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【ATのリビルト&オーバーホール最新事情】ZF社公認のATオーバーホールはココが違う!!

ATメーカーでもあるZF社。このATメーカーが定めたオーバーホール方法やトラブルへのアプローチを、ZF社認定ファクトリーであるデルオートで取材してきた。

 

ATメーカーが定める
最新のオーバーホール

 ドイツの自動車部品メーカーであるZF。多くのパーツ開発や製造を行なっており、その中でもATはZFを代表するパーツのひとつだ。ドイツ車では、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェなどがZFのATを搭載しており(※1)、そのパフォーマンスと信頼性の高さから、多くの自動車メーカーが採用している。
 そんなZFのATを、古くからオーバーホールや修理、そしてリビルト対応などを行なってきたのがデルオート。現在、日本で唯一の「ZF社オフィシャルステーション」として、ATやパワステなどをオーバーホールしているところだ。また、ここでオーバーホールされたATは、全国の整備工場などへリビルトATとしても出荷されている。ここであらためて説明を加えると、リビルトAT対応とは、事前にオーバーホールしてあるATを壊れたATと交換するもので、修理の時間と費用の短縮が可能になる。壊れたATは交換作業後に業者に送られ、再びリビルトATとして再生される。昨今では、交換ではなく壊れてしまったATをベースに専門業者がオーバーホールし、それを再び使うケースにおいても、リビルトAT対応と呼ぶところもある。
 このリビルトAT対応、時間と費用の短縮というメリットのほかに、デメリットも存在する。どのようなオーバーホールが行なわれたのかが分かりにくいため、信頼のおけるリビルトATでなければリスクが高まり、せっかくのメリットが失われてしまう。
 そのデメリットを解決しているのが、ZF社公認のファクトリーであるデルオートだ。メカニックはドイツのZF本社にて研修を行ない、深い知識と高い技術力を身に付けている。また、ZF社の純正品を使用するのはもちろんのこと、トラブル事例や最新のパーツ情報など、ATオーバーホールや修理に必要な情報をZF本社とオンラインで共有しているため、最新かつ正しい修理を行なうことが可能なのだ。その中には、自動車メーカーでも把握できていない情報もあるとのことで、ATの製造メーカーと直接繋がっているからこその話でもある。これらによって、より完璧なATオーバーホールや修理が可能になり、高い信頼性を持ったリビルトATを提供できるのだ。
 これらの高い技術力と信頼性以外に、エンドユーザーにとって大きな魅力が、ディーラーよりもリーズナブルな費用で済むということ。ディーラーと同等かそれ以上の信頼性がありながら、その費用は安く抑えられるのだから、ぜひとも知っておきたい工場なのである。
 (※1)各メーカーの一部のモデルでZF製のATを採用しており、全てのクルマで採用しているわけではない。
ZFのATといえば、BMWやアウディが多く搭載しているが、年式やグレードによって他メーカーのATを搭載している場合もあるので、作業を依頼する前に、修理や整備が可能かどうかを問い合わせてもらいたい。また、今回の取材ではデルオートの片岡工場長に協力してもらい、ZF社が定めるATのリビルト&オーバーホールに関して教えてもらった。機械式から電子制御式まで、あらゆるZFのATに精通した人物である。
デルオートのメカニックは、ドイツのZF本社にて研修を完了した証である認定書を持つ。ATのオーバーホールのみならず、予防整備としてのATF交換などにも深い知識を持つ。現在、ディーラーでATFの交換は不要としているところが多いが、デルオートは正しい交換作業が可能である。
 

1年保証、しかも走行距離無制限
これは信頼の証だ

 さて、ここからはデルオートに入庫していた2005年式のBMW745iを例に取り、ATのオーバーホールに関して話を進めていく。
 まずはATの診断から。試乗や作動確認、ATFの状態などのチェック以外に、特徴的な診断方法がAT専用の診断機を繋ぐこと。クルマ全体の故障診断機とは異なり、これはATに備わる専用のカプラーに繋ぎATの状態を確認できるもの。ATの異常履歴や点検項目は非常に多く、この専用テスターだけでトラブル原因を把握できることも多いという。もちろん、ZFのATに関する豊富な知識を持つメカニックが診断した場合に限ることだが。
 トラブル原因が確認できたら、ATが分解される。ATの頭脳ともいえるバルブボディ本体の異常だけならAT本体を降ろさずに済む場合もあるが、内部のクラッチやシール類の交換などが必要と判断された場合は、AT本体の脱着を行なう。
 降ろしたAT本体はキズや摩耗状態などを入念にチェックしながら分解され、再使用するパーツは徹底的に洗浄される。といっても、電子制御式のATへとシフトされてからは、再使用するパーツは減少傾向にあるとのこと。例えば、トルクコンバーター。デルオートでも専用の洗浄マシンや分解洗浄を行なうこともあるが、現在は多くの場合で新品に交換しているそうだ。またバルブボディも同様で、ここにトラブル原因があった場合は丸ごと交換するのがセオリー。スプリングやチェックボールなどで油圧経路を調整していた機械式ATと異なり、電子制御式ATはその役目をアクチュエータの細かい制御によって行なっており、それらの交換はできない。よってバルブボディをまるごと交換するのがセオリーとなっている。
 トラブル原因の確認と洗浄後は、ZFの純正パーツを使用して組み付ける。シールやパッキン類に新品パーツを使用することはもちろんだが、ディスクプレートなどの消耗品全てを新品へと交換。これにより消耗品に中古パーツと新品が混在しないため、プログラム通りの電子制御が可能になる。と同時に、AT全体の信頼性向上にも繋がるわけだ。また、ディスクプレート等の組み付けは、各ATごとに定められたクリアランスに合わせる必要がある。車種やグレードによってクリアランスの設定値は変わり、その数値もZF社公認のファクトリーだから分かること。そして組み付け後はATのベンチテストを行ない、実際にエンジンで動かし作動確認とCPUの初期化やエラーコードを消去する。数多くの点検と洗浄、そしてパーツの交換を行なって完成したATは、1年間および走行距離無制限の保証が付いてユーザーの元に渡るのである。

ZFのAT専用診断機をAT本体の脇にあるカプラーに接続しトラブル原因を探る。AT専用テスターなので、一般的な診断機よりも細かい点検を行なうことが可能。ZF公認ファクトリーだから持つことが許される診断機だ。
AT専用のテスターがあるため、ATF交換も得意としている。ちなみに、ATFは数種類存在し、他のATFと混ぜてはいけない場合もあるそうだ。
ATFのレベルゲージがない昨今のZF製AT。リビルトとして発送する場合は、ATFクーラーの部分を考慮してATFを充填しており、装着後に余分なATFを溢れ出させて調整するよう指示している。
組み付け後はATのベンチテスターに装着し、エンジンを使って作動確認を行なう。このベンチテスターは、FFとFRの両方のATに対応している。ここで異常がないことが確認されたら、CPU診断機を繋ぎ、再び確認すると同時に、エラーコードの消去やデータの初期化作業を実施する。
電子制御式ATに備わるバルブボディ。ATの制御を行なうCPUはここに収まっている。比較的多いトラブル事例はハーネスの断線など。アクチュエータなどの作動確認テスターも持っているが、トラブルが生じた場合は新品への交換がセオリーとなっている。
高温にさらされることも多いトルクコンバータ。内部のフィンが破損したり汚れの蓄積などが多いため、洗浄だけでは性能回復が見込めない場合も多い。したがって、このトルクコンバーターも新品に交換する場合が多いとのこと。
パッキンや樹脂製のオイルパンなどは新品に交換される。このような細かい消耗品もZFの純正を使用することで、信頼性の向上に繋がっている。
ディスクプレートやドリブンプレートなどの消耗品も全て新品になる。この時、厚みの異なるディスクを使用するなどして、規定のクリアランスに合わせて組み付けを行なっている。
昨今多いトラブル原因のひとつが、油圧経路に収まるガイド樹脂の破損。これが原因で適正な油圧を確保できなくなり、油温やAT内部の温度上昇を招く。結果としてディスクプレートが焼けてしまい、ATの作動不良を起こすことに繋がるのである。このディスクの焼け具合も、トラブル原因を探る方法のひとつとなっており、重要な点検項目である。
 

取材協力 : 株式会社デルオート 世田谷工場

日本で唯一、ドイツZF社公認のワークショップであるデルオート。ZF製のATやパワステのオーバーホールやリビルトを行なっている。その作業は乗用車に限らず、バスやトラックの大型ATまで。対応車種は、メールや電話で確認すること。
 
■ 住所: 東京都世田谷区玉川3-4-2
■ TEL: 03-3707-2841
■ URL: http://www.delauto.co.jp/