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【もう一度乗りたくなる“ドイツの絶版名車”/vol.05】BMW M3(E36)現代の環境においても楽しめる要素が詰まっている

登場から30年近くが経過し、クラシカルな雰囲気が少しずつ増してきた感があるE36型M3。日本に正規輸入されたのはクーペのみだったが、取材車は新車で並行輸入されたセダン。その魅力について迫ってみよう。

E36M3が後の高性能車に
与えた影響は非常に大きかった

走りだけではなく、実用性も兼ね備えたM3セダン。アイディング社にチューニングが施されており、通常のM3とはまた違ったフィーリングを持っている。
 

抜群の路面追従性を
持っている

 E36 M3をネオクラシックと呼ぶには早いかもしれないが、このクルマが後の高性能車やチューニングカーに与えた影響は計り知れない。
 80年代は、操縦安定性を高めるというと、足をガチガチに固めるのがセオリーだった。ところが二代目のE36 M3は、長いホイールベースとトーコントロールの確実なリアサスペンション、それに前後の重量配分の良さから、抜群の路面追従性により、しなやかな乗り味と高い操縦安定性を見せつけたのだ。そこから世界中の自動車メーカーでの足作りが変わったといえる。
 エンジンにしても回転フィールの滑らかさでは定評のあったBMWのストレート6ながら、排気量あたりのパフォーマンスは日本車ほどではなく、DOHCになってからは自慢の回転フィールさえ滑らかさを失いつつあったのだが、E36 M3に搭載されたS50ユニットは、ピックアップの鋭さと共に超滑らかな回転フィールをも実現していた。そして低回転域から図太いトルクを発生し、高回転域まで理想的なトルクカーブを描いて、実に伸びやかでパワフルな加速を実現している。
 当時の3シリーズ用エンジンはM50だが、S50は同じ鋳鉄ブロックでも細部が異なる専用設計。発展型とは言っても、その心臓は通常の3シリーズとは基本から異なる。さらに6連スロットルや無段階VANOS、カムシャフトやピストン、コンロッドなどのエンジンのムービングパーツを特製するだけでなく、ボア×ストローク比など、あらゆる部分で理想を追い求めたからこそ、このフィールと性能は実現したのだ。シャシーとパワートレーンのパッケージングのレベルは、間違いなく当時は最高と言える位置にあった。
 現在、E36 M3の登場から30年近くが経とうとしているが、今でも十分に楽しめる要素が詰まっている。エンジンの回転フィールやトルク感、さらには足回りの動きや操作系の感触まで、実にしっくりとくる。何よりエンジンの回転フィールの滑らかさ、ピックアップの鋭さは今でも一線級の評価を与えられる。低回転域から高回転域まで、全域で素晴らしい回転フィールとトルク感を伝えてくる。むしろ、新車当時が今ほど排ガス規制が厳しくはなかったこともあって、エンジンのトルク感はとても良い。それでいてビッグシリンダーを感じさせない鋭いピックアップと軽やかな回り方を見せるのだ。
 車重としては、次の世代のE46 M3と変わらないがボンネットが低く、小柄なボディによる動きのコンパクト感は、キビキビとした鋭いフットワークを見せながら、それでいて、安定感も高いというE36 M3ならではのもの。それでも攻め込んでいけば、もっとブレーキの利きが欲しいとか、タイヤのグリップ力も欲しいという感覚もわき起こるかもしれない。それは冷静にクルマの能力を考えた場合の評価であって、実際にドライビングしている時は別。この状態を踏まえて、攻め込むことも楽しいのだ。それは初代のE30 M3に通じるものと言ってもいい。
 このE36 M3が登場した当時、クーペと変わらぬスタイリング、大型化と快適装備の充実でスパルタンさが薄れたキャラクターに、初代M3とのコンセプトの違いを嘆く声も聞かれたけれど、やはりM3はM3。今乗り回すには、日常面を考えると、このE36くらいの装備は欲しい。普段使いもできて走りも楽しめる。そしてM3がM3たる意義、それが受け継がれているのもよくわかる。
 E36 M3はクーペボディのみが正規輸入されたが、本国では4ドア版も存在していた。取材車は新車並行輸入されたクルマで、4ドアセダンとしての実用性も兼ね備えている。加えて、BMWファンなら知っているであろうアイディングによるチューニングが施されている。アイディング社のマフラー、タワーバー、ペダルカバー、エンブレム類などが装着されたアイディングコンプリートカーとなる。チューニングの内容自体はライトチューンの域らしいが、それでもノーマルのM3をさらに高み引き上げたチューニングは、当時のBMWらしさ、クルマとしての楽しさを追求したものだ。
 このクルマを販売しているBMW専門店ポールポジションでは、徹底的な納車整備を行ない、仕上がったクルマのみを販売するスタイル。それゆえ、良いコンディションのM3を最初から楽しむことができるのは嬉しい限り。
 ネオクラシックと呼ぶにはまだ早いかもしれないが、まだまだアナログな部分を残していた時代のM3だけに、往年のBMWらしい走りを存分に堪能することができる。

基本的な快適装備が揃っているから、普段のアシとしても十分に使える。トランスミッションは6速のマニュアル。300馬力オーバーをMTで操る楽しさを想像するだけでもワクワクしてしまう。取材車は日本には正規輸入されなかった4ドア版。
M3専用パーツに加えて、アイディングのチューニングパーツが装着されたM3セダン。希少性の高さはもちろんのこと、積極的にドライビングを楽しめる要素が詰まっているのは、中古車としても魅力的だ。
U-CAR DATA●96年式M3セダン●検なし●走行17.7万km●アルピンホワイト●左H●6MT●新車並行●アイディングチューン
キレイな状態を保っているアルミホイール。足回りはフロントがストラット、リアは当時、革新的だったセントラルアーム式を採用し、走行安定性を飛躍的に向上させている。
エンジン側だけではなく、リアにもタワーバーが装着されている。これもアイディングチューンのひとつ。その奥には前オーナーが取り付けたアンプが見える。
エンジンをかけると野太いサウンドを響かせる。性能面だけではなく、ドライバーの気分も盛り上げてくれる専用マフラーを装着している。
ダクトを設けたボンネット、トランクスポイラーなど、当時の高性能スポーツセダンらしいルックスが味わい深い。現代よりもカスタマイズする楽しみが多かったのも、当時の自動車業界の特徴だったといえる。
 

維持は大変なの?

1996y BMW M3

Mシリーズというと、維持が大変というイメージがあるかもしれないが、E36型においてノーマルと共通の部分も多い。さほど恐れる必要はないのである。

モデルライフを通じて搭載されるエンジンは2タイプ。前期型には3ℓ直6DOHC、95年からの後期型では排気量は3.2ℓに拡大され、ミッションも6速となる。そのため前期型はM3B、後期型をM3Cと呼ばれている。
 

基本的なメンテナンスの
方向性はノーマルと同じ

 Mシリーズといっても、基本的な部分についてはベースとなっているモデルに準じている。水回り、駆動系、点火系などの交換サイクルをキッチリ守るのが快調を保つ秘訣だ。
 オイル漏れ関係ではパワステホースからの漏れがあるが、BMWの持病のようなものなのでひどいようなら交換するしかない。何度も交換するのが面倒だという人はステンメッシュ製のワンオフ品を使うという手もある。純正よりも耐久性が高く、サーキットを走る機会が多いユーザーにはお勧めだ。エンジン関係のオイル漏れではタペットカバーパッキンやオイルフィルターハウジングからの漏れが多い。漏れを放置しておくと新たなトラブルの原因に繋がるので早めに対処しておこう。
 足回りは専用品が装着されている。ショックアブソーバーやゴムブッシュなどはMシリーズ専用だ。ロアアームブッシュとそれに備わるボールジョイントのガタつきはお約束。ブッシュに亀裂が入ったり、ボールジョイントのブーツが裂けてグリースが漏れ出すのが定番である。足回りのメンテナンスは後回しにされることが多いが、Mシリーズならではの走りを楽しむならリフレッシュしておきたい部分。メンテナンス後の走りがこれまでと違うことに気づくはずだ。
 エンジン不調の原因になりやすいのがクランクシャフトセンサーを始めとした各センサーの不良。アイドリングがおかしくなったり、エンジンがいまいち吹けないと感じたら、早めに修理工場に持ち込みコンピュータ診断を受けておこう。
 こうして見ていくと、エンジンや足回りに専用品を装着するもののメンテナンスの方向性としてはノーマルと変わらない。専用部品はノーマルに比べて価格は高めだが、それと引き換えに高性能を得ているわけだからある意味仕方がない部分。それよりも、メンテナンスを怠ったことが原因でトラブルに繋がってしまう方が怖い。それゆえ、オイルや冷却水の管理を行ない、定期的な交換を心がけよう。

ポールポジションの強みはココ!

本国のBMW社も注目している
老舗ファクトリー

ポールポジションは豊富な整備実績から、部品発注システムを日本で一番に導入するなど、本国の部品担当部から注目されている修理工場である。

ゆったりと寛げる待合スペース。ピット内には年式を問わずたくさんのBMWが入庫していた。
 

BMW&アルピナを
積極的に買い取り中

 BMW乗りの駆け込み寺的な存在になっているポールポジションは、クラシックから高年式モデルまで、幅広く対応してくれる修理工場。ネオクラシックモデルにも強く、部品のチョイス、今後の整備プランなど予算に合わせて提案してくれるところだ。こうした豊富な整備実績、BMWの販売実績等が、本国のBMW社から評価され、部品発注システムを日本で一番に導入。加えて、ディーラーナンバーを取得するなど、本国からも注目されている工場なのである。ネオクラシックBMW、アルピナについては積極的に買い取りを行なっており、それを高い技術で再生して再び世に送り出す。良い時代のBMWを残していきたいという思いが、多くのファンの心を掴んでいる。

●ポールポジション
●所在地:神奈川県横浜市都筑区池辺町1820-3 
●TEL:045-945-1331 
●URL:http://www.poleposition.co.jp/