持する程度の金額で良いコンディションを保つことができるはず。
また、Gクラスは人気が高いため中古車価格は割高感があるが、それはリセールが期待できるということでもあり、良質な中古車を選ぶことで購入後の維持費も圧縮することが可能なのだ。