W124をベースとした特装車を日本で見かけることはほとんどないだろう。今回紹介するのはドイツのMIESEN社が作った搬送車をリメイクした移動販売車。その仕様を実車を見ながら解説していこう。
ベース車両は日本に2台しか輸入されなかった
「MIESEN」という名はあまり聞いたことがないと思うが、正式にはクリスチャン・ミーセン社という救急車などの特装車を製作するドイツのコーチビルダーである。1世紀以上の歴史があり、現在も現行Eクラスやキャンピングカーのベース車両として使われることが多いスプリンターなどを、救急車や搬送車仕様にして販売しているドイツでも長い伝統を持つ老舗なのである。
そのMIESENが手がけたのが、W124ベースのMIESENE 124Lで、日本へはたった2台しか輸入されていない。主に搬送車として病院から自宅、自宅から病院といった用途として使われ、クランケ・ワーゲンと呼ばれることもある。今回紹介するのはこれを移動販売車としてリメイクしたモデル。前オーナーは「RADIO CAFE」としてエスプレッソやコーヒーを販売しており、輸入車だけのカーイベント、インポートカーショーにも出展していた。
この「RADIO CAFE」、一部のW124オーナーの中ではよく知られた存在ではあるが、実車を見たことがある人は少ないと思う。ベースとなっているのは88年式の230TEで、マルーンブラウンという純正色(カラーコード459)でオールペイント。サッコプレートがない初期型で、ホイールキャップとの相性も抜群だ。ヘッドライトを北米仕様にしているところもオシャレなポイントで、ステキなボディカラーと相まってカジュアルな雰囲気に仕上がっている。室内は後席と広いカーゴルームを活かして移動販売車両にモディファイ。ウッドをふんだんに使った内装は温かみを感じる仕上がりで、ボディカラーとのマッチングもいい。水回りなどもきっちり作られているから、リアにある大きな販売ゲートを開ければ「いらっしゃいませ~」といった具合で、このまま移動カフェとして使用することも可能だ。家のキッチンのような水回りを搭載したことで、後席は1座のみとなるが営業するときはこれを倒して使用することができる。試しに後席に座ってみたのだが、天井が高いせいもあって意外に快適。大きなウインドーを開ければ開放感がさらに増す。それにしても、座っているだけでなんだか楽しい気分になってくるのは、このクルマのキャラクターが影響しているのかもしれない。また、移動販売車だけでなく、例えば家族でキャンプに行くという用途にも使えると思う。アウトドアが好きなユーザーにとっても注目してほしい一台だ。MIESENE 124Lとしては2台が輸入されているが、移動販売車両にモディファイされているクルマは世界に一台だけかもしれない。他人とは違った個性的なクルマを求めているなら、ぜひ検討してみてほしい。
超希少なMIESEN 124Lを移動販売車にリメイク!
希少なクルマゆえに心配なこと
MIESENE 124L
気になるギモンを解決!
Q1. 運転しにくい場面はある?
A1. ワゴン感覚なので心配なし
ベースである230TEよりも全高が高くなっているので風の影響は受けやすいが、常識的なスピードで走っているぶんにはとくに気を遣うことはない。リアウインドーが大きいので後方視界も確保されており、ノーマルのワゴンとほとんど変わらない。
Q2. アウトドアにも使える?
A1. キャンプやBBQなどでも便利なクルマ
キャンプやBBQなどを行なうときに重宝されることは間違いないだろう。水回り一式が備わっているので、あまり設備が揃っていないようなところでは使い勝手がいいはず。あえてデメリットを挙げるなら乗車定員が3名であること。だが2台で移動すれば問題なし!
Q3. 移動販売はすぐに開業できる?
A3. 保健所や自治体などの許可が必要
移動販売車を手に入れればすぐに開業できるというわけでなく、給水タンクの容量など車両の装備に関する許可、販売する商品による許可、食品衛生責任者などの資格、そして営業する地域や敷地への許可など、いろいろとある。
SPECIFICATION
全長 : 5410㎜
全幅 : 1740㎜
全高 : 2080㎜
トレッド(前): 1530㎜
トレッド(後): 1540㎜
車両重量 : 1710㎏
エンジン方式 : 直4SOHC
総排気量 : 2297㏄
最高出力 : 135ps/5100rpm
最大トルク : 20.6㎏-m/3500rpm
トランスミッション : 機械式4速AT
乗車定員 : 3名